2021-05-04 (英国由来変異株が従来株を置き換えつつ感染が拡大している日本の状況を受けて)西浦博 教授が緊急報告、「第4波」が“これまでと違う”と言わざるを得ない「4つ」の理由.  現代ビジネス (講談社) Web. 2021-05-04. https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82810?page=2
  • 対策の遅れが“もたらすもの”
  • 生産年齢人口 (20歳から40歳代)で中等症・重症患者が圧倒的に増えた
  • 「まん延防止」は“スローダウン”に使える
  • 長期的見通しが大きく変わった - 高齢者の予防接種が完了すれば医療が逼迫するような社会的喧騒がすぐ終わるわけではない
2021-04-29 スパコン富岳も,N501Y変異株の感染力の強さを裏付け [大河原 克行. PC Watch 2021-04-28 16:53 https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1321973.html; 2つ目の挿入図参照]
2021-04-29 N501Y変異を帯びた英国由来変異株の都内感染拡大を巡る経緯を振り返ってみた:
2021-03-16 英国変異株伝播性がそれ以前の株よりも43-90%高いScience 誌 [本記事内2021-03-03投稿参照]で発表したNicholas G. Daviesが率いる研究グループが今回Nature誌 [*]にて死亡率が他の株よりも55%高い (95%信頼区間 39-72%)と発表した。この報告は、Robert Challenが率いる研究グループが2021-03-10にBMJ誌に発表した結果と整合し [本記事内2021-03-12投稿参照]、Daviesのツイートによると、その他にも整合する報告が数報ある。
[*] "Increased mortality in community-tested cases of SARS-CoV-2 lineage B.1.1.7" Davies NG, Jarvis CI, CMMID COVID-19 Working Group, et al. Nature. 2021-03-51. https://doi.org/10.1038/s41586-021-03426-1: 英国における2020年9月1日から2021年2月14日の間の陽性者2,245,264名と死者17,452名のデータをもとに、英国変異株をSGTF (S gene target failure)で判定し, 個人差, 検査と医療の状況などの見かけ上の相関をもたらすような因子の影響を数理的に排除した上での結論であり、また、英国においてはこのB.1.1.7株が蔓延しており、かつ、英国での治療法が進歩してきたにもかかわらず2021年に入ってからの死者数が2020年のパンテミック当初の8ヶ月を既に超えたことを指摘している。
2021-03-12 英国変異株感染者の致死率が、従来株感染者の1.64倍とする論文がBritish Medical Journal誌から出版された: "Risk of mortality in patients infected with SARS-CoV-2 variant of concern 202012/1: matched cohort study" Challen R et al. BMJ 2021-03-10. https://doi.org/10.1136/bmj.n579.
 Joint Universities Pandemic and Epidemiological Research (JUNIPER consortium)を主とする研究グループは、2020年10月1日から2021年1月29日までの間の陽性者54,906人について28日間追跡し、B.1.1.7変異株感染者と従来株感染者の1000人当たりの致死率を比較したところ、それぞれ、4.1人対2.5人と、変異株陽性者の致死率が従来型の1.64倍という結果となった。
2021-03-08 英国変異株の伝播性に関するScience誌論文の書誌事項とリンク、およびその概要を追記
[出典] "Estimated transmissibility and impact of SARS-CoV-2 lineage B.1.1.7 in England". Davies NG et al. Science 2021-03-03. https://doi.org/10.1126/science.abg3055
 Centre for Mathematical Modelling of Infectious Diseases, CMMID COVID-19 Working Group, COVID-19 Genomics UK (COG-UK) Consortiumなど英国組織を中心とする国際共同研究グループによる解析結果。
  • 2020年11月英国南東部で発生したSARS-CoV-2変異体VOC 202012/01 (B.1.1.7系統)の感染が急速に拡大し定着している。複数の統計解析と動態モデリングの結果を総合して、この変異体が、それ以前の変異体よりも43~90% (95%信頼区間: 30~130%)高い再生産数を帯びていると算定した。
  • また動的伝播モデルから、VOC 202012/01がCOVID-19症例の大きな波をもたらすと想定した。
  • 教育機関の限定的封鎖やワクチン接種を大幅に加速するなどの厳格な措置を取らない限り、2021年の英国の入院と死亡は2020年のレベルを上回るであろう。
  • 憂慮すべきことに、 VOC 202012/01は各国で広がっており、デンマーク、スイス、米国でも英国と同様な感染拡大 (59~74%)を示している。
2021-02-09  初稿
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[crisp_bio注] 本ブログ記事は「新型コロナウイルス:英国変異株の変異と感染性の因果関係のエビデンスはこれから」https://crisp-bio.blog.jp/archives/25044202.html のフォローアップに相当します

