[注] ロングCOVID: long COVID; post COVID syndrome; post-acute sequelae of SARS CoV-2
infection; Post-Acute Sequelae of COVID-19 (PASC); 新型コロナウイルス罹患後症状
2023-01-25 [本稿はcrisp_bio COVID-19感染状況を見て思うこと (24)の2023-01-25の投稿からの一部コピー ] NHK特設サイト 新型コロナウイルに「新型コロナ 感染後の子どもに相次ぐ『MIS-C』とは」という特集記事が24日17:13に掲載された。MIS-C (読みはミスシー)はMultisystem Inflamamatory Syあndrome in Chilrren:小児多系統炎症性症候群)を意味し、新型コロナウイルス感染初見に続発するショックや心筋炎を呈して、複数臓器の障害を起こす重症な病態 [日本内科学会通知2021年3月12日] とされている。
 米国では2022年11月末までにMIS-C診断児童が9,000人余りで、74人が死亡とされていた。日本では、NHKの記事によれば、これまでに64人がMIS-Cと診断され、重症化したケースはなかったが多くが入院加療を受けていた。しかし、MIS-Cの診断は、未だ原因不明の川崎病と症状が重なることもあり、日本では、オミクロン株の流行以降、子供の感染が急増する中で、診断に混乱が広がっているとのことである。NHKの記事は「新型コロナ感染から
数週間後に、原因不明の発熱やおう吐、目の痛みなどを訴えた場合、MIS-Cを疑い、専門の医療機関を受診することが必要です」と結ばれている。
 
2023-01-16 [レビュー] ロングCOVID:主要な発見と機構および提言
[出典] REVIEW "Long COVID: major findings, mechanisms and recommendations" Davis HE, McCorkell L, Vogel JM, Topol EJ. Nat Rev Microbiol. 2023-01-13. https://doi.org/10.1038/s41579-022-00846-2 [著者所属] Patient-Led Research Collaborative, Scripps Research Translational Institute
 ロングCOVIDは、SARS-CoV-2感染後にしばしば生じる重篤な症状からなる多臓器疾患である。発症率は、非入院症例の10〜30%、入院症例の50〜70%、ワクチン接種症例の10〜12%と推定されている。また、ロングCOVIDは、すべての年齢と急性期疾患の重症度に関連しており、36歳から50歳までの診断の割合が最も高く、ロングCOVID症例のほとんどは、軽度の急性疾患を持つ非入院患者であり、この集団がCOVID-19全体の症例の大半を占めている。全体として感染者の10%という控えめな推定発生率と、世界中で6億5100万人以上のCOVID-19の記録された症例に基づいて、世界中で少なくとも6500万人がCOVIDに長く感染していると見られている。
 これまでに生物医学的研究により、様々な病態生理学的変化や危険因子の特定、疾患の特徴づけが大幅に進展し、さらに、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)や起立性頻脈症候群などの他のウイルス性疾患との類似性が、この分野の研究の基礎となっている。しかし、まだまだ多くの研究課題があり、特に病態生理、有効な治療法、危険因子に関連する未解決の問題が存在している。今後の研究では、ロングCOVIDの研究を強化するために、偏りやSARS-CoV-2検査の問題を考慮し、ウイルス感染発症の研究を基に、社会的に疎外された人々を取り込み、研究プロセスへの患者の有意な関与を実現していく必要がある。
 [構成]
 はじめに
 図1:長期のCOVIDの症状と、病態の異なる多くの臓器への影響
 図2:SARS-CoV-2感染、COVID-19およびロングCOVIDは、いくつかの病態のリスクを高める。
 図3: ロングCOVIDの発症メカニズムの仮説。
 Box 1 小児におけるlong COVID
 主な研究成果
 免疫学およびウイルス学
 血管障害と臓器障害
 神経系、認知系
 ME/CFS、自律神経失調症およびその関連疾患
 生殖器系
 呼吸器系
 消化器系
 タイムライン(症状の発現と時間経過)
 診断ツールおよび治療法
 表1 治療法候補とその根拠のまとめ
 ワクチン、亜種、再感染の影響
 課題と提言
 検査・診断の問題点
 誤解 (COVID-19は呼吸器系疾患である; 入院を必要としない中等症はロングCOVIDと無縁)
 ウイルス感染後の知識の欠如と誤った情報の蔓延
 推奨事項 
 研究
 医療従事者および研究者の訓練と教育
 広報キャンペーン
 政策と資金調達
