U British ColumbiaとU Pittsburgh Medical Schoolの研究グループからの構造解析論文
[出典] "Cryo-electron microscopy structures of the N501Y SARS-CoV-2 spike protein in complex with ACE2 and 2 potent neutralizing antibodies" Zhu X, Mannar D, Srivastava SS, BerezukI AM [..] Subramaniam S. PLoS Biology. 2021-04-29. https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3001237
スクリーンショット 2021-05-12 20.03.21 Titan Krios G4を利用したクライオ電顕単粒子再構成法で,N501Y変異を帯びたスパイク (S)タンパク質の細胞外ドメインとACE2受容体との複合体の構造 (EMD-23872; 7MJM)を2.81Å分解能で構成し,スパイクタンパク質のY501 (チロシン)が,ACE2受容体のチロシン (Y41)付近の結合界面のキャビティに入り込むことを見出した [Figure 1引用右図参照].
 この変化によって,RBDのチロシンとACE2のチロシンのベンゼン環の間の相互作用を介して,N501Y SのACE2への結合親和性が高まると考えられるが [上図 C 参照],一方で,変異による物理的な構造変化は比較的小規模であり,中和抗体が認識するS上の抗原決定基 (エピトープ)は,Sの受容体結合ドメイン (RBD)上に維持されていることから,N501Y変異が中和抗体の有効性に対する影響は小さいことが示唆される.スクリーンショット 2021-05-12 20.03.33
 この示唆は,新型コロナウイルスへの感染またはワクチン接種により誘導される代表的な中和抗体2種類 (IgG ab1とVHFc ab8)を対象とする物理化学的アッセイと,Sタンパク質の細胞外ドメインとの複合体のクライオ電顕構造から裏付けられた [Fig 5. 引用右参照].VH ab8の中和活性はY501の影響を受けず,Fab ab1の中和活性はやや減じるだけに留まったが,これは,右図のEとFにあるように,Sへの結合部位とY501の位置関係から説明可能である.

 [構造情報]
 EMD-23872/PDB-7MJG S(N501Y)
 EMD-23873/PDB-7MJH S(N501Y) + VH ab8
 EMD-23874/PDB-7MJI S(N501Y) + VH ab8 focused refinement
 EMD-23875/PDB-7MJJ S(N501Y) + Fab ab1 class 1
 EMD-23876/PDB-7MJK S(N501Y) + Fab ab1 class 2
 EMD-23877/PDB-7MJL S(N501Y) + Fab ab1 focused refinement
 EMD-23878/PDB-7MJM S(N501Y) + ACE2 [*]
 EMD-23879/PDB-7MJN S(N501Y) + ACE2 focused refinement
 [*] Cryo-EM structure of the SARS-CoV-2 N501Y mutant spike protein ectodomain

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