crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] "Epigenetic silencing by SETDB1 suppresses tumour intrinsic immunogenicity" Griffin GK, Wu J, Iracheta-Vellve A [..] Bernstein BE. Nature 2021-05-05. https://doi.org/10.1038/s41586-021-03520-4

 腫瘍は,免疫抑制チェックポイントの過剰発現,抗原提示の不活性化,ネオアンチゲンの編集など,免疫システムに拠る検出を回避する多様な戦略を備えている.これに対して,PD-1経路やCTLA-4経路を標的として腫瘍の免疫逃避を阻害する免疫チェックポイント阻害療法(ICB)自体は著効を示したが,ICBはほとんどの患者に効果が無い.最近の研究では,癌細胞の免疫感受性に影響する細胞内在性のクロマチン制御因子が同定され,エピジェネティックな治療法がICBの有効性を広げる可能性が見えてきている.
 Broad Instituteを中心とする研究グループは,ICBに対する癌細胞の応答性を調節する因子群を同定することを目的として,マウス腫瘍モデルにおいて,936種類のクロマチン調節因子を標的とするin vivo CRISPR-Cas9機能喪失スクリーニングを行なった (すなわち,その欠損によって,免疫逃避が不可能になる遺伝子を探索した).
  • マウスメラノーマ由来B16細胞またはルイス肺がん由来LLC細胞,および,それぞれにGM-CSF遺伝子導入同種腫瘍ワクチン(GVAX)とPD-1阻害剤またはPD-1/CTLA-4阻害剤を投与した細胞を,野生型マウスに移植し,NGSマウスも対照群として加えて,スクリーニング結果を比較解析した.
  • その結果,トップヒットのH3K9メチル化酵素であるSETDB1をはじめとして,HUSHおよびKAP1複合体のメンバーを免疫逃避のメディエーターとして同定した.
  • ヒト癌遺伝子でータベース(TCGA)のデータを解析したところ,ヒトの腫瘍におけるSETDB1 (1q21.3)の増幅と,免疫排除腫瘍 (immune excluded tumor)および免疫チェックポイント阻害に対する抵抗性とが相関していた.
  • SETDB1は幅広い領域,主としてオープンゲノムコンパートメント,を抑制するが,これらのドメインには,ゲノム進化の中心的機構であるセグメントの重複に関連する転移因子 (transposable element, TE)や免疫クラスターが濃縮されている.SETDB1欠損によって,これらの領域に潜在するTE由来の制御要素,免疫刺激遺伝子,およびTEにコードされたレトロウイルス抗原が脱抑制 (derepress)され,生体内でTE特異的な細胞障害性T細胞応答が誘発される.
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット