[出典] "High throughput functional variant screens via in-vivo production of single-stranded DNA" Schubert MG, Goodman DB [..] Church GM. bioRxiv. 2020-03-06 [プレプリント]. https://doi.org/10.1101/2020.03.05.975441
 天然に存在する変異が表現型に及ぼす作用を同定するには,膨大な変異を標的細胞に誘導し,個々の変異の作用を測定可能にするハイスループットな手法が必要である.これまで,細胞外で作成した種々の変異を帯びたオリゴヌクレオチド・ドナーのプール型ライブラリを,エレクトロポレーションによって細胞へ導入し,一本鎖アニーリングタンパク質 (single strand annealing proteins: SSAP)を介して複製時のDNA二本鎖 (dsDNA) に挿入するオリゴヌクレオチド・リコンビニアリングや,近年では,プール型CRISPR/Casシステムを利用した変異の機能スクリーンが行われてきたが,精度,適用可能領域,スケーラビリティーに難があった.
 2021-03-30 20.17.41G. M. Churchが率いる研究グループは今回,その内在逆転写酵素 (RT)を介してRNAからマルチコピー一本鎖DNAを生成する特徴を帯びているレトロン [レトロンを対象とするレビューから引用した右図参照]をベースとしたリコンビニアリングによるプール型変異機能ゲノミクスの手法を開発した.
 合成または天然に存在する変異に加えて変異導入標的部位の両側と相同な配列を変異の左右に組み込んだレトロンのプラスミド・ライブラリーを用意し,細胞内でプラスミド転写物からのレトロン内逆転写酵素による逆転写から大量に生成される変異ssDNAをSSAPを介してdsDNAに挿入することで,プール型で個々の変異が誘導する表現型改変を同定可能とする効率的な手法を開発し,レトロン・リコンビニアリング (Retron Library Recombineering: RLR)としてbioRxivに投稿した [bioRxiv投稿 PDF版 https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.03.05.975441v1.full.pdf の20ページのFigure 1参照]
  • RLRは,レトロンプラスミドから変異ssDNAを細胞内で生成すると共に,細胞内に維持されるプラスミドを変異のバーコードとして利用可能なことから,プール型変異機能ゲノミクスを実現している.
  • RLRにおけるレトロンの編集効率 ~90%は,野生型レトロンの数千倍に及ぶ: DNA損傷修復誘導タンパク質遺伝子mutS のノックアウト,エクソヌクレアーゼ遺伝子recJ sbcB のノックアウト,および,SSAPとしてCspRecTを選択
  • RLRは,CRISPRによるプール型スクリーンに対して,sgRNA, DNA二本鎖切断およびPAM配列を必要としないことから,可用性が高い.
  • RLRによって,合成変異DNAライブラリーを対象とする抗生物質耐性遺伝子の解析に加えて,抗生物質トリメトプリムに対して高耐性を獲得した大腸菌株に由来する数千万のゲノムDNA断片を対象とする抗生物質耐性遺伝子/SNPsの解析を実現した (DNA断片は平均~100 bpのサイズであり,ゲノムを50重にカバー; SSAPとしてRedβを使用).