ワクチンを接種後に感染する事例は以前から報告されてきたが,今回,2021年6月に入ってからの3例をとりあげた.
1. 懸念される変異株 (VoC)のブレイクスルー感染率がファイザー/ビオンテック社のBNT162b2ワクチン接種者で上昇している
1. 懸念される変異株 (VoC)のブレイクスルー感染率がファイザー/ビオンテック社のBNT162b2ワクチン接種者で上昇している
[出典] "Evidence for increased breakthrough rates of SARS-CoV-2 variants of concern in BNT162b2-mRNA-vaccinated individuals" Kustin T, Harel N [..] Stern A. Nat Med. 2021-06-14. https://doi.org/10.1038/s41591-021-01413-7
ファイザー・ビオテンテックのBNT162b2 mRNAワクチンは新型コロナウイルス感染に対して臨床試験でも一般へ接種でも極めて高い有効性を示してきた.しかし,実験室での測定からワクチン接種者血清のアルファ株 (VoC B.1.1.7)とベータ株 (VoC B.1.351)に対する中和活性が低下するというデータが提示され,VoCがワクチンから免れる可能性が懸念されている.
- Tel Aviv UniversityのAdi SternとClalit Health ServicesのShay Ben-Shacharをリーダーとするイスラエルの研究グループは,BNT162b2 mRNAワクチン接種者の鼻咽頭スワブから採取したウイルスゲノム配列813件を解析し,VoC感染の偏りを見た.
- 1回目の接種の2週間後から2回目の接種から6日後までの間に陽性になったワクチン接種者の感染株はアルファ株に偏っていた [コントロールとケース149組みのデータから].
- 2回目の接種から少なくと7日後に陽性となったワクチン接種者の感染株ベータ株に偏っていた [コントロールとケース247組みのデータから].
- 本研究は,ワクチン接種からの特定の時間帯において2種類のVoCに対する有効性が低下することを,一般への接種においても示した.また,VoCの拡散を防ぐために,ウイルスの変異を厳密に追跡しつつワクチン接種を広げることが重要であることを示した.
2.カナダにおけるデルタ株の懸念事例
[出典] NEWS "Outbreaks of delta variant spark concern at Calgary hospital" CBC. 2021-06-12 17:31. https://www.cbc.ca/news/canada/calgary/foothills-delta-variant-outbreak-calgary-covid-1.6063802
カナダのカリガリー州Foothills Medical Centreにて,2つの病棟の入院患者16人と医療従事者 6人がデルタ株陽性判定となった.
- 患者のうち6人と医療従事者のうち5人はmRNAワクチンを2回接種し,患者 7人と医療従事者 1人は1回の接種であった.
- Alberta Health Servicesは,「ワクチンを接種してもCOVID-19に感染する可能性があることを忘れるな」としている.
- 一方で,今回の感染22例のうちICUでの治療を必要としたのは1例であったことから,アルバータ州広報担当者は「ワクチン接種が1回でも2回でも,重症化と入院を抑制する効果がある」としている.また,mRNAワクチンは,アルファ株に対しては1回/2回の接種で~73%/~91%の有効性,デルタ株に対して1回/2回の接種で~33%/~80%の有効性としている.
3. SARS-CoV-2変異株のワクチンブレイクスルー感染
[出典] "Vaccine Breakthrough Infections with SARS-CoV-2 Variants" Hacisuleyman E [..] Darnell RB. NEJM. 2021-06-10. https://doi.org/10.1056/NEJMoa2105000
ファイザー・ビオンテックのBNT162b2またはモデルナのmRNA-1273(Moderna社)ワクチンの2回目の接種を2週間以上前に受けた417人のコホートにおいて,ワクチンによるブレイクスルー感染を起こした女性2人を確認した:
- mRNA-1273ワクチンの2回目接種から19日後に感染確認 (変異 - D614G, E484K, T95I, del142-144): 有症・陽性判定から1週間ほどで回復した.
- BNT162b2ワクチンの2回目接種から36日後に感染確認 (変異 - D614G, S477N, T95I, del142-144): 有症・陽性判定から3日経過したころから回復に向かった.
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