1. 英国変異株の米国における感染拡大をゲノム疫学で分析
[出典] "Genomic epidemiology identifies emergence and rapid transmission of SARS-CoV-2 B.1.1.7 in the United States" Washington NL, Gangavarapu K [..] Lee W, Andersen KG. medRxiv. 2021-02-07. [プレプリント] https://doi.org/10.1101/2021.02.06.21251159
 HelixのWilliam LeeとScripps Research InstituteをKristian G. Andersenを責任著者とする著者らがプレプリント・サーバmedRxivに投稿:  
  • 英国で2020年11月に感染が認識され調査の結果、9月20日のサンプルが初の感染と認定されたSARS-CoV-2変異株, B.1.1.7, が、その後、短期間で拡散し、2021年1月の時点で世界中に広がっていることから、米国内で発見された早期から米国内での感染拡大の動態を、ゲノム疫学で遡及追跡した。
  • [crisp_bio参考 B.1.1.7の変異について] スパイク (S)タンパク質上 H69-V70欠失*, Y144/145欠失*, N501Y*,  A570D*, P681H*, T716I, S982A, D1118H (* 受容体結合ドメイン/RBD 内) [1]; RT-qPCRにおいて、S遺伝子では陰性、N遺伝子とORF1ab遺伝子で陽性になる現象をSGTF (S gene target failure)と呼ぶ[2]
  • 英国で発見されたSGTFが、B.1.1.7検出のプロキシーとして使えることを確認した。
  • 2020年12月から2012年1月までの間に米国内の検査機関から得たB.1.1.7変異株212例のゲノム配列を決定した。2021-02-09 15.03.56
  • SGFTサンプルにB.1.1.7が占める割合自体は州によって異なったが、増加の仕方は共通しており、1週間弱で倍増し、伝播率としては35-45%上昇と算定した [Figure 1引用右図参照]。
  • 米国内でのウイルス伝播過程を、ゲノム配列をベースとする分子進化解析からモデリングするphylodynamic解析により、2020年11月には米国内に互いに独立に数カ所に持ち込まれ、市中感染を介して、2021年1月までに少なくとも30州に広がったと推定した。
  • また、B.1.1.7の感染が拡大している他国と同様に、B.1.1.7が急速に優勢になると予測し、迅速に対策をとる必要があるとした。
 [引用資料]
  1. Inside the B.1.1.7 Coronavirus Variant. Corum J, Zimmer C. New York Times. 2021-01-18. https://www.nytimes.com/interactive/2021/health/coronavirus-mutations-B117-variant.html
  2. Guidance "Investigation of novel SARS-CoV-2 variant: Variant of Concern 202012/01 Technical briefing 5" Public Health England. 2021-02-01. https://www.gov.uk/government/publications/investigation-of-novel-sars-cov-2-variant-variant-of-concern-20201201
2. 新型コロナウイルス英国変異株B.1.1.7は、死亡リスクを高める可能性がある
[出典] "NERVTAG paper on COVID-19 variant of concern B.1.1.7" UK Department of Health and Social Care &Government Office for Science 2020-01-22.
https://www.gov.uk/government/publications/nervtag-paper-on-covid-19-variant-of-concern-b117
 英国New and Emerging Respiratory Virus Threats Advisory Group (NERVTAG)からの報告
  • 重症化について、英国PHE (公衆衛生庁)は当初、症例対照研究に基づいて他の変異体と同様と判断していたが、その後、B.1.1.7感染者は他の感染者よりも重症化する報告例が蓄積されてきた。
  • COVID-19死亡例と関連づけた"Pillar 2" (広範なスワブ検査)により、SGTF (B.1.1.7のプロキシー)と非SGTFを同定した互いに独立の調査結果
  • LSHTM: ハザード比で1.35倍 (95% CI 1.08-1.68)
  • Imperial College London: 致命率 (CFR)が症例対照解析では1.36 (95%CI  1.18-1.56); 標準化CFRで1.29 (95%CI 1.07-1.54)
  • University of Exeter: ハザード比 1.91 (1.35 -2.71)
  • PHEでの症例対照解析では死亡率1.65 倍 (95%CI 1.21-2.25)
  • これらのデータの妥当性に限界があるが、B.1.1.7感染が他の株の感染よりも死亡率を高める可能性が出てきた。
  • なお、COVID-19 Clinical Information Network (CO-CIN)の解析では、B.1.1.7による死亡率リスク上昇は見られなかった
 [crisp_bio注 ] 検査数や死亡例数のデータがレポート内で公開されている。

[参考: 国立感染症研究所からの変異株情報]