 結論
 
2022-12-13 COVID-19ワクチン接種後およびSARS-Cov-2感染後の体位性頻脈症候群のリスク
2022-11-08 飲み薬PaxlovidはCOVID後遺症のリスクを低減する
[注] Paxlovid (国内ではパキロビッド)
[出典] "Nirmatrelvir and the Risk of Post-Acute Sequelae of COVID-19" Xie Y, Choi T, Al-Aly Z. medRxiv 2022-11-05 [プレプリント]. https://doi.org/10.1101/2022.11.03.22281783
 ファイザー社製のPaxlovidは、新開発の抗ウイルス薬ニルマトルビルと既存薬リトナビルを組み合わせた錠剤として供され、5日間に渡って服用し、COVID19症状発症の 5 日以内に開始した場合に最適であり、重症化 (入院)と死亡のリスクを低減するとされていた。
 今回、米国退役軍人省の医療データベースを用いて、2022年3月01日から2022年6月30日の間にSARS-CoV-2陽性反応があり、陽性反応当日に入院しておらず、COVID-19重症化へのリスク因子が少なくとも1つあり、SARS-CoV-2診断後30日間に生存した医療システム利用者を対象として、Paxlovidの効用を評価した結果がmedRxiv に投稿された。
  • 陽性反応後5日以内にニルマトルビルの経口投与を受けた者(9,217人)と、SARS-CoV-2感染急性期にCOVID-19抗ウイルス剤または抗体治療を受けなかった者(対照群、47,123人)が対象であった。平均年齢は65歳で、高齢、糖尿病、喫煙などCOVID19重症化のリスク因子を少なくとも1つ帯びていた。
  • PaxlovidはCOVID19急性期以後の入院のリスクを30%、死亡のリスク48%低減した。
  • Paxlovidは12種類の後遺症のうち10種類 [*]のリスクを26%低減した [* 心血管系(不整脈、虚血性心疾患)、凝固・血液系障害(深部静脈血栓症、肺塞栓症)、疲労、肝臓疾患、急性腎疾患、筋肉痛、神経認知障害および息切れ;咳と新規糖尿病診断のリスクとの関連は見られなかった]
  • PaxlovidによるCOVID19後遺症のリスク低減効果は、ワクチン未接種者、ワクチン接種者、ブースト接種者、およびCovid-19初感染または再感染の如何に関わらず、示された。
 COVID19後遺症に対しては、COVID19感染初期5日間のPaxlovid投与の効果がある、という所見が得られた。
[注] Paxlovid投与については他の薬剤との相互作用の副作用について注意が喚起されている。その成分のリトナビルがCYP3Aにおける薬物代謝を阻害して薬剤の血中濃度を保つ作用を担っていることから、カルシウム拮抗剤・スタチンCYP3Aなどに代謝される薬剤の血中濃度をそれらの薬剤の設計以上まで上昇させるリスクがある。このため、使用禁止、同時使用禁止など、投与に注意が必要な薬剤の情報が諸機関[**]から提供されている [** COVID-19 Drug Interactions (University of Liverpool) https://www.covid19-druginteractions.org/checker]
 
2022-10-16 COVID-19後遺症の割合
[出典] "Estimated Global Proportions of Individuals With Persistent Fatigue, Cognitive, and Respiratory Symptom Clusters Following Symptomatic COVID-19 in 2020 and 2021" Global Burden of Disease Long COVID Collaborators. JAMA 2022-10-10. https://doi.org/10.1001/jama.2022.18931
[目的]
 世界的に、2020 年と 2021 年に症候性SARS-CoV-2感染者の中で、初感染から 3 ヵ月後に一般的なロング COVID 症状を経験した人の割合を把握する。
[結果]
 この観察研究 (observational study)は、症候性SARS-CoV-2感染者120万人のデータを蓄積した54件の研究と2つの医療記録データベースとベイジアン・メタ回帰によって、行なった。COVID-19発症前の健康状態を調整した結果、症候性SARS-CoV-2感染から3カ月後に自己報告による3種類のロングCOVID症状のうち少なくとも1つを有する割合は6.2%、その中で継続する呼吸器系症状は3.7%、身体的痛みや気分変動を伴う持続疲労は3.2%、認知障害は2.2%であった。
 
2022-10-05 [レビュー] COVID-19はどのようにメンタルヘルスを左右したのか、するのか?
[出典] Review "How COVID-19 shaped mental health: from infection to pandemic effects" Penninx BWJH, Benros ME, Klein RS, Vinkers CH. Nat Med 2022-10-03. https://doi.org/10.1038/s41591-022-02028-2 [著者所属] Vrije Universiteit Amsterdam, Amsterdam Public Health, Copenhagen University Hospital, University of Copenhagen, Washington University School of Medicine
 新型コロナウイルス感染症2019(COVID-19)のパンデミックは、ストレスを引き起こすような社会の大混乱を介して間接的に、またSARS-CoV-2感染後の神経精神医学的後遺症により直接的に、世界のメンタルヘルスを脅かしている。著者らは今回、COVID-19がメンタルヘルスに及ぼす間接的および直接的影響の評価を試みた。
 COVID-19パンデミックがメンタルヘルスに及ぼす影響をテーマとする論文は35,000件を超えている。しかし、その多くはサンプルサイズが小さいこと、サンプリングの条件が便宜的であること、COVID-19以前の比較対象がない事などの理由から、一般化に足るエビデンスを得ることが難しい。より信頼できる結論は、パンデミック前との比較を含む縦断的または時系列的な設計の下で行われた研究から得られる。著者らは、WHOによる系統的な文献検索で最近明らかになった、パンデミック前のデータを含む縦断的研究のメタアナリシスからの知見を中心に、解析を進めた。
 第一に、COVID-19のパンデミックが人々のメンタルヘルスにどのような影響を与えたかについて、メンタルヘルスの症状報告、精神障害の有病率、自殺率などを通して、経験的知見を集約した。第二に、SARS-CoV-2ウイルス感染とCOVID-19疾患のメンタルヘルス後遺症(例えば、認知障害、疲労、感情症状)について説明する。これについては、急性期が過ぎた後の神経精神医学的な影響としてPACS (post-acute COVID syndrome)の観点で、脳の構造と機能に対する基礎的な神経生物学的影響についても述べた。最後に、得られた教訓と、さらに取り組むべき知識のギャップについて考察した。
  • 自己申告によるメンタルヘルスの問題はわずかな増加にとどまっており、これまでのところ集団レベルでの精神障害、自傷行為、自殺率の客観的な増加に至っていない。このことは、人々に回復力と適応力があることを示唆していると思われるが、調査対象の亜集団の間でかなり変動し、また、経過時間への依存も存在する可能性がある。
  • COVID-19の直接的影響については、急性および急性後の神経精神学的後遺症の存在が明らかになっていた。すなわち、感染から数カ月後でも、疲労、認知障害、不安や抑うつ症状の高い有病率が認められている。
  • しかし、COVID-19が長期的にどのようにメンタルヘルスを左右し続けるを理解するために、(神経)生物学的レベル、個人レベル、社会レベルでのきめ細かい、よく管理された長期的データが、依然として、必要とされている。
  • COVID-19の身体的健康 (physical health)への影響については多くの注意が払われているが、メンタルヘルスへの影響への関心は極めて低い。
  • COVID-19以後のパンデミックにおいて、政策立案者と臨床医には、その当初からメンタルへルスに優先的に注目することで、神経精神学的疾患リスクのある人々を特定・保護し、長期にわたり回復力を促してくことが求められる。
[注] Fig. 2  に、SARS-CoV-2が神経炎症をもたらす可能性がある機構のモデル図が用意されている。

2022-10-02 コロナ後遺症の相談件数急増 - 8月に3,000件越え, 大阪府のデータ
[出典] 第7波の流行後にコロナ後遺症の相談事例が急増 - コロナ後遺症について現時点でわかっていること.忽那賢志.YAHOO!ニュース 2022-10-02 11:05.https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221002-00317739
  • コロナ後遺症の発生原因として諸説あるが現時点では不明である:ウイルスの持続感染, ウイルスによる組織障害, 自己免疫反応, ヒト常在マイクロバイオームの多様性低下, 集中治療後症候群(post intensive care syndrome, PICS)
