[出典] "Global-scale CRISPR gene editor specificity profiling by ONE-seq identifies population-specific, variant off-target effects" Petri K [..] Joung JK, Pattanayak V. bioRxiv. 2021-04-05. https://doi.org/10.1101/2021.04.05.438458
 CRISPR-CasヌクレアーゼやCBE/ABEなどの遺伝子エディターのオフターゲットの同定は,オフターゲット候補サイトの洗い出しと,その細胞内または生体内での実験検証の2段階で行われてきた.オフターゲット判定ツールとして細胞または生体での検証をベースとするツール(GUIDE-seq, BLESS /BLISS, HTGTSなど)と,in vitro での検証をベースとするツール (Digenome-seq, CIRCLE-seq/CHANGE-seq, SITE-seqなど)が開発され,利用されてきた.
 既存のオフターゲット判定ツールはしかし,1回に処理できるゲノムは1種類にかぎられており,ヒトおよびその他の生物集団における多様なゲノムを対象とする網羅的オフターゲット判定が事実上不可能であった.また,これまでにゲノムの変異がオフターゲット頻度におよぼす影響を検証する試みはあったが,いずれも小規模であった.多様な変異や変異頻度が不均一な集団を対象とする遺伝子治療を進めるにあたって,この限界を打ち破っておく必要がある.Massachusetts General Hospitalを主とする研究グループはこの課題を解決するOne-seqをbioRxivに投稿した.
  • ONE-seqは,in vitroの手法の一種であるが,個々のゲノムから精製したゲノムDNA (gDNA)に替えて,カスタマイズ可能な胚スループットDNA合成技術で構築した高密度オリゴヌクレオチドを対象とするOligoNucleotide Enrichment and sequencingを行う.
  • ONE-seqは,ヒト培養細胞またはヒト化肝臓マウスモデルin vivo において,従来法と同等以上のSpCas9のオフターゲット検出感度を実現した.
  • ONE-seqはまた,Cas12a,CBEおよびABEについても,既存の手法よりも高性能であり,これまで見逃されていたオフターゲット候補サイトも同定した.
  • さらに,ONE-seqを利用して1000ゲノムプロジェクトに登録されている2,500種類を超えるヒトゲノム配列のオフターゲットプロファイルを実験的に明らかにした.
  • ヒト集団のオフターゲットプロファイルから,オフターゲットサイトでの変異頻度を押し上げる変異が特定のヒト集団に集中していることを見出した.この変異に感受性を示しヒト集団特異的なオフターゲットサイトが,ヒトリンパ芽球細胞において変異頻度を押し上げることを確認した.
 ONE-seqは,オフターゲット候補を洗い出すのに最も高感度なツールであり,ヒト集団にわたるゲノム配列の多様性が遺伝子エディターの特異性 (オフターゲット編集)に及ぼす影響の評価を可能とし,CRISPR技術による遺伝子治療のオフターゲット作用を包括的に評価することを可能とする.