(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/19)
微小管結合蛋白質タウ(tau)は、アルツハイマー症およびタウオパチーと呼ばれる前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia: FTD)において細胞質内凝集体を形成する. Karen E. Duffらコロンビア大学とハーバード大学の研究チームは今回、タウの凝集体がプロテアソームの活性を低下させること、続いて、プロテアソームを活性化させてタウの蓄積を減じることでタウ凝集体によるプロテアソーム活性抑制を軽減可能なことを示した.
- FTDの病因となるタウP301L変異体を発現するモデルマウスを使って、疾患早期タウ凝集の増加と相関して、脳内でプロテアソームの基質を多数含むユビキチン化タンパク質が漸進的に増加し、プロテアソーム活性自身が低下することを見出した. 研究チームは、タウオパチー・モデルマウスとプロテアソーム活性のトランスジェニック・レポーターを過剰発現するマウスと交配することによって、このプロテアソームの不全を、in vivo で直接観察した.
- モデルマウスの脳抽出物からは、タウとともにプロテアソームのコンポーネントが免疫共沈降し、この現象は老化と重症度と相関するように思われた.また、プロアソームは、タウの単量体ではなくオリゴマーによって阻害されることが示唆された.
- 26Sプロテアソームはプロテアーゼ活性を有する筒状の20Sプロテアソームの上下に蓋と底のような役割を果たす19S複合体が2つ結合した構造をしている.19Sサブユニットがユビキチン化されたタンパク質に結合し、そのATPアーゼがタンパク質を巻き戻して20Sサブユニットに送り込み、そこでタンパク質が分解される.この機序を、タウ変異体のオリゴマーは19Sサブユニットに結合することで阻害していた.
- サイクリックAMP依存性タンパク質リン酸化酵素(cAMP-dependent Protein Kinase: PKA)によるプロテアソームにリン酸化がタンパク質分解活性を高めるという知識のもとに、cAMPを加水分解するホスホジエステラーゼ-4(PDE4)の阻害薬であるロリプラム(Rolipram)を利用して、cAMPの細胞内濃度を上昇させ、PKAの活性上昇を促し、ひいては、プロテアソームの活性をあげてタウのクリアランスを向上させた.ロリプラムは、また、P301Lトランスジェニックマウスの疾患早期において、認知機能を改善したが、疾患が進行後は、プロテアソームの活性、タウのレベルおよび認知機能への効果を示さなかった.
- [注] タウを標的とする療法関連ブログ記事:イソプロテレノールが、毒性を持つ顆粒状タウオリゴマーの形成を阻害
コメント