  • 後遺症に有効な治療法が無いことから、ワクチンによる予防が重要である。
  • コロナ後遺症の頻度は海外のデータでは5〜8人に一人、国内の調査では11人に一人である。また、オミクロン株感染によるコロナ後遺症の頻度は、デルタ株感染後の半分以下であったが、オミクロン株の感染者数の爆発により、コロン後遺症の患者数の激増をもたらした。ここでも感染予防の重要性が示唆された。
  • コロナ後遺症は比較的、高齢者、女性、重症からの回復者、に多い。
2022-09-28 COVID-19診断後49週目までの血液疾患発症のリスクについて (英国のデータ)
COVID-19と主幹動脈血栓症および静脈血栓症との関連性
イングランドおよびウェールズの成人4800万人を対象とした集団規模のコホート研究
[出典] "Association of COVID-19 With Major Arterial and Venous Thrombotic Diseases: A Population-Wide Cohort Study of 48 Million Adults in England and Wales" Knight R, Walker V, Ip S [..] Whiteley WN, Wood AM, Sterne JAC; CVD-COVID-UK/COVID-IMPACT Consortium and the Longitudinal Health and Wellbeing COVID-19 National Core Study. Circulation 2022-09-19. https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.122.060785
 英国の研究グループが、2020年1月1日から12月7日まで,全住民を対象とした匿名化されたイングランドおよびウェールズの電子カルテをベースに,COVID-19と診断された後の動脈血栓症および静脈血栓塞栓症(Venous thromboembolism; VTE)の発生率を、COVID-19と診断されなかった集団 (以下、対照群)の発生率と比較し、調整ハザード比を推定し、COVID-19の重症度、人口統計学的特性、既往歴によるサブグループ解析を行った。その結果は、COVID-19ワクチン接種、COVID-19感染症から退院後の早期検査、危険因子のコントロール,高リスク患者への予防薬の使用などにより,COVID-19の重症化を予防する戦略が必要なことを示唆した。
  • 成人4,800万人のうち,COVID-19診断から28日以内に入院したのは125,985人,入院しなかったのは1,319,789人であった。
  • イングランドでは、4,160万人・年の追跡期間中に260,279件の初回動脈血栓症と59 421件の初回VTEが発生した。
  • COVID-19診断後の初回動脈血栓症の調整済みハザード比は、対照群と比較して、COVID-19診断後1週目の21.7(95%CI、21.0〜22.4)から27〜49週目の1.34(95%CI、1.21〜1.48)へと低下した。
  • COVID-19診断後の初回VTEの調整済みハザード比は、1週目の33.2(95%CI、31.3-35.2)から27〜49週目の1.80(95%CI、1.50-2.17)へと低下した。
  • したがって、COVID-19診断直後の血管疾患の相対的発生率は,VTEよりも動脈血栓のほうがより早く低下するが、いずれについても、COVID-19診断後49週までは発生率が高いままであった。
  • 調整後のハザード比は、診断後の期間が長いほど、COVID-19診断後に入院した人ほど、白人よりも非白人ほど、および、既往症がある人ほど高くなった。
  • COVID-19診断から49週間後の全人口における動脈血栓症およびVTEのリスクの増加は、それぞれ0.5%と0.25%と推定され、これは140万人のCOVID-19診断後の動脈血栓症とVTE患者それぞれ7200人と3500人に相当する。
2022-09-23 COVID-19の長期間にわたる神経学的転帰について (米国のデータ)
[出典] "Long-term neurologic outcomes of COVID-19" Xu E, Xie Y, Al-Aly Z. Nat Med 2022-09-22. https://doi.org/10.1038/s41591-022-02001-z [著者所属] VA St. Louis Health Care System, Veterans Research and Education Foundation of St. Louis, Saint Louis University, Washington University School of Medicine, 
 2月にNature Medicine 誌に、米国退役軍人省の全国医療データベースを基にCOVID-19後遺症における心血管系疾患の分析結果を発表した研究チームが [本記事 2022-03-09の項参照]、規模がやや大きくなった同じデータベースを基に、COVID-19感染者に長期的な神経障害のリスクが高いことをNature Medicine 誌から発表した。
 上記データベースを用いて、COVID-19患者154,068人と2種類の対照群 (コンテンポラリーコホート5,638,795人と、2017年のヒストリー・コホート5,859,621人)を対象として、統計的にコホートのバランスをとった上で、SARS-CoV-2感染後12カ月時点での神経系障害の発生リスクと負荷を推計した。
 その結果、COVID-19の急性期以降では、虚血性・出血性脳卒中、認知・記憶障害、末梢神経系障害、発作性障害、錐体外路症状・運動障害、精神障害、筋骨格系障害、感覚障害、ギランバレー症候群、脳炎・脳症などの一連の神経学的後遺症を引き起こすリスクが上昇していた。
 12ヵ月後におけるあらゆる神経学的後遺症のハザード比は1.42(95%信頼区間1.38, 1.47)、負荷は1000人あたり70.69(95%信頼区間63.54, 78.01)と推定された。
 COVID-19の急性期に入院を必要としなかった人においても、リスクと負担は増加していた。
 本解析の限界は、コホートのほとんどが白人男性であったことである。
 
2022-09-08 ロングCOVID研究イニシアチブ/Long Covid Research Initiative 
[出典] "Scientists seek $100mn to research long Covid" Cookson C. FINANCIAL TIMES 2022-09-08. https://www.ft.com/content/5d25e42e-b59d-41a4-a69c-214d5872efe6
 研究者はLong Covid Research Initiative (以下、LCRI)においてロングCOVIDに関する疑問に答えるために、1億ドルの資金調達を目指しており、慈善団体からの寄付が集まり始めている。
 LCRIの最優先課題は、ロングCOVID患者が、SARS-Co-V2ウイルスを体内に保持し続けているのかどうかを明らかにすることである。ペンシルバニア大学免疫学研究所のジョン・ウェリー所長は、「腸、神経系、呼吸器などの組織に残存している証拠が増えつつあるが、ウイルスが保持されている部位 (reservoirs)については不明である」とし、ウェールズのランダウ大学病院呼吸器内科コンサルタントであるヘレン・デイヴィスは、「ウイルスのゲノムRNAが残存していることが証明されているが、生存可能なウイルスが残存しているかどうかは不明である」と述べた。
 COVID感染者のうち、ロングCOVIDを発症する人の割合として、現時点で最も良い推定値と見られている10%とすると、ロングCOVIDの患者は世界中で6000万人に及ぶ。また、英国国家統計局は、人口の2%がロングCOVIDと報告している。
 LCRIのネットワークに参加している研究者たちは、毎週密接にコミュニケーションをとっており、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のティモシー・ヘンリック准教授は研究資金とは別に、「普段は共同研究することのない、ロングCOVID研究の最先端にいる研究者が、アイデアやサンプルを共有する環境が整ったことが大きい」としている。
 
2022-09-05 厚生労働省のマニュアル新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 別冊 罹患後症状のマネジメントの項を改訂 (本記事内 2022-04-30/2022-09-05 の項参照)

2022-09-01
ロングCOVID-19は世界の医療制度に重い課題を課す - 疫学的余震
[出典] "The growing evidence that Covid-19 is leaving people sicker - The potential impact on heart and brain disease poses challenges to healthcare systems globally" Neville S. Financial Times 2022-08-30. https://www.ft.com/content/26e0731f-15c4-4f5a-b2dc-fd8591a02aec
