2021-05-31 タイトルを「CpGアイランドの有無に左右されないゲノムワイドCRISPRエピゲノム編集を実現」から「DNAメチル化を自在に書き換えるCRISPRoffとCRISPRon」へと改訂
2021-04-30 Boston Uの研究チームがNuñezらの論文を紹介:一定の遺伝子のサイレンシングを,細胞分裂や分化の過程にわたって確固と維持可能とするプログラム可能なエピジェネティック・メモリー・ライター、CRISPRoff,をdCas9をベースとして開発した;CRISPRoffは,ほとんど全ての哺乳類細胞において,科学研究や臨床応用に向けて,エピジェネティックメモリーのオンデマンドでの操作を可能とするシンプルで汎用的なツールである.
[出典] PREVIEW "Here to stay: Writing lasting epigenetic memories" Moussa HF, Angstman JF, Khalil AS. Cell 2021-04-29. https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.04.007
2021-04-18 解説YouTubeへのリンクを追加: CRISPRoff - the new frontier for reversible epigenetic editing. 2021-04-17
2021-04-15 初稿
[出典] "Genome-wide programmable transcriptional memory by CRISPR-based epigenome editing" Nuñez JK [..] Gilbert LA, Weissman JS. Cell 2021-04-09.
https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.03.025; Graphical Abstract https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S0092867421003536-fx1_lrg.jpg
 細胞分化と自己複製を経ても維持される (遺伝性の)エピゲノムの編集ツールには,生物医学の発見や疾患の治療に貢献するポテンシャルがある.UCSFのGilbertとWeissmanが率いる研究グループは今回,dCas9をベースとしてDNAメチル化と抑制性ヒストン修飾を確立するプログラム可能なエピジェネティック・メモリー・ライターを開発し,CRISPRoffとして発表した.
 実証実験において,CRISPRoffを一時的に発現させることで始まる極めて特異的なDNAメチル化と遺伝子発現抑制が,幹細胞から神経細胞までの細胞分裂 (> 450回)と分化の過程において維持されることを示し,CRISPRoffは,ゲノムワイドスクリーン,細胞工学,エンハンサーサイレンシング,および遺伝性エピゲノムの原理の解明など多方面に展開可能であるとした.
  • ゲノムワイドのCRISPRoffスクリーンを介して,標準的なCpGアイランド (CpG islands: CGIs)を帯びていない遺伝子を含む殆どの遺伝子のサイレンシングを可能にするsgRNAsを特定し,標準的なメチル化では実現不可能なエピゲノム 編集を実現した.
  • CRISPRoffはまたCRISPRiよりも広い領域を標的可能であることを示した.
  • CRISPRoffにゲノムワイドスクリーンならびにクロマチンマークの解析を組合せることで,遺伝性の遺伝子サイレンシングが成立する法則に関する知見を得た.
  • CRISPRoffに対して,dCas9にTet1を融合することで、DNAメチル化を消去し転写装置をリクルートする (エピジェネティック・メモリーを消去する) CRISPRonも開発した.
 [注] 比較されたdCas9人工因子
  • CRISPRi (dCas9-KRAB)
  • dCas9-D3A-KRAB-Dnmt3L
  • CRISPRoff-V1 (KRAB-dCas9-Dnmt3A-Dnmt3L)
  • CRISPRoff-V2 (Dnmt3A-Dnmt3L-dCas9-KRAB)
 [CRISPR技術によるエピゲノム 編集レビュー]