University of Texas Medical Branchとファイザー社は2021年1月7日に、研究室で作出したBNT162b2 (ファイザー/ビオンテック製)が英国と南アフリカの変異株に共通な変異N501Yを帯びたSARS-CoV-2に対して、BNT162b2 (ファイザー/ビオンテック製)有効であることを2021-01-07に査読なしのプレプリント投稿システムbioRxiv から公開した。 [* crisp_bio 2021-01-12 新型コロナウイルス:ファイザー/ビオンテックのmRNAワクチンは、N501Y変異株にも有効である]

 1月19日、変異体に対する
BNT162b2とmRNA-1273 (モデルナ製)の有効性に関する報告と、南アフリカにおける変異体に対する回復者血漿の中和活性に関する報告がbioRxivに投稿された。今後も続くと思われる多重変異の作用に関する報告を注視していく必要がありそうだ。

1. mRNAワクチンはいずれも変異体に対して有効であるが、誘導されるモノクローナル抗体の中和活性は次変異によって低下または消失する

[出典] "mRNA vaccine-elicited antibodies to SARS-CoV-2 and circulating variants" Wang Z, Schmidt F, Weisblum Y, Muecksch F, Barnes CO, Finkin S, Schaefer-Babajew D, Cipolla M, Gaebler C, Lieberman JA [..] Bjorkman PJ, Casellas R, Hatziioannou T, Bieniasz PD, Nussenzweig MC. bioRxiv 2021-01-19. https://doi.org/10.1101/2021.01.15.426911

 Rockefeller Universityを主とする研究グループが、米国FDAによって新型コロナウイルスを対象とする緊急使用が許可されたmRNAワクチン、BNT162b2 (ファイザー/ビオンテック製)とmRNA-1273 (モデルナ製)の変異株に対する有効性と誘導する中和抗体の活性とメモリーB細胞数を評価し、その結果を査読無しオンラインジャーナルbioRxivに投稿した。

 BNT162b2もmRNA-1273も、大規模な臨床試験によって有効性と安全性が示されていたが、誘導される中和抗体そのものの特性は詳らかにされていなかった。研究グループは、SARS-CoV-2未感染者のボランティア20名のうち14名にmRNA-1273を, 6名にBNT162b2を接種し、mRNAワクチンが誘導する抗体の活性とメモリーB細胞を分析した。
  • これまでの報告にあったように、2回目の接種をしてから8週間後、全員に、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質 (S)と受容体結合ドメイン (RBD)に対する高レベルのIgM抗体とIgG抗体が見られた。加えて、血漿の中和活性とRBD特異的メモリーB細胞の相対数が、COVID-19回復患者と同等であった。
  • E484KまたはN501Yの変異、または、三重変異 (K417N:E484K:N501Y)を帯びたウイルスに対する血漿の中和活性は僅かではあるが有意に低下した。
  • mRNAが誘導したモノクローナル抗体はスパイクタンパク質のRBD上の異なるエピトープ (ウイルスの抗原内で抗体が認識する部位)を標的とし、SARS-CoV-2を強力に中和した。この一連のエピトープはまた、COVID-19患者から分離されたモノクローナル抗体が認識するエピトープ群と共通していた。モノクローナル抗体とスパイクタンパク質の複合体の構造解析からワクチン接種者由来と回復者由来でスパイクタンパク質の構造が類似していることも同定した。
  • モノクローナル抗体の活性については、最も強力な17種類のモノクローナル抗体のうち14種類の中和活性が、K417N, E484K, またはN501Yの変異によって、低減するか消失した。注目すべきことに、組換え水泡口炎ウイルス (rVSV)/SARS-CoV-2 SをmRNAワクチンが誘導するモノクローナル抗体の存在下で培養すると、COVID-19患者に見られたと同様の変異が誘発された。
 以上、治療薬候補のモノクローナル抗体については新たな変異株に対する中和活性を検証する必要があり、異なるエピトープを認識するポリクローナル抗体を誘導するmRNAワクチンについても、新たな変異株に対する応答を検証していくことが望ましい。

2. 南アフリカ変異株は、COVID-19回復者患者由来の血漿中の中和抗体を免れる

[出典] "SARS-CoV-2 501Y.V2 escapes neutralization by South African COVID-19 donor plasma" Winner CK [..] Bhiman JN, Moore PL. bioRxiv 2021-01-19. https://doi.org/10.1101/2021.01.18.427166

 National Institute for Communicable Diseases (Johannesburg)を主とする研究グループが、南アフリカ変異株 (SARS-CoV-2 501Y.V2)が、 COVID-19に対して治療効果があると見られる3種類のモノクローナル抗体、ならびに、COVID-19回復期患者血漿中の中和抗体を免れることが(escape)可能と投稿した。

 南アフリカ変異株は、スパイクタンパク質のN末端ドメイン (NTD)に4種類のアミノ酸置換と3アミノ酸欠失の変異 (L18F, D80A, D215G, Δ242-244, ならびに R246I)を帯び、受容体結合ドメイン (RBD)3ヶ所にアミノ酸置換 (K417N,  E484K,  ならびにN501Y)の変異を帯びている。

 その中で、RBDのN501Y変異がウイルスの伝播性を高めるとされている。今回の実験では、RBDの変異にNTDの変異が加わることで中和抗体を回避する能力がさらに高まっていることが示唆され、今後、蓄積されていくであろう突然変異の作用を注視していく必要がある。