2021-08-11 Houston Methodist Research Institute/Weill Cornell Medical CollegeのSonia Villapolを責任著者とする米国,メキシコおよびスエーデンの研究グループのScience Reports 誌掲載論文の書誌情報とアブストラクト訳および図を以下に追記した:
[出典] "More than 50 long-term effects of COVID-19: a systematic review and meta-analysis" Lopez-Leon S [..] Villapol S. Sci Rep. 2021-08-09. https://doi.org/10.1038/s41598-021-95565-8
 Houston Methodist Research Institute/Weill Cornell Medical CollegeのSonia Villapolを責任著者とする米国,メキシコおよびスエーデンの研究グループの報告
  • COVID-19は,回復と判断されたのちにも数週間から数か月継続する持続性の症状,後遺症,その他合併症を伴うことがある [いわゆるlong COVID].研究グループは今回,PRISMAガイドライン [*1]に則って,long COVIDを対象とする文献情報に基づいたシステマティックレビュー [*2]とメタ分析 [*3]を試みた.スクリーンショット 2021-08-11 17.41.23
  • はじめに,LitCOVID [*4]とEmbase [*5]を検索し,2021年1月1日以前に発表されたオリジナルデータを持つ、患者数100人以上の論文を特定した [Figure 1  引用右図参照]。
  • 2つ以上の研究で報告されたデータについては,MetaXLソフトウェア[*6]を用いてランダム効果モデルによるメタ分析を行った.なお,ここでは,long-COVIDを新型コロナウイルス感染後14日から110日と定義した.
  • long COVID論文18,251 件の中で基準を満たした15論文由来データともとに, 47,910人の患者 (17~87歳)を対象とする21件のメタ分析を行い,55件のlong COVIDの症状 (effects)を推定した [Table 2 参照].
  • 感染患者の80%が,1種類以上の長期にわたる症状を発症したと推定した.スクリーンショット 2021-08-11 17.41.37
  • 最も多かった5種類の症状は,疲労 (58%),頭痛 (44%),注意力障害 (27%),脱毛 (25%),呼吸困難(24%)であった [Figure 2 引用右図参照]。
  • long COVIDに対処するために設計した患者全体を視野に入れた予防策,リハビリテーション技術,および,臨床管理戦略を開発するためには,複数分野の協働が必要である.
 [* 参考資料]
  1. PRISMA (Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses)とは:英文Webサイト http://www.prisma-statement.org; 関連用語和文解説サイト http://jspt.japanpt.or.jp/ebpt_glossary/prisma.html; システマティックレビューおよびメタ分析の質向上のために定められた27項目のチェックリストおよび4段階のフローチャートが設定されている.
  2. システマティックレビュー:ランダム化比較試験(RCT)などの質の高い複数の臨床研究を,複数の専門家や研究者が作成者となって,一定の基準と一定の方法に基づいてとりまとめた総説.http://jspt.japanpt.or.jp/ebpt_glossary/systematic-review.html
  3. メタ分析:統計的手法を用いてランダム化比較試験(RCT)など複数の原著論文のデータを定量的に結合させる総説論文.http://jspt.japanpt.or.jp/ebpt_glossary/meta-analysis.html
  4.  LitCOVID: 米国NCBI/NIHが品質管理している新型コロナウイルスに関する最新学出文献を集約したデータベース (Webサイト https://www.ncbi.nlm.nih.gov/research/coronavirus/; 文献 "LitCovid: an open database of COVID-19 literature" Chen Q, Allot A, Lu Z. Nucleic Acids Res. 2021-01-08. https://doi.org/10.1093/nar/gkaa952)
  5. Embase: 生物医学,薬学分野の文献データベース https://www.elsevier.com/ja-jp/solutions/embase-biomedical-research; 化学情報協会 STN 医学・薬学情報検索. https://www.jaici.or.jp/stn/pdf/text_iyaku.pdf(MEDLINEとEMBASEの概要と利用法を解説)
  6. MetaXL: 自然言語処理の世界で開発されたメタ分析用 https://ai-scholar.tech/articles/natural-language-processing/MetaXL
2021-07-30 University of Southampton公衆衛生分野の准教授Dr Nisreen A Alwan博士によるCOVIDー19後遺症の展望記事へのリンクを追加: "The road to addressing Long Covid" Science. 2021-07-30. https://doi.org/10.1126/science.abg7113
 著者は,COVID-19のリスクが,主に死亡者数と病院の収容人数でのみ伝えられており,回復と生存が混同されていると切り出し,症状のあるCOVID-19患者の約3人に1人は,発症から12週間経っても症状が残り,long Covidは,急性の重症患者だけでなく軽症患者にも発生し,また,すべての年齢層が経験する可能性があること,症状は広範囲で多系統にわたっており,時期によって変動しまた再発すること,そして,long Covidについては、まだ多くのことが不明である,とした.