 英国では禁煙が広がり始めた1980年代から呼吸器疾患が大きく減少していった。一方で、COVID-19のパンデミックの中で、英国の国民保健サービス (NHS)のデータによると、40-64歳の年齢層での心臓発作例が2019年に対して2021年は15%増となった。また、米国の退役軍人15万人以上のデータによると、COVID-19の重症ではなかったCOVID-19患者の少なくとも1年経過後の心血管疾患のリスク上昇や、COVID-19患者の糖尿病のリスク上昇が、示唆されている。UKバイオバンクのデータからは、COVID-19回復者 (51歳~81歳)400人に脳の萎縮が見られた [*] "SARS-CoV-2 is associated with changes in brain structure in UK Biobank" Douaud, G., Lee, S., Alfaro-Almagro F et al. Nature 2022-03-07.https://doi.org/10.1038/s41586-022-04569-5]
 ロングCOVID-19のエビデンスが蓄積されてくる一方で、複数年にわたるCOVID-19パンデミックに対応してきた医療従事者が燃え尽き、診療の最前線から撤退し、医療資源は縮小しつつある。
 これから、すでに広がっている高齢化社会を、ロングCOVIDそしてまたはCOVD-19に誘発される他の疾患が広がる疫学的余震が襲う。そこで、COVID-19パンデミックの間に学んだ知見を活かして、将来に備えることが望ましい:
  • 感染症のアウトカムと糖尿病や肥満といった慢性疾患のリスクとを総合的に扱っていく必要がある。
  • 公衆衛生 (public health)と健康管理 (healthcare)の垣根を取り払う必要がある。
  • 医療を患者の日常生活に近づける必要もある (この2年間で遠隔診断が広がったことから、医療側は、患者を日常生活のコンテクストで理解することが可能になったきた)。
  • COVID-19対応に迫られて広がってきたチーム医療を受けて、それぞれの専門の科の間の相互理解を深め、より良いチーム医療を目指す必要がある。
 COVID-19パンデミック以前から世界で医師640万人と看護師310万人が不足しているとされてきた。限られた医療資源を効率的に活用するために、より精密なリスク評価に基づく患者の層別化が必要である。また、自己診断などに対する患者の理解度を高める努力も必要である。
 
2022-08-31 "米国ではロングCOVIDが原因の離職者が400万人に及ぶ"
[出典] "New data shows long Covid is keeping as many as 4 million people out of work" Bach K. BROOKINGS Report 2022-08-24. https://www.brookings.edu/research/new-data-shows-long-covid-is-keeping-as-many-as-4-million-people-out-of-work/;National Center for Health StatisticsのHousehold Pulse Survey などの報告 [*]とCOVID-19に関わった医師へのインタビューをベースとする記事 [*] Long COVID - Household Pulse Survey. National Center for Health Statistics. CDC 2022-08-17. https://www.cdc.gov/nchs/covid19/pulse/long-covid.htm
 米国の生産年齢 (working-age; 18-65歳) のロングCOVID患者はおよそ1,630万人存在する。そのうち2~400万人がロングCOVIDが原因で離職し、賃金として年間約1,700億ドル (最大2,300ドル)を失い、この状況がまだまだ拡大していくと思われる。このロングCOVIDに伴う経済損失を低減する施策が少なくとも5種類ある:
  • 予防と治療方法の改善
  • 有給病気休暇の拡大
  • 職場環境の改善
  • 就業不能所得補償保険 (disability insurance) へのアクセス拡大
  • ロングCOVIDの経済的影響に関するデータ収集
 [crisp_bio] 予防、有給休暇、データ整備など、いずれも日本は得手ではない施策のように思う。
 
2022-08-27 "18~30歳の健常男性における感染急性期から回復後のロングCOVIDの状況"
