[出典] "A robust platform for expansion and genome editing of primary human natural killer cells" Huang R-S, Lai M-C, Shih H-A, Lin S. J Exp Med 2021-01-12. https://doi.org/10.1084/jem.20201529

 ゲノム編集は、複雑なシグナル伝達回路の解明に加えて免疫療法のための免疫細胞の機能の強化にとって、極めて有用な技術である。免疫細胞の中でNK (ナチュラルキラー)細胞は悪性腫瘍細胞に対する強力なエフェクターであるが、これまでゲノム編集が困難であった。細胞内に導入したDNAがもたらす細胞毒性の課題と、トランスフェクション効率と形質導入効率の課題があったためである。

 Institute of Biological Chemistry (台北)の研究チームは今回、凍結保存されていた初代ヒトNK細胞のフィーダー細胞フリーなex vivo 細胞増殖法の開発と、ヌクレオフェクションを介したCRISPR-Cas9 RNPのデリバリーにより、2つの課題を解決した。
  • NK細胞に最適化したRNPヌクレオフェクションによって、細胞生存率を高く保ちながら、無視できる程度のオフターゲット編集にて、NK細胞における効率的な多重遺伝子ノックアウトを実現した。
  • また、DNAテンプレートをRNPと同時に導入することで、複数の遺伝子座にわたってHAタグとGFPレポーターを遺伝子のインフレームにノックインすることも実現した。
 本研究は、凍結保存されたNK細胞を市販の遺伝子組み換え治療薬のプラットフォームとして活用可能なことを示した。