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[出典] "Dynamics and competition of CRISPR–Cas9 ribonucleoproteins and AAV donor-mediated NHEJ, MMEJ and HDR editing" Fu YW, Dai XY, Wang WT [..] Zhang L, Cheng T, Zhang XB. Nucleic Acids Res. 2021-01-04. https://doi.org/10.1093/nar/gkaa1251

 CRISPR-Cas9ヌクレアーゼ活性をベースとする遺伝子ノックアウトについては詳細な解析が進められ、編集精度の向上に寄与する知見が蓄積されてきたが、ヒトiPS細胞や初代T細胞といった臨床応用に重要な細胞におけるHDR過程を介したゲノム編集のダイナミクスとパターンの理解は遅れていた。

 State Key Laboratory of Experimental Hematology, CAMS & PUMC  (Nature Index)を主とする研究グループは今回、四種類の細胞型(ヒトiPS細胞、ヒト初代T細胞、K562細胞、とU937細胞)において、Cas9 RNPと共にHDRドナーとなるAAV6をデリバリーした場合とCas9 RNP単独をデリバリーした場合について、ゲノム編集のダイナミクスとプロファイルを比較解析した。
  • 遺伝子編集のプロファイルは四種類[*]の細胞型ごとに異なった。
  • 80種類のgRNAから得られたインデルの編集パターンを解析し、頻度が1%(絶対値)以上の編集事象を、+A/TのNHEJ挿入、+C/G、-1〜-30 bpのMMEJ欠失など7グループに分類して集計を行った。編集パターンはAまたはTの挿入が最も優勢で、その他の事象は比較的少なかった。そこで、NGG PAMの直前の-4ヌクレオチドの重複を指す+1付加の解析に注目し、4つのグループに分けた結果、4つの細胞種全てで+T事象が最も優勢なパターンであったが、ペアテストではiPS細胞が他の細胞種よりも+Tの傾向が高いことが判明した。また、iPS細胞は-4位がCまたはGの場合それぞれ+C/Gで有意に高い頻度を示し、K562、U937、初代T細胞よりも約40%高い頻度でNHEJ挿入修復が起こっていた 。T細胞編集については、以前の報告と一致して、-4位にGまたはCが存在すると3〜5%の低レベルの挿入が起こり、一方、AまたはTは10%と27%にその割合を増加させた
  • AAV6ドナーを介したHDRの動態を明らかにした: 編集頻度が最大値の50%に達する時間 (T50)は、短いindels (特に+A/T)の方が(>2 bp)欠失よりも短い; HDRの動態はNHEJとMMEJの中間であり、MMEJを介した欠失よりも高速だがNHEJを介したindels誘導よりも低速である.
  • HDRよりも優勢なNHEJを、低分子のM3814とトリコスタチンA (TSA)の組み合わせで阻害することで、HDRの効率が三倍へと向上した
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