2023-06-19 Lancet 2021年刊行論文が取り下げられ (retracted)、同一著者らによる同一タイトルの論文が再投稿されLancet から刊行されたことを受けて、書誌情報とデータの一部を改訂した。
 論文取り下げから再投稿までの経緯は以下のとおり:発端は、同一の対象 (コホート)の1年後のデータを解析した論文 (Lancet 2022-08-28)との間のデータおよび自覚症状質問書式 (sumptom questionnaire) の不整合が指摘され、Lancet 誌が2021年刊行論文に関する"Expression of Convcern"を2022年11月24日に公にした。その後、2021年刊行論文のデータ修正案が提出され、Lancet が主導して修正データについて統計学の観点から、自覚症状質問書式の不整合について臨床の観点からのレビューが行われ、修正データの正当性と書式の不整合は研究結果に影響しない範囲であったという結論を得、さらに、研究に参画した主要機関の一つであるChina-Japan Friendship Hospoitalにおける修正後のデータの検証を経て、Lancet が再投稿を求めるに至った。
[出典] Comment "Retraction and republication: 6-month consequences of COVID-19 in patients discharged from hospital: a cohort study" The Lancet Editors. Lancet 2023-06-09. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(23)01175-3

2021-10-15 Lancet 2021年刊行論文に準拠した初稿
 新型コロナウイルスは呼吸器系だけでなく、他の臓器も直接的そしてまたは間接的に損傷し、また、損傷は一過性に終わらず後遺症が残るとされている。今回、武漢においてCOVID-19感染・治療後退院した回復者を追跡した調査の結果が、The Lancetから公開された。


[出典] "6-month consequences of COVID-19 in patients discharged from hospital: a cohort study" Huang C, Huang L, Wang Y, Li X, Ren L, Gu X, Kang L, Guo L, Liu M [..] Wang J, Zhang D, Cao B. Lancet. 2021-01-08. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)32656-8  Lancet 2023-06-17/06-12. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(23)00810-3 [著者所属] Wuhan Research Center for Communicable Disease Diagnosis and Treatment, National Clinical Research Center for Respiratory Diseases, Institute of Pathogen Biology, China-Japan Friendship Hospital, Jin Yin-tan Hospital, Peking University Clinical Research Institute, Tsinghua University School of Medicine, Institute of Pathogen Biology など。 

 武漢市金銀潭医院から2020年1月7日~5月29日の間に退院したCOVID-19回復者2,469例を対象として、6月16日から9月3日の間に、COVID-19の危険因子を特定することを目的とする前後両方向のコホート研究(ambidirectional cohort study)を行ったWuhan Research Center for Communicable Disease Diagnosis and Treatment, Tsinghua University-Peking University Joint Center for Life Sciences, China-Japan Friendship Hospitalなどのグループからの報告が、The Lancetから公開された。

対象
  • 退院者2,469例のうち1,733例を対象とした。年齢は中央値57歳 (47歳〜65歳)であり, 男女比は48%と52%であった。
  • 736例は次に述べる事由から対象外: 死亡, 精神障害, 認知症, 再入院, 脳卒中または肺塞栓症のために移動不可能* あるいは、不参加の意思, 連絡途絶, 武漢外に居住, 老人・介護施設に居住
  • 736例の中に、肺や腎臓の障害にともなう死亡例が33名、エコノミー症候群 (deep vein thrombosis: DVT)を介した急性肺塞栓症に伴う再入院が25名 (1名は肺線維症)、虚血性脳卒中が3例含まれていた
手法
  • 追跡調査の時期は、COVID-19発症から中央値で186日 (175日~199日)であった、
  • 1,733例全てについて、症状と健康状態を問診し、身体検査 (6分間歩行試験) と血液検査を行った。また、入院中の7段階の重症度 (スケール)に応じて、スケール3, 4および5-6の例については、購入機能検査と胸部高分解能CT, および超音波検査を行った。
  • ロピナビル (Lopinavir)治験に参加していた例については、SARS-CoV-2抗体検査も行った。
  • 以上の診断・検査のデータをベースとして、COVID-19の重症度*および回復後の健康状態との間の相関を、多変量の線形またはロジスティック回帰モデルで評価した。
  • [*] 関連crisp_bio記事: [20200914更新] 新型コロナウイルス感染症COVID-19の重症化への三段階. https://crisp-bio.blog.jp/archives/23848465.html
結果
  • 疲労または筋力低下 52%64% (855/16541,038/1,655), 睡眠障害 26% (437/1,655), および不安または鬱 23 % (367/1,6161,617)を訴える回復者が多く、回復者の73%に何らかの後遺症が見られた。
  • 6分間歩行試験で歩行距離が正常値の下限に至らなかった比率が重症度スケール3, 4, および5-6についてそれぞれ、1724%, 1322% および2829%となった。呼吸障害 (diffusion impariment)率は、それぞれ、22%, 29%, および56%となり、CTスコアの中央値はそれぞれ、3.0 (2.0-5.0), 4.0 (3.0-.5.0), および5.0 (4.0-6.0)となった。多変量解析モデルの結果も、COVID-19重症度が高いほど、より重い後遺症が残ることを示唆した。
  • 抗体検査をした94例では、入院中と退院後の間で、血清陽性率が96.2%から58.5%へ低下し、抗体力価の中央値が19.0から10.0へと低下していた。
  • 入院中は急性腎臓傷害が見られなかったCOVID-19回復者の13%に腎臓機能に異常が発生していた。