中国科学院微生物研究所にNCBI/NIHが加わった研究グループからの論文
[出典] "Toxin-antitoxin RNA pairs safeguard CRISPR-Cas systemsScience 2021-04-30. https://doi.org/10.1126/science.abe5601
  • CRISPR-Casシステムは,バクテリアやアーケアにファージやプラスミドといった外来遺伝子を排除する適応免疫応答をもたらす一方で,進化の過程でCRISPR遺伝子座を不安定にする自己免疫応答のフィットネスコストをもたらしている.
  • 研究グループは今回,アーケアのタイプI-B CRISPR-Casシステムのカスケード (Cascade)遺伝子カセット (cas5-cas7-cas8-cas6)のcas8とcas6の間に,毒素 (toxin)-抗毒素 (antitoxin)として機能するRNAのペアがコードされていることを発見し,Cascade-repressed toxin (CreT)に因んでこれをCreTAとして報告した.[Fig. 1 CreT is a bacteriostatic toxin repressed by Cascade 参照. https://science.sciencemag.org/content/sci/372/6541/eabe5601/F2.large.jpg]
  • CreTは,希なアルギニンtRNA <UCU> (アンチコドンUCUをともなtRNA)を隔離することで,細胞の成長を停止させる静菌性RNAである . [Graphical Abstract 参照. https://science.sciencemag.org/content/372/6541/eabe5601]
  • CreAcreTと部分的に相補的でありカスケードのサブユニットCas6で成熟し,CRISPR RNA (crRNA)と同様にCascadeをcreTへとガイドしcreTの転写を抑制する.すなわち,CreAはカスケードの存在下のみで機能する.
  • CreTAを欠失している細胞では,転位因子を介したカスケード遺伝子の破壊が進行する.
  • さらに,複数のアーケアやバクテリアのCRISPR遺伝子座にてCreTA類似体を発見し,CreTAがCascadeを保護するとした.
 [バクテリアのTAシステムまたは自己免疫抑制機能に関連するcrisp_bio記事]