University of Regensburgの研究グループからの報告.
[出典] "Decoupling the bridge helix of Cas12a results in a reduced trimming activity, increased mismatch sensitivity and impaired conformational transitions" Wörle E, Jakob L, Schmidbauer A, Zinner G, Grohmann D. (bioRxiv. 2021-02-25)  Nucleis Acids Res. 2021-05-01. https://doi.org/10.1093/nar/gkab286
  • 遺伝子の編集と制御に加えて核酸を含む生体分子の超高感度バイオセンサーへの利用も広がってきたCas12aの構造基盤と分子機構についてはこれまでに「N末端のRECローブとC末端のNUCローブが,wedge (WED)ドメイン,RECドメイン内のREC1ドメインおよびブリッジヘリックス (BH)を介して連結された二重ローブ構造の酵素である」,「crRNAとその標的DNA鎖 (TS)の二量体化によってRECローブのコンフォメーションが変化し,そのRECドメインがcrRNAの標的鎖 (TS)と非標的鎖 (NTS)の双方を切断し、PAMから遠位に5'末端に長いオーバーハング (5~7 nt)を伴うDSBsを誘導し,DNA二本鎖切断 (DSB)サイトに生じた末端DNAをトリムするFnCas12a-1ことが報告されている [Figure 1引用右図参照].[参考: crisp_bio 2019-01-16 Cas12aのdsDNA/ssDNA切断分子機序の統合モデル. https://crisp-bio.blog.jp/archives/15017989.html]
  • 研究グループは今回,Francisella novicida Cas12a (FnCas12a)の酵素活性と柔軟なコンフォメーション変化に対するBHの役割を明らかにすることを目的として,BHへの変異導入,生化学的解析,および1分子FRET (smFRET)を組み合わせた解析を進めた.
  • その結果,BHがCas12aのDSBサイトに生じる末端DNAのトリミング活性と,crRNAと標的鎖との間のミスマッチに対する感度に影響を及ぼすことが明らかになり,また,BHへの変異導入がオフターゲット現象が抑制された高精度な変異体が得られた .FnCas12a-6
  • さらに,Cas12aのアポ状態の構造に,開状態 (open conformation)と活性な閉状態 (closed conformation)の2種類存在することがsmFRET解析から初めて明らかになった.BHの変異体は、開状態に止まり,閉状態への移行効率が低下するが,BHを完全に除去しても,Cas12a-crRNA-DNAの三者複合体のsemi-closed状態をとることが,明らかになった [Figure 6引用右図内の E 参照].