U. North Carolinaからの論文
[出典] "Marker-free quantification of repair pathway utilization at Cas9-induced double-strand breaks" Feng W [..] Ramsden DA, Gupta GP. Nucleic Acids Res. 2021-05-08. https://doi.org/10.1093/nar/gkab299
 DSBの修復経路として相同組換え (HR), 非相同末端結合 (NHEJ),および代替的末端結合 (alt-EJ)/マイクロホモロジー媒介末端結合 (MMEJ)が知られているが,後生動物と植物におけるalt-EJ/MMEJ修復はDNAポリメラーゼシータ (Pol θ, POLQ )の活性に帰せられることから,TMEJ (Theta mediated end joing)とも称する.
 DSBの修復におけるHR, NHEJおよびMMEJ/TMEJ各経路の寄与はこれまでDSBの修復結果を見ることで分析されてきた.一つには,蛍光タンパク質の発現や薬剤耐性遺伝子の阻害を利用するレポーター遺伝子を利用する手法と,もう一つには.DSBsにわたるアンプリコンの次世代シーケンシング (NGS)をin silico解析する手法が利用されてきたが,いずれも一長一短ある.
 著者らは今回,哺乳類細胞において,Cas9に誘導されたDSBのHR, NHEJおよびMMEJ/TMEJを介した修復結果の定量的プロファイリングを実現する2種類の相補的手法,ScarMapper [*1]とPathSig-dPCR [*2],を開発した.
 DSB repair 1  DSB repair 3
  • Pythonスクリプトで構築したScarMapperで,Cas9の標的部位を含むアンプリコンのNGSのデータからDSB修復パターンを自動解析し,その解析結果を利用して,各修復経路の産物に特化したドロップレットデジタルPCRであるPathSig-dPCRで修復結果を,標識することなく,定量可能とした.
  • ScarMapperは,挿入変異の検出,マイクロホモロジーの関与などを示す出力情報の観点から,CRISPResso2に優る.
  • ScarMapperとPathSig-dPCRにより,end resectionまたはDNA-PKの阻害が修復経路におよぼす影響と,Cas9が誘導するDSBに対するDNA修復の機序の分析が可能なことを示した.
さまざまな遺伝的・薬理的摂動が染色体DSBの修復経路に及ぼす影響を同定した.

[*] 比較対象となったCRISPResso2関連crisp_bio記事]