[先行論文] "Feasibility of a Conditional Knockout System for Chlamydia Based on CRISPR Interference" Ouellette SP. Front Cell Infect Microbiol. 2018-02-27. https://doi.org/10.3389/fcimb.2018.00059
 クラミジアはコンパクトな偏性細胞内細菌でありほとんどの遺伝子が必須である.University of Nebraska Medical CenterのScott P. Oelletteは,不活性化したStaphylococcus aureus 由来Cas9 (Sa_dCas9)をベースとした誘導性CRISPRiによるクラミジアの機能ゲノミクスを発案し,C. trachomatis serovar L2において非必須遺伝子incA をモデル遺伝子として実証実験を行った.Conditional Knockout System for Chlamydia
  • 右図に引用したFig. 1左上のSa_dCas9とSa_gRNAを一体化したプラスミドを形質転換し,TetシステムでSa_dCas9の発現を制御することで,非必須遺伝子のincAの発現を可逆的に制御可能なことを示した.
  • Fig. 1右中と左下のプラスミドの形質転換により,Sa_gRNAとSa_dCas9をそれぞれ個別に導入しても,incA 遺伝子の発現およびクラミジアの生存に影響を及ぼさないことを確認した.
  • しかし,CRISPRiのよるノックダウンの効果をクラミジア集団全体について検証するには,プラスミドの安定性,オフターゲット編集の可能性,およびTetプロモーターのリーキーな発現が課題として残った.
 
[後継論文] "CRISPR Interference to Inducibly Repress Gene Expression in Chlamydia trachomatis" Ouellette SP, Blay EA, Hatch ND, Fisher-Marvin LA. Infection Immun. 202-04-19. https://doi.org/10.1128/IAI.00108-21
 University of Nebraska Medical CenterのScott P. Oelletteは今回,先行研究の課題を,ベクターのバックボーンの変更,Sa_dCas9の翻訳を駆動する"弱い"リボソーム結合部位の導入,およびSa_dCas9への自己分解タグの追加,によって解決した.また,Sa_dCas9に替えて,dCas12aによるCRISPRiも可能なことを示した.