[出典] “Mitochondrial DNA editing in mice with DddA-TALE fusion deaminases” Lee H, Lee S [..] Kim JS. Nat Commun. 2021-02-19. https://doi.org/10.1038/s41467-021-21464-1
[注] DddA-derived cytosine base editors (DdCBEs)
 Institute for Basic Scienceの研究グループの成果
  • ミトコンドリアDNAは、ミトコンドリア酸化的リン酸化 (OXPHOS)システムを介して細胞呼吸に決定的な役割を果たしていることから、mtDNAの変異はさまざまな器官や筋肉 (特に、大量の生体エネルギーを必要する組織)に重篤な障害を引き起こす。また、mRNAミトコンドリア病患者の細胞は、野生型 (WT)mtDNAと1塩基変異を帯びた変異型 (MU)mtDNAが共存するというヘテロプラスミック (heteroplasmic)な状態にあり、ミトコンドリア病の発症はWT mtDNAとMU mtDNAのバランスに依存する。
  • mtDNAを編集する技術としてこれまでに、MU mtDNAを特異的に切断してMT mtDNAレベルを低下させるMitoTALEN (Mol Ther, 2015 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26159306/)、ミトコンドリア内に限りCas9が活性化し遺伝子ノックアウトを可能とするmito-CRISPR [1]、および、B. cenocepacia由来シチジンデアミナーゼ毒素 (DddAtox) をベースとする塩基エディターDdCBEによるC-to-T変換[2]が実現してきた。
  • 研究グループは今回、DdCBEsによるin vivo mtDNA塩基編集を介して、ミトコンドリアDNA変異を帯びた動物モデルの作出と、誘導したミトコンドリア変異の生殖細胞系伝達が可能かを、検証した。
  • 2021-02-23 14.29.37マウス胚における高効率なmtDNA編集を、目的に合わせたDdCBEsを構築することで実現した [Fig. 1-b引用右図参照]。
  • NADHの脱水とユビキノンへの電子伝達を触媒するNADHデヒドロゲナーゼのサブユニットをコードするミトコンドリア遺伝子, MT-ND5(ND5), を標的とするDdCBEにより、ヒトのミトコンドリア病に関連するm.G12918Aと未成熟終止コドンを生成するm.C12336Tを含む種々の変異を誘導した。
  • こうして、ミトコンドリア病モデルマウスを作出し、DdCBEsによるミトコンドリア病療法の可能性を示した。
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  1. 2021-01-04 Cas9にミトコンドリア移行ペプチドを結合することでミトコンドリア内DNAに特異的なノックアウトを実現. https://crisp-bio.blog.jp/archives/25219919.html
  2. 2020-07-11 ミトコンドリアDNAのC•G-to-T•A変換を、dCas9/Cas9nを必要としない塩基エディター 'DdCBE'の開発により実現. https://crisp-bio.blog.jp/archives/23571615.html