[出典] "A genome-wide CRISPR-based screen identifies KAT7 as a driver of cellular senescence" Wang W, Zheng Y, Sun S, Li W [..] Zhang W, Qu J, Tang F, Liu GH. Sci Transl Med. 2021-01-06. https://doi.org/10.1126/scitranslmed.abd2655; RESEARCH NEWS "Scientists Develop New Gene Therapy Strategy to Delay Aging" Zhang H. 中国科学院. 2021-01-07.

 Institute of Zoology, Peking University, Xuanwu Hospital Capital Medical University, Beijing Institute of Genomics, Institute for Stem Cell and Regenerationなどの北京の研究機関にSalk Instituteも加わった研究グループは今回、ウェルナー症候群またはハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の病因変異を帯びたヒトES細胞から誘導したヒト間葉系前駆細胞 (human mesenchymal precursor cells: hMPCs)を対象とするゲノムワイドCRISPR-Casスクリーンにより、細胞老化を促進する遺伝子候補を100種類を同定した。

 ヒストンアセチル化酵素KAT7遺伝子が、二種類のhMPCsのスクリーンのいずれにおいてもトップヒットに含まれており、KAT7が細胞老化を抑制する標的であることが示唆された。KAT7は、生理学的な老化および病理学的老化においても、ヒト間葉系前駆細胞において活性化する。KAT7の欠失は細胞老化を低減し、KAT7の過剰発現が細胞老化を加速する。KAT7の不活性化はヒストンH3リジン14のアセチル化を低減し、p15<INK4b>転写を抑制し、老化したヒト幹細胞を若返らせる。

 これまでの研究から、組織・器官への老化細胞と炎症性細胞の蓄積が加齢に伴う疾患とともに老化の進行をもたらすとされている。Cas9/sg-KAT7をコードしたレンチウルスを静注することで、マウス肝臓において老化細胞と炎症性細胞が減少し、血清中のSASP (senescence-associated secretory phenotype:細胞老化関連分泌現象)因子が消え、生理学的老齢マウスと早老症モデルマウスの健康寿命と寿命を伸ばした。

マウスに続いて、ヒト初代肝細胞に、Cas9/sg-KAT7をコードしたレンチウイルスまたはKAT7阻害剤WM-3835を加えると、その細胞老化が抑制され、SASP遺伝子の発現が低減し、老化に対してKAT7を標的とする療法の可能性を示した。

[関連crisp_bio記事]