[出典] "Dual modes of CRISPR-associated transposon homing" Saito M, Ladha A, Strecker J [..] Macrae RK, Zhang F. Cell. 2021-03-25. https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.03.006
[注] 責任著者Feng Zhangの本論文ツイートを文末に引用 
 Feng Zhangらは先行研究において、NCBIのEugene V. Kooninらと共に,シアノバクテリア Scytonema hofmanni ゲノムに、CRISPRシステムを伴うトランスポゾンを見出して [*]、CAST (CRISPR-associated transposases) と命名し、ShCASTを利用することで、E. coli ゲノムのsgRNA標的サイトに、DSBを介さずに、外来DNAを80%という高い効率で挿入可能なことを示していた [*]
[*] [20200628更新] CAST: Cas12kとトランスポザーゼの協働によりドナーDNAを効率よくノックイン. https://crisp-bio.blog.jp/archives/18164585.html; "RNA-guided DNA insertion with CRISPR-associated transposases" Strecker J [..] Zhang F. Science 2019-06-06. https://dx.doi.org/10.1126/science.aax9181

Tn7トランスポゾンの転移機構
  • 大腸菌由来のTn7トランスポゾンの原型は,トランスポザーゼのコアタンパク質, TnsA, TnsBおよびTnsCを利用して転移する.
  • すなわち,TnsABCと部位特異的DNA結合タンパク質TnsDとの相互作用を介してgmlS attachment site (ホーミングサイト) へと転移するか,または,TnsABCとTnsEタンパク質との相互作用を介して,可動遺伝因子へと転移する
CASTシステム
  • これまでに3種類のCASTシステムが報告されている.ヌクレアーゼドメインが不活性化されているCas12kエフェクターをベースとするCAST V-K,Cas3ヌクレアーゼを欠損しているCascadeをベースとするCAST I-F,および, CAST I-B1とCAST I-B2の3種類である.前2者は実験的に検証済みであるが,CAST I-Bはin silico で予測され極めて稀であり,実験検証されていない.
  • CASTのホーミングは,tnsEを欠損している場合は,CRISPRアレイに格納されているスペーサ(crRNA)にガイドされる.しかし,ほとんどのCASTが,crRNAが標的可能なゲノム上の領域に位置せず,また, CAST I-Fの場合はIMPDH とSRP RNAを含む保存配列に隣接して位置することが,crRNAに依存しないホーミング機構が存在することを示唆し,また,既知のCASTシステムが全てtnsDのホモログであるtniQを帯びていたことも,crRNAに依存しないホーミング機構がCASTシステムに内在していることを示唆していた.
  • Scytonema hofmannii のCAST V-Kシステムでは,CRISPRアレイ領域外に存在する非局在型のcrRNAにガイドされて,主としてtRNAへのホーミングが進行する.
    CAST V-K遺伝子座: tnsB|tnsC|tniQ|カーゴ遺伝子|転写因子|cas12k|tracrRNA|CRISPRアレイ|非局在型crRNA|
  • Anabaena variabilis のCAST I-B1システムは非局在型のcrRNAを帯びておらず,独特のTniQタンパク質を帯びていた.他のCASTシステムにみられるよりもTn7 TnsDへの類似度が高い長短2種類のTniQタンパク質を帯び,またglmsの近傍に位置していた(論文では途中から長い方のTniQをTnsDと呼び替えた)
    CAST -IB1遺伝子座: tnsA|tnsB|tnsC{tniQ|カーゴ遺伝子| cas6|cas8|cas7|cas5|CRISPRアレイ|転写因子|カーゴ遺伝子|tnsD|カーゴ遺伝子
  • CAST I-B1では,tnsDを介したバクテリアゲノムホーミングサイトへのホーミング,または,crRNAを介したtRNAへのホーミングが進行する.
関連crisp_bio記事
Feng Zhangの論文紹介ツイート