[出典] "In vivo CD8+ T cell CRISPR screening reveals control by Fli1 in infection and cancer" Chen Z [..] Wherry EJ, Shi J. Cell. 2021-02-25. https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.02.019
Graphical Abstract参照 https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S0092867421001690-fx1_lrg.jpg
 University of Pennsylvaniaに Johns Hopkins Universityが加わった研究グループの成果
  • 慢性感染症や癌の場合、過剰な刺激にさらされたエフェクターT細胞 (TEFF細胞)から分化したメモリT前駆(memory precursors)細胞 (TMP)は、長期生存するメモリーT細胞 (TMEM細胞)ではなく疲弊したCD8陽性T細胞 (TEX)へと分化する。
  • 研究グループは、TEFFとTEXの運命決定に中心的な役割を果たしている遺伝子群を同定することを目的として、急性または慢性のウイルス感染に応答する抗原特異的CD8陽性T細胞において転写因子を標的とするin vivo CRISPR-Cas9スクリーニングを行った。
  • 免疫応答を対象とするこれまでのin vivo CRISPR/Cas9スクリーニングは、Cas9編集を加えた骨髄前駆細胞または大量のCD8陽性T細胞を対象とするin vivoゲノムワイドスクリーニングであった。研究グループは今回、Cas9を導入したCD8陽性T細胞にレトロウイルスを介したsgRNA発現を誘導するスクリーニング (optimized T cell in vivo CRISPR screening,  OpTICS)のプラットフォームを開発し、遺伝子欠損以外による免疫系の改変と過剰な抗原特異的CD8陽性T細胞によるT細胞の分化またはウイルスの病原性の改変を回避した [Figure 1参照 https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S0092867421001690-gr1_lrg.jpg]
  • 120種類の転写因子を対象とするOpTICSの結果、TEFFとTEXの分化に必須であることが知られている転写因子 (Batf; Irf4; Myc)および転写抑制因子 (Tcf7; Smad2; Tox)を同定した。加えて、TEFF分化の中心的調節因子を発見した。その中には、最適な分化を制限する因子 (Irf2; Erg; Fli1)が含まれていた。これらのノックアウトは機能獲得変異をもたらし、TEFF応答を活性化する。
  • この中で、免疫細胞でも非免疫細胞でも造血系などの発生過程に関与するETSファミリーの転写因子, Fli1,の機能を詳細に解析した。
  • Fli1はエフェクター関連遺伝子のcis エレメントに結合することで、TEFFの分化を制限する。Fli1欠損によって、ETS:RUNXモチーフのクロマチン・アクセスビリティーが向上し、Runx3にドライブされるTEFFプログラムの転写誘導が進行した。
  • Fli1欠損は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (Lymphocytic Choriomeningitis Virus: LCMV) 感染時に限らず、インフルエンザウイルスまたはリステリア菌 (Listeria monocytogenes)感染に対しても、TEFFバイオロジーと防御免疫を改善し、さらに、抗腫瘍免疫も改善した。
  • Fli1は、発生中の活性化CD8陽性T細胞のエピゲノム を、ETS:RUNXにドライブされるTEFFの過剰な分化から保護し、Fli1のノックアウトがTEFFの活性を改善し感染症や癌にたいする防御免疫を向上される。
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