[出典] "Structure-guided multivalent nanobodies block SARS-CoV-2 infection and suppress mutational escape" Koenig P-A, Das H, Liu H, Kümmerer BM [..] Hällberg BM, Wu NC, Schmidt FI. Science 2021-01-12. https://doi.org/10.1126/science.abe6230

 University of BonnにKarolinska Institutet, Scripps Research Instituteなどが加わった国際共同研究グループは、COVID-19治療薬として、SARS-CoV-2に抗する新たなナノボディーを同定・開発し、SARS-CoV-2の変異にも対応可能な多価ナノボディーに至った。ナノボディー は抗体の断片 (抗原結合性フラグメント/Fab (Fragment antigen binding))であり、抗体よりも小型で構造が単純であり、成体組織に入り込みやすく、バクテリアや酵母をプラットフォームとして低コストで大量生産することができる。
  • アルパカやラマは、ヒトの抗体が重鎖と軽鎖で抗原結合部位を形成するのに対して、軽鎖を伴わずに重鎖だけで抗原結合部位を形成する単鎖抗体を生産する。研究グループは、SARS-CoV-2の表面抗原をアルパカとラマに注入し、アルパカとラマの血液から単鎖抗体の遺伝情報を抽出し、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を認識する単鎖抗体を選別し、さらに、培養細胞においてSARS-CoV-2に対する活性を測定し、スパイクタンパク質のRBDに結合する4種類のナノボディーにまで絞り込んだ: ラマ由来のVHH E; アルパカ由来のVHHs U, V, およびW
  • 続いて、表面プラズモン共鳴法、X線結晶構造解析、クライオ電顕法などによりラマ由来とアルパカ由来のナノボディーがそれぞれ認識する抗原2種類を同定した。この情報をもとに、2種類のナノボディーを組み合わせることで、単一のナノボディーの100倍以上の中和活性を帯びた二価ナノボディーを実現した。この二価ナノボディーはまた、異なる2カ所を標的とすることから、継続的に自然発生するスパイクタンパク質変異体に対して、長期間有効性を保つことを期待できる。
  • 研究グループはまた、各ナノボディーと二価または三価ナノボディーのウイルス感染阻害の機構が、ACE2結合に対する競合的阻害の他に、ナノボディーがスパイクタンパク質が、ヒト細胞膜結合に先んじて、ヒト細胞膜に結合した状態 [*]に固定してしまうことで、ヒト細胞膜への結合を阻害する機構を発見した [* スパイクタンパク質は三量体を形成し、したがって、RBDの3個ピー存在する。RBDがACE2に結合するには、RBDがスパイクタンパク質本体から外を向いているいわゆる"up"状態にある必要がある。VHH Eナノボディーは、ACE2に結合していない状態でRBD3コピーを全て"up"状態に固定する]
[論文掲載PDBエントリー]
7KN5  (RBD + VHH E + VHH U); 7KN6  (RBD + VHH V + CC12.3 Fab heavy chain); 7KN7  (RBD + VHH W + CC12.3 Fab heavy chain); 7KSG  (Spike + VHH E); 7B14 (RBD + VHH E); 7B11  (Spike + VHH V); 7B18  (Spike + VHH VE); 7B17 (RBD + VHH VE).


[参考] 新型コロナウイルスを標的とするナノボディー関連crisp_bio記事
crisp_bio 2020-10-18 新型コロナウイルスを捉え中和する"モノボディー (monobodies)"を作出
crisp_bio 2020-07-16 新型コロナウイルス: ラマとアルパカに由来するナノボディ(VHH抗体)が、SARS-CoV-2を封じ込める (3)
crisp_bio 2020-05-09 新型コロナウイルス: ラマとアルパカに由来するナノボディ(VHH抗体)が、SARS-CoV-2を封じ込める (2)
crisp_bio 2020-05-09 新型コロナウイルス: ラマとアルパカに由来するナノボディ(VHH抗体)が、SARS-CoV-2を封じ込める (1)