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[出典] "In-situ generation of large numbers of genetic combinations for metabolic reprogramming via CRISPR-guided base editing" Wang Y, Cheng H, Liu Y [..] Zheng P, Wang M, Sun J, Ma Y. Nat Commun. 2021-01-29. https://doi.org/10.1038/s41467-021-21003-y

 Tianjin Institute of Industrial Biotechnology/National Technology Innovation Center of Synthetic  Biology (天津)を主とする研究グループの報告。

 複雑な細胞内代謝のリプログラミングには、一定の遺伝子群の発現を同時に調節する必要がある。Ex-situクローニングと形質転換に基づく手法は、標的とする遺伝子の数やその組合せのサイズの拡大に限りがある。In situの手法として多重自動ゲノム工学法 (multiplex automated genome engineering, MAGE)が開発されたが、MAGEは高効率な形質転換と異種DNAドナーの組見込みに依存しており、適用可能な微生物が極めて限られている。研究グループは今回、多数の遺伝子の発現を個別かつ同時に調節可能とする手法を開発し、Base Editor-Targeted and Template-free Expression Regulation (BETTER) として発表した。
  • BETTERは塩基エディターの一種であるCBEをベースとして、多様なリボソーム結合サイト (RBS) [Fig. 1参照], 5' UTR [Fig. 4参照], またはプロモーターの大量の遺伝的組み合わせをin situで実現し、クローンライブラリーの構築、形質転換、およびDNAドナーの組み込みを不要とした。
  • 研究グループはBETTERを利用して、産業上有用でありモデル微生物でもあるCorynebacterium glutamicumBacillus subtilisにおいて、ワンラウンドの実験で10種類までの遺伝子*の発現の同時調節を実現した。[* 大腸菌の場合は、MAGE法による35サイクルで24種類の遺伝子の発現の調節が報告 (Nature, 2009)されているが、CBEと同様にシチジンデアミナーゼを利用したTargfet-AIDによる大腸菌41遺伝子座の同時編集が報告されている (Nat Microbiol, 2018)。
  • その結果、キシロース異化 [Fig. 2参照] とリコピン生合成 [Fig.3参照 ]、または、グリセロール異化 [Fig. 5参照]を最適化した変異体を確立した。
 今回はCBEをベースとしたBETTERを報告したがABEをベースとしたBETTERを用意することで、部品となる因子の多様性をさらに広げることが可能である。BETTERは、遺伝的に扱いやすいか否かにかかわらず、広範な微生物におけける大規模な多重遺伝子発現のファインチューニングを可能とする。

[参考: 塩基エディター関連crisp_bio記事]

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