2021-10-10 関連crisp_bio記事へのリンクを追加
2021-10-09 Pellmanグループからの関連論文紹介crisp_bio記事へのリンクを追加
2021-04-16 初稿
[出典] "Chromothripsis as an on-target consequence of CRISPR–Cas9 genome editing" Leibowitz LW, Papathanasiou S [..] Weiss MJ, Pellman D. Nature 2021-04-21.https://doi.org/10.1038/s41588-021-00838-7
[注] クロモスリプシス (chromothripsis; 染色体粉砕): 1つもしくはごく少数の染色体において、数十〜数千箇所にも及ぶ崩壊と再編成がおこる現象であり,悪性腫瘍と先天性疾患において認められる [Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/クロモスリプシス]

 DNA二本鎖切断 (DSBs)を介してゲノム編集を実現するCRISPR-Cas9については,オフターゲット部位への小規模なindels誘導にかぎらず,オンターゲット部位への望ましくない変異や大規模な欠失や染色体の再編成を誘導することが報告されてきた.
 Harvard Medical School, St. Jude Children’s Research Hospital, およびDana-Farber Cancer Instituteの研究グループは今回,臨床関連細胞における臨床関連遺伝子の編集と共にモデル細胞 (hTERT不死化細胞株RPE-1, 健常人由来CD34+ HSPCs)を対象とするLook-seq [*]などの手法によって,CRISPR-Cas9のオンターゲット編集が,細胞核の構造欠陥,微小核形成,および染色体架橋を誘導し,クロモスリプシスと呼ばれる変異過程の進行を促すことを見出した [*] "Here, using an approach combining live cell imaging with single-cell genomic analysis that we call ‘Look-Seq’, ...." Zhang CZ et al. Chromothripsis from DNA damage in micronuclei. Nature 2015-05-27. https://doi.org/10.1038/nature14493
  • 活発に分裂している細胞におけるCas9ゲノム編集は,小核や染色体架橋の形成が最大で20倍に増加し,染色体切断を引き起こす可能性のある異常な核構造をとる.
  • オンターゲットにCas9ゲノム編集が引き起こす最初のエラーが,その後の細胞周期において,小核や染色体架橋の生成を介して,はるかに広範な遺伝子変化へと増幅される.
 CRISPR-Cas9によるゲノム編集を臨床に展開する際には,大規模な染色体再編成を常に念頭においてモニターする必要がある.