 さらに,long Covidが,医療関係者ではなく,TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを利用して患者が定義した歴史上初めての病気であると続け,long covidについてこれまでに得られた知見を紹介した上で,COVID-19のパンデミックに対する公衆衛生上の対応の一つとして,SARS-CoV-2感染がもたらす長期的影響に適切に対処する必要があり,それには4つのRが必要とした: 報告 (Reporting); 認識 (Recognition)とリハビリテーション(Rehabilitation); 研究 (Research) [挿入図"Meeting the need of Long Covid" https://science.sciencemag.org/content/sci/373/6554/491/F1.large.jpg 参照 ]
[crisp_bio注] 2021年2月には米国NIHが,long-COVIDの原因特定と予防・治療法の発見に11億5,000万ドルを投じると発表していたが,英国政府も7月18日に,4,500人を超えるlong-COVID患者をベースとして,治療法の開発を目的とする研究を2,000万ポンド近い予算を投じて研究を進めると発表した [https://www.gov.uk/government/news/new-research-into-treatment-and-diagnosis-of-long-covid]
2021-07-23 初稿
[出典] "COVID-19 long haulers" Schmidt C. Nat Biotechnol. 2021-07-13. https://doi.org/10.1038/s41587-021-00984-7
[注] A. NalbandianらはSARS-CoV-2陽性になった時点から4週間をacute COVID-19,5週間から後をpost-acute COVID-19とし,COVID-19の症状が持続すること,そしてまたは,発症から4週間を超えた遅発性または長期にわたる合併症をlong-COVIDと定義した ["Post-acute COVID-19 syndrome" Nalbandian A et al. Nat Med, 2021 https://doi.org/10.1038/s41591-021-01283-z; Fig. 1参照 https://www.nature.com/articles/s41591-021-01283-z/figures/1].
 このところ,SARS-CoV-2陽性になってから4週間を経過した後に見られるCOVID-19後遺症が注目を集めている.2021年2月には米国NIHが,long-COVIDの原因特定と予防・治療法の発見に11億5,000万ドルを投じると発表した.有望な治療法が無く,新たな市場があることから,既存薬のリパーパシングやリポジショニングの試験が徐々に始められている.しかし,long-COVIDは未だ謎に満ちており,統一された診断基準や症状の分類などが存在せず,long-COVIDのための医薬品開発は,通常よりもさらに暗中模索の状態である.
 記事はlong-COVIDが確かに存在することを示す互いに独立な複数の事例をとりあげたのち,症状として,体位性頻脈症候群(Postural orthostatic tachycardia syndrome, POTS),脳の霧 (Brain fog)の異常,炎症の持続,および,自己抗体の生成について比較的詳しく紹介し,続いて,マウントサイナイ,ジョンズホプキンス,NIH国立神経疾患・脳卒中研究所 (NINDS)で進行中のそれぞれ800人,25,000人,および50人のCOCID-19患者の追跡調査を紹介した.
 long-COVIDの治療法開発に対する投資は.需要があることが明確であるが,long-COVIDの発症機序ひいては明確な標的が不明なため未だ低調である.臨床現場では対症療法が行われるにとどまっている.
  記事は,臨床試験が進められている承認薬と開発中の実験薬7例を表1[https://www.nature.com/articles/s41587-021-00984-7/tables/1]にまとめそれぞれについて概要を紹介した.
 [long-COVID関連crisp_bio記事]