光遺伝学的手法 (optogenetics): 光に応答するタンパク質を遺伝学的手法により細胞に導入し,その発現を光で操作する手法
[出典] "Partial recovery of visual function in a blind patient after optogenetic therapy" Sahel JA [..] Roska B. Nat Med. 2021-05-24. https://doi.org/10.1038/s41591-021-01351-4; NEWS "Injection of light-sensitive proteins restores blind man’s vision" Reardon S. Nature 2021-05-24. https://doi.org/10.1038/d41586-021-01421-0
 Sorbonne Université, Institute of Molecular and Clinical Ophthalmology Basel, University of Pittsburgh School of MedicineなどにGenSight Biologics [https://www.gensight-biologics.com]が加わった著者らは今回,網膜神経変性疾患と中枢神経系疾患を対象とする遺伝子治療法の開発と商業化を目指しているGenSight Biologicsが,全身合併症のない (non-syndromic)網膜色素変性を対象として進めているオープンラベル第1/2a相PIONEER試験 [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03326336]の成果を報告した.
  • PIONEER試験は,遺伝子治療"GS030-DP"と医療機器"GS030-MD"を複合した療法の試験である.
  • GS030-DPは,単細胞藻類Chlamydomonas noctigama 由来の赤色光駆動型チャネル光感受性チャネルロドプシン蛋白質"ChrimsonR (K176R)"をコードする遺伝子をアデノ随伴ウイルスベクター (AAV)に組み入れて患者の症状がより深刻な方の眼の硝子体内に単回注射する療法である.
  • GS030-MDは,ヒトの視覚の機構を再現したカメラを内蔵した光刺激ゴーグルであり,患者の視野に入る物体を光強度の変化として検出し,それに対応する光パルスをリアルタイムで網膜に投射する.
 この組み合わせによって,ChrimsonRが発現している網膜内の網膜神経節細胞が活性化され,患者が物体を認識することが可能になる.
  • GS030-DP/GS030-MDによって,40年間失明していた58歳の男性がさまざまな物体を知覚し,位置を確認し,数え,触ることができるようになった.
  • この患者は,ChrimsonR-AAV注射前にはゴーグルの有る無しにかかわらず視力を回復せず,ChrimsonR-AAV注射後でのゴーグルが無い場合は視力を回復しなかった.
  • 筆頭著者のSahel教授によると,患者は1日に数時間ゴーグルを装着し,ChrimsonR-AAV注射後2年間視力が向上してきた.また,昨年,他の6名の患者にAAVを注射し,COVID-19パンデミックのためゴーグルを使ったトレーニングが遅れているが,〜1年以内に結果が出ることを期待している,としている.