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[出典] "A CRISPR-Cas autocatalysis-driven feedback amplification network for supersensitive DNA diagnostics" Shi K [..] Nie Z. Sci Adv. 2021-01-27. https://doi.org/10.1126/sciadv.abc7802

 DNA/RNAそしてまたは酵素を組み合わせることでその動作と機能を精密に制御することができる人工核酸回路は、バイオセンサーとして大きな可能性を示してきたが、分子診断への展開には解決すべき課題があった。これまでの人工核酸回路は、第一に、一本鎖DNAを入力としており分子診断の標的であるゲノム二本鎖DNA (以下, dsDNA)を直接処理することができなかったこと、第二に、感度がピコモルからフェムトモルと分子診断には不十分であったことである。

 湖南大学の研究グループは今回、CRISPR-Cas12aの活性を活かすことで、等温増幅を介したdsDNAの超高感度 (supersensitive)検出を可能とする触媒核酸回路 (catalytic nucleic acid circuit)を開発し、"
CRISPR-Cas–only amplification network"に因んだCONAN*としてScience Advances 誌から発表した。 [* "CONAN"は"湖南"の日本語読みと同じ音になると思うが、"湖南"は中国語読みでは"フゥーナン/húnán"となるらしい, 閑話休題]
  • Cas12aのcrRNAを介した精密な標的認識, ヘリカーゼ活性, 及び、DNA鎖のトランス切断活性をベースとして、Cas12aの自己触媒で駆動する反応ネットワークを合成することで、指数関数的増幅をもたらすポジティブフィードバック回路を構築した [次項のCONANの設計参照]。
  • CONANは、dsDNAの超高感度 (アトモルレベル)かつ高分解能 (1塩基レベル)での検出を、単一の酵素 (Cas12a only), 一段階, リアルタイム, かつ生理温度での正真正銘の等温増幅にて実現した。
  • このCONANによって、臨床サンプルから、B型肝炎ウイルスとヒト膀胱癌それぞれと相関する一塩基変異の検出を実現した。
 CONANの設計 [Fig. 1引用右下図参照]
  • 2021-01-31 16.18.41CONANは、2種類のシグナル変換器 (T1とT2)と、シグナル増幅器 (A)で構成される。
  • 右図の左半分が、標的のdsDNA (Target DNA)を、C12aと、Target DNAを標的とするgRNA (gRNA-T)との複合体 (T1)が入力として認識し、Cas12aのトランス切断活性を活性化する部分回路である。
  • 中央のシグナル増幅器(A)の要が、標的を認識したCas12aが発揮するトランス切断活性 (コラテラル活性)によって消光状態にケージ化されていたgRNAを解放するように設計したscgRNA (switchable-caged guide RNA)であり、scgRNAは、標的に相当する蛍光レポーターを提供するとともに、図の右半分のポジティブフィードバックへの入力となるdecaged gRNAを提供する。
  • 右図の右半分のシグナル変換器T2を構成するCas12aが、scgRNAから解放された(decaged)gRNAと複合体を形成し、decaged gRNAと補助dsDNAプローブ (Assistant probe)を認識させ、T1のCas12aとは別のT2のCas12aのコラテラル活性を起動することで、Aを介して、ポジティブフィードバック回路が回転し始める。
[人工核酸回路関連参考論文]
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