上海科技大学., 上海栄養・健康研究所, 武漢大学などの研究グループからの論文.
[出典] "Eliminating base-editor-induced genome-wide and transcriptome-wide off-target mutations" Wang L, Xue, W, Zhang H [..] Yang B, Yin H, Yang L, Chen J. Nat Cell Biol. 2021-05-10. https://doi.org/10.1038/s41556-021-00671-4
 BE3のオフターゲット活性については,全ゲノム解析 (WGS)によってin vivo においてゲノムワイドでオフターゲット (OT)変異を誘発することが報告され,続いて,BE3の構成要素であるラットAPOBEC1 (rA1)が,DNAのデオキシシチジンとRNAのシチジンの双方を標的可能なことから,転写物RNAにもOT変異を誘発することが示された.内在APOBECsが,ゲノムDNAの一本鎖領域に予期しないC-to-T変換を誘導することから,これらのOT変異誘発は,BE3の構成要素の中で,sgRNAやCas9ではなく,APOBECに起因するとされてきた.
  • 研究グループは始めに,一本鎖OT (OTss)サイトにおける変異を定量的に評価する手法co-expressing S. aureus and S. pyogenes Cas9 orthologs (CESSCO) を開発した.CESSCOでは,S. aureus nCas9 (nSaCas9)–Sa -sgRNAで誘導するR-ループ内のssDNAに,S. pyogenes nCas9とデアミナーゼからなるBE3がC-to-U変換を誘導するか否かを見ていくことで,Sp -sgRNAが存在しない条件でのBE3による変異誘発を判定する [Extended Data Fig. 1 参照 https://www.nature.com/articles/s41556-021-00671-4/figures/9].
  • このCRESSCOによって,ラットおよびヒト由来デアミナーゼが確かにsgRNAとは独立に変異を誘導することを証明した.
  • 次いで,2つのシチジンデアミナーゼ (CDA)ドメインを帯びたAPOBECs (ヒトのhA3BやマウスのmA3)には活性なCDAドメインと不活性であるが調節機能を帯びたCDAドメインが存在し,驚くべきことにその一部がデオキシシチジン・デアミナーゼに対する阻害(deoxycytidine deaminase inhibitor, dCDI)活性を示すことを発見した.
  • 研究グループはこのdCDIを利用してBE3を不活性な状態に維持しておき,BE3がsgRNAの標的サイト (オンターゲットサイト)に結合した場合にだけ,dCDIが分解してBE3内のCDAが活性へと"trasnform"するBE3 (tBE3と命名)を発想し.実現した [Extended Data Fig. 3: Versions of tBE and their performance in cells. のtBE-V5-mA3 参照 https://www.nature.com/articles/s41556-021-00671-4/figures/11].
  • tBEによって,sgRNA非依存性OTssサイトと,sgRNAの標的サイト (オンターゲット)と配列が類似しているOTサイト (sgRNA依存性OTサイト)の双方での変異を排除することに成功した.
  • tBEの活性をゲノムワイドとトランスクリプトームワイドで評価しところ,tBEによるOT変異誘発が検出限界以下であることを示した.
  • さらに,tBEをデュアルAAVシステムにてモデルマウスに投与することで,C-to-T変換を介した未成熟終始コドン誘発によるProprotein Convertase Subtilisin/Kexin Type 9 (PCSK9)の発現の阻害と,PCK9タンパク質と血清中の総コレステロールの低減を実証し,tBEの臨床応用の可能性を示した.
 [参考]