中国科学院脑科学与智能技术卓越创新中心 (CAS Center for Excellence in Brain Science and Intelligence Technology)の研究グループの成果
[出典] "Programmable RNA editing with compact CRISPR–Cas13 systems from uncultivated microbes" Xu C, Zhou Y, Xiao Q, He B, Geng G [..] Lai J, Yang H. Nat Methods. 2021-05-03. https://doi.org/10.1038/s41592-021-01124-4
 微生物に内在するCRISPR-Casシステムは,ウイルスとの競合型共進化を経て,多様化してきた.研究グループは今回,微生物メタゲノムのデータセット [*1]を解析し,高塩性環境に由来するメタゲノムから,既報のCas12a, Cas12b, Cas13cおよびCas13dよりコンパクトな [*2]CRISPR-Casリボヌクレアーゼのファミリー2種類を発見し,Cas13XとCas13Yと命名し,哺乳類細胞株 [*3]においてそのRNA分解とRNA塩基変換の活性を実証した.
[*1] Integrated Microbial Genomes and Microbiomes. https://img.jgi.doe.govをベースとして,NCBI NRやGenBankのファージ とプラスミド,IMG/VRデータベースを参照 
[*2]
LwaCas13a - 1,152aa; PspCas13b - 1,092 aa; FpCas13c - 1,110 aa; RfxCas13d - 967 aa; Cas13XとCas13Y - 775~803 aa.
 [*3] ヒト胎児腎細胞由来HEK293細胞株とイヌ腎臓尿細管上皮細胞由来MDCK細胞株
 
リボヌクレアーゼ活性の評価
  • HEK293細胞において,Cas13X.1とCas13Y.1ならびにCas13a/b/dによる一連のヒト遺伝子ノックダウン活性を評価し,その中でCas13X.1が効率と特異性が他に比べて高いことを同定した.
  • HEK293細胞において,Cas13X.1がSARS-CoV-2 (レムデシベルの標的であるRdRP(RNA依存性RNAポリメラーゼ)と病原性に関与するE (エンベロープ)タンパク質遺伝子)の感染を70%予防することを同定した.また,crRNAと標的RNAとの間のミスマッチ1塩基まで許容することも同定した.
  • MDCK細胞株において,インフルエンザRNAウイルスH1N1に対して,その核タンパク質を標的とするCas13X.1-crRNAの予防効果も確認した.
不活性化Cas13X.1 (dCas13X.1)を介したRNA塩基変換の評価
  • dCas13X.1に 高精度版アデノシン・デアミナーゼADAR2dd* (ADAR2dd E488Q/T375G)を組み合わせ,このA-to-I RNA塩基エディター (xABEと命名)の活性を蛍光レポータを組み込んだHEK293T細胞において確認した.
  • 次いで,in vivoに展開する観点からxABE (1,195 aa)の小型化を試みる中で,C末端側とN末端側をそれぞれ150-aaと180-aaカットしたdCas13X.1をベースとするmini xABE (mxABE; 865 aa)のRNA塩基変換を評価した.
  • HEk293T細胞において蛍光レポーターと7種類の遺伝子座に対するRNA塩基変換を,先行研究のdCas13b-ADAR2dd* (REPAIR, 1,388 aa)とCasRx-ADAR2dd* (1,375 aa) と比較し,DRを伴わないcrRNAと組み合わせた場合は,xABEとmxABEだけが有意なA-to-I変換を実現することを見出した.
  • さらに,全長および短縮型Cas13X.1にシチジンデアミナーゼへと改変したADAR2を組み合わせることで,C-to-U RNA塩基エディター (xCBEとxmCBE)を作出し,RESCUE-S (1,495 aa)よりも効率的なC-to-U変換を実現した.
  • mxABEとmxCBEは,xABEとxCBE,およびREPAIRに比べて,トランスクリプトーム
  • ワイド忠実度が高く,RNAオフターゲット編集が抑制されることも確認できた.
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