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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Metagenomic compendium of 189,680 DNA viruses from the human gut microbiome" Nayfach S [..] Kyrpides NC. Nat Microbiol. 2021-06-24. https://doi.org/10.1038/s41564-021-00928-6
[データ提供サイト] https://portal.nersc.gov/MGV/
 バクテリオファージ (以下, ファージ)は,ヒト腸マイクロバイオームの生態に深く関与しているが,そのデータは乏しかった.そこで,Lawrence Berkeley National Laboratory/DOE Joint Genome Institute, University of Queensland, Stanford University, およびPolyBio Research Foundationの研究グループは今回,公共データベースから公開されている11,810件のヒト糞便メタゲノムデータから189,680件のファージゲノムを抽出し,"Metagenomic Gut Virus"カタログを作成した.
  • 配列のクラスタリングを経て,54,118種類のファージ候補を同定したが,そのうち92%は既存のファージ・データベースには含まれていない新規データであった.
  • さらに,腸ヴァイローム (ウイルス叢, virome)の機能性の手がかりとなるファージ・タンパク質のカタログも作成した.このカタログは,数万におよびエラープローンな逆転写酵素が含む459,375種類のファージ・タンパク質を網羅している.
 Metagenomic Gut Virusを利用してファージと宿主 (腸内のバクテリアとアーケア)の関係を探った.
腸マイクロバイオームのメタゲノムデータと分離株のゲノムデータに由来する宿主のゲノム286,997件 (4,644種類の微生物種をカバー)を網羅したUnified Human Gastrointestinal Genome (UHGG; https://www.ebi.ac.uk/metagenomics/genomes)データベースを利用して,ファージと宿主の関係性を分析した.
  • UHGGから1,846,441件のCRISPRスペーサーを同定し,それとほぼ一致する配列を今回同定したファージゲノムから探索したところ,ファージゲノムの81% (n=153,892)にほぼ一致する配列が見られた.一方で,4,644種の代表的ゲノムから抽出したスペーサーを照合した場合は,この比率が81&から21%へと低下し,同一種に得する細胞株間のCRISPRスペーサーの多様性が大きいことが示唆された.
  • 多くのファージがCRISPRシステムの標的にされていることが明らかになった一方で,CRISPRアレイを帯びているのはUHGG登録ゲノムのわずかに28% (n=79,734)にとどまり,特に,Alistipes putredinisBacteroides cellulosilyticus, Bifidobacterium breve といった種では1%未満となり,CRISPR適応免疫システムの分布に大きな偏りがあることが明らかになった.
  • CRISPRスペーサーをベースとした分析に加えて,189,680件のファージゲノムと286,997件の宿主ゲノムの間の全ゲノムのアラインメントをベースとする分析も行った.1 kb以上で96%以上の同一性を示した組み合わせを見たところ,ファージゲノムの90%と宿主ゲノムの96%が相互に関連付けられた.大部分のファージは,予想通り,腸マイクロバイオームの主たる2つの系統であるファーミキューテス (Firmicutes; 主としてクロストリジウム/Clostridia)とバクテロイデス (Bacteroidia)に紐づけられた.
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