[出典] "Persistence, prevalence, and polymorphism of sequelae after COVID-19 in unvaccinated, young adults of the Swiss Armed Forces: a longitudinal, cohort study (LoCoMo)" Devel JW, Larva E, Lovey T et al. Lancet Infect Dis 2022-08-25. https://doi.org/10.1016/S1473-3099(22)00449-2; スイス陸軍を対象とする縦断的コホート研究 (Long COVID in Military Organisations (LoCoMo))NCT0492249からの報告
 2020年3月1日から2020年12月31日の間に兵役中にRT-PCR検査が陽性または陰性を示した18~30歳の男性隊員を対象に、対照群 (RT-PCR検査陰性)、無症状感染者群、非・最近 (PCR検査陽性から180日を超えた)患者群 (平均340日)、最近 (PCR検査陽性から180日以下)患者群の4群について比較解析した。
 その結果、SARS-CoV-2感染までは健康であった若年者 (年齢中央値21歳)は、SARS-CoV-2感染からほぼ回復するが、180日経過後に高いBMI (ボディ・マス・インデックス)、脂質異常症、および低い身体的持久力を示し、代謝障害および心血管合併症の可能性を発症するリスクが高いことが示唆された。
 
2022-08-22 "我々はロングCOVIDを理解し始めつつある" (Eric J Topol)
[参考] OPINION "Op-Ed: We're starting to understand long COVID. Next we can fight it" Eric J Topol. Los Angeles Times 2022-08-21 3 AM PT. https://www.latimes.com/opinion/story/2022-08-21/long-covid-treatment-research
 Topolの記事によると、「ロングCOVIDの発症率は5%から40%と見られていたが、これまでで最も信頼性が高いオランダの研究チームが2022年8月6日にLancet から発表した論文では、COVID-19に感染した8人に1人がロングCOVIDを発症している」。この割合を2022年8月21日までの日本の感染者数 (陽性者数)16,921,653人に当てはめると、日本では、211万人余りがロングCOVIDを発症しているか、そのリスクを帯びていることになる。
 Lancet 報告は、76,422人の母集団について、2020年3月31日から2021年8月2日の期間 (アルファ株 [B.1.1.7]の時期)において、陽性判定後90-150日、23種類の身体症状をベースに判定したロングCOVIDに基づいている。したがって、ワクチン完全接種とブースター接種や、アルファ株以後の変異株がロングCOVIDのリスクに与える作用については、新たな集団についての解析が必要になる。
 英国政府機関からの報告によると、ロングCOVIDの変異株 (デルタ、オミクロン BA.1、およびオミクロン BA.2)依存性に、ワクチン3回接種者の場合は差が無いが、2回接種者の場合は、デルタ株のリスクが高い。
 Topolは、「SARS-CoV-2の感染によって重症化のリスクが高いのは高齢者や基礎疾患を帯びている感染者が多いとされているが、ロングCOVID患者の大半は、若く (30-50歳)、以前は健康であった人々である」と述べているが、記事内では出典が示されていない。先の段落で引用した英国報告では、「相対的に見て、35-69歳の年齢層でロングCOVIDが広がっている」とされている。
 ロングCOVIDについては、本ブログ記事でも引用したように200種類以上の症状が挙げられており、それぞれの判定基準も、主要な症状 (core symptom)についても、まだ標準化されていないようであり、また、より長期の後遺症のデータも無いが、SARS-CoC-2への感染が、日常生活を送るのを難しくするような後遺症のリスクを伴うことは間違いないようだ。
 
2022-08-19 ロングCOVIDを解く鍵
[出典] 
 Science 誌のスタッフライターであるJennifer Cousin-Frankelは、イタリア、スイス、オーストラリアからの投稿や論文をベースに6月の記事で、微小な血栓、急性期から回復後も残存するSARS-CoV-2、および、疲弊した免疫細胞を、ロングCOVIDを解く鍵として取り上げたが、8月の記事で4つめの鍵として、新たな投稿や論文をベースに「コルチゾールが低レベルであること」を加えた。
