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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "High-throughput functional variant screens via in vivo production of single-stranded DNA" Schubert MG, Goodman DB [..] Church GM. Proc Natl Acad Sci U S A. 2021-05-04. https://doi.org/10.1073/pnas.2018181118
 Wyss InstituteとHarvard Medical Schoolの研究グループは今回バクテリアを対象として,変異が組み込まれた大量の配列のプールを形成し,次世代シーケンシング (NGS)を利用して多重な変異の機能を同時にスクリーニング可能とする手法を開発し,RLR (レトロン・ライブラリ・リコンビニアリング; Retron Library Recombineering)として発表した.
  • RLRは,天然または合成の変異DNAを組み込んだ数百万規模のレトロンのプール型ライブラリーを生成可能であり,ハイスループットの変異機能ゲノミクスを実現する [原論文 Figure 1 https://www.pnas.org/content/pnas/118/18/e2018181118/F1.large.jpg のDMD参照].
  • RLRは,組み換え効率が極めて低いというレトロン・リコンビアニングの課題を,細胞内在のDNAミスマッチ修復機構とエクソヌクレアーゼの不活性化を介して,それぞれ,入力とした変異の修復とssDNAの分解を抑制することで,劇的に解決し,宿主 (大腸菌)ゲノムへのレトロン配列組み込み効率〜90%を達成した.
  • RLRは,レトロン配列自体をバーコードとして利用可能なことから,プール型での多重変異の機能スクリーニングが実現した.
  • 実証実験において,既知の薬剤耐性遺伝子の同定,極めて似た変異が増殖に及ぼす差異の同定,超音波せん断した薬剤耐性大腸菌ゲノムの大量の断片を入力から薬剤耐性遺伝子の同定,を実現した.
[参考] レトロン [Nucleic Acids Res, 2019 https;//doi.org/10.1093/nar/gkz865 から引用した下図参照]
  • retronレトロンのmsr/msd領域(右図内 A 参照)が細胞内在機構で転写された後に,レトロンの逆転写酵素 (RT)によって逆転写され,マルチコピーのssDNAが生成される.このssDNAが細胞内在の一本鎖アニーリングタンパク質 (SSAP)によって,複製中のDNAにアニーリングすることで,変異配列が宿主ゲノムに組み込まれる.
  • レトロンによる細胞内ssDNAs大量生成の利用例;CRISPRメモ_2018/09/24 [第1項] CRISPEY:超並列精密ゲノム編集による機能ゲノミクス.https://crisp-bio.blog.jp/archives/12408819.html; Stanford Uの研究グループが,レトロンをベースとする"核内で相同組換え用ドナーとなるssDNAsを大量に生成するCRIPEY"を開発し,酵母の機能ゲノミクスでその有用性を実証した.
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