2021-08-31 筆頭著者のインタビュー記事の紹介[*]を追加
2021-04-30 初稿
[出典] "Optimizing Integration and Expression of Transgenic Bruton’s Tyrosine Kinase for CRISPR-Cas9-Mediated Gene Editing of X-Linked Agammaglobulinemia" Gray DH [..] Kohn DB. CRISPR J. 2021-04-20. https://doi.org/10.1089/crispr.2020.0080

 UCLAの研究グループの報告.
  • X連鎖無ガンマグロブリン血症/ブルトン病 (X-linked agammaglobulinemia; XLA)は,免疫グロブリンが極めて低濃度であることと感染症の再発や重症化のリスクが極めて高いことを特徴とする一遺伝子性の原発性免疫不全症であり,ブルトン型チロシンキナーゼ (Bruton’s tyrosine kinase; BTK)の機能喪失変異によって,成熟Bリンパ球が産生されなくなることが病因である.
  • 研究グループは今回,CRISPR-Cas9が誘導する相同組み換え修復過程を利用して,コドン最適化したヒトBTK のcDNAを外部から内在BTK 遺伝子座の5'末端にノックインする手法を試行した.
  • BTK欠損K562細胞の実験では,BTKタンパク質の発現が野生型の11%に留まっていたが,コンストラクトの改変やウッドチャック肝炎ウイルス (WPRE)の転写後調節エレメントによる発現増強を介して,ほぼ生理的レベルのBTK発現を達成した.さらに,造血幹細胞・前駆細胞への導入率を最大化することで,in vitroで治療可能なレベルを達成した.
[*] NEWS "The Long and Winding Road to a CRISPR Gene Therapy for X-Linked Agammaglobulinemia - How a simple gene therapy concept became a complicated game of 'whack-a-mole'" Roberts R. CRISPR Medicine 2021-08-30. https://crisprmedicinenews.com/news/the-long-and-winding-road-to-a-crispr-gene-therapy-for-x-linked-agammaglobulinemia/

 鎌状赤血球症 (SCD)は単一の突然変異が原因で発症するが,XLAはBTK遺伝子の無数の突然変異が原因で発症するが,XLAの場合は,遺伝子全体に膨大な種類の病原性変異があり,ホットスポットと呼べるような部位が無い.そこで、遺伝子の先頭に完全長BTKのcDNAを追加すれば,その後にエキソン変異があっても,理論的には治癒するはずだと考えた.
 インタビューでは,コンストラクトの改変やウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメントによる発現増強に到る紆余曲折や,gRNA (言い換えると標的部位)の選択に関する紆余曲折についても触れらている.このため,インタビューの副題に「シンプルな遺伝子治療のコンセプトが、いかにして複雑な「もぐらたたき」ゲームになったのか」とされている.