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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "UPF1 promotes the formation of R loops to stimulate DNA double-strand break repair" Ngo GHP, Grimstead JW, Baird DM. Nat Commun. 2021-06-22. https://doi.org/10.1038/s41467-021-24201-w
[注] Rループは、一本鎖RNAがDNAの一本鎖 (ssDNA)にアニーリングし、DNA-RNAハイブリッド (ヘテロ二本鎖)と,変位した非鋳型ssDNAとを含む3本鎖構造を形成する際に生じる; REVIEW "R-Loops as Cellular Regulators and Genomic Threats" Crossley MP, Bocek M, Cimprich KA. Mol Cell. 2019-02-07. https://doi.org/10.1016/j.molcel.2019.01.024
[背景]
 直鎖状の染色体の末端にあるテロメアは,末端がDNA二本鎖切断 (DSB)として認識されないようにDNAを保護している。しかし、体細胞では、テロメラーゼ活性の低下により、細胞分裂のたびにテロメアが徐々に短くなり、テロメアが機能不全に陥り、DNA損傷応答が活性化する。
 機能不全に陥ったテロメアは、リガーゼ4による古典的非相同末端結合 (C-NHEJ)や、リガーゼ3またはリガーゼ1による代替非相同末端結合 (A(lternative)-NHEJ)によって融合する。この融合接合部に広範な欠失が見られ、テロメアに隣接するDNAの何キロベースも及ぶことがある。欠失現象がマイクロホモロジーと関連していることから、テロメア融合にA-NHEJが関与している可能性が示唆されているが,広範な欠失を引き起こすメカニズムはまだ十分に解明されていない。
[成果]
UPF1  Cardiff Universityの研究グループは今回、RNA/DNAヘリカーゼであるUPF1がテロメア下のDNA二本鎖切断 (DSB)での欠失を強く促す遺伝子であることを同定した。また、DSBにおけるssDNAの鎖特異的検出とDNA-RNAハイブリッドの検出を併用することで、テロメリックDSBがDNA-RNAハイブリッドとRループの両方を誘発すること、UPF1がこれらの構造の形成を促進し、DSBのDNA切除と修復を刺激する重要な因子であることを発見し,その機構モデルを提唱した [Fig. 7引用右図参照]
[注] この研究の過程で,RPE1細胞において,CRISPR-Cas9(D10A)ニッカーゼとsgRNAペアによるUPF1とUPF3Bのノックアウト実験を行った.
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