  • イタリアの小児感染症医Danilo Buonsensoは、重いロングCOVIDの症状を示す11人の児童の肺をシンチグラフィーとCTを一体化したSPECT-CTでスキャンし、6人の肺の一方にほとんど血流が見られないことを発見した。その原因として「目に見えないほど小さい血栓」が想定されることから、5人には、モニタリングを注意深く続けながら、抗凝固剤を処方した。一部は、従来通りの学校生活が送れるまでに回復しSPECT-CTからの画像もほぼ正常に戻ったが、ロングCOVIDから回復しない児童もいた。これらの事例に続いて、2年前に感染し入院するに至らなかったが数ヶ月後から疲労、歩行時の息切れ、発熱の継続、関節の痛みなどに悩まされていた34歳の大学院生もこの事例に加わった。
  • Medical University of InnsbruckのHerbert Tilgによると、数ヶ月前に感染した46人のうち、何らかのロングCOVIDの症状を示していた21人の腸の内視鏡を介した組織検査からウイルスRNA (一部はウイルスタンパク質も)を発見したが、ロングCOVIDの症状を呈していなかった集団からは発見されなかった。
  • University of New South WalesのChansavath Phetsouphanhらは、感染後少なくとも3ヶ月を経過しロングCOVIDの症状を呈している患者の血液検査から、自然免疫細胞が高度に活性化され、ナイーブT細胞やB細胞を欠き、I型IFN(IFN-β)とIII型IFN(IFN-λ1)の発現が上昇し、感染後8カ月経っても持続的に高いままであることを発見した。
  • Institute for Systems Biology (Seattle)とFred Hutchinson Cancer Research Centerなどの研究チームやYale Universityの岩崎明子とIcahn School of Medicine at Mount SinaiのDavid Putrinoの研究チームが、炎症やグルコース、睡眠サイクルなどの制御に関わるストレスホルモンであるコルチゾールのレベルが低いことを発見した。なお、後者では、ウイルスとの戦いが継続していることを示唆するT細胞の疲弊も報告されている。
2022-08-18 新型コロナウイルス感染者の神経疾患リスクと精神疾患リスクの経過 - 128万人を超えるCOVID-19患者と対照群を対象とする2年間の後ろ向きコホート研究の結果 -
[出典] "Neurological and psychiatric risk trajectories after SARS-CoV-2 infection: an analysis of 2-year retrospective cohort studies including 1,284,437 patients" Taquet M [..] Harrison PJ. Lancet Psychiatry 2022-08-17. https://doi.org/10.1016/S2215-0366(22)00260-7 [著者所属] University of Oxford, University of Cambridge
 8,900万人の患者の医療記録データを蓄積してきたTriNetXから、米国を主として、オーストラリア、英国、スペイン、ブルガリア、インド、マレーシア、および台湾における2020年1月20日から2022年4月13日の間のCOVID-19患者のデータを抽出し、同時期の他の呼吸器感染症の患者群 (対照群)のデータと、比較解析した。
  • COVID-19患者における気分障害および不安障害の発生率の増加は一過性であり,他の呼吸器感染症と比較してこれらの診断の全体的な過剰は認められなかった。
  • 一方で、精神病性障害、認知障害、認知症、てんかんや発作のリスクの増加は終始持続した。
  • 神経学的リスクと精神医学的リスクの経過が異なることから、これらの結果には異なる病因があることが示唆される。
  • 小児は成人や高齢者に比べて精神医学的リスクは全体としてより穏やかであるが、精神医学診断項目のいくつかで高いリスクが持続することは懸念すべきことである。
  • デルタ変異株とオミクロン変異株の間で、神経学的および精神医学的リスクの経過は同様であった。これは、デルタ株とオミクロン株に比べてそれほど深刻ではないとされている変異体でも、後遺症は同レベルになることを示唆する。
  • crisp_bio注スクリーンショット 2022-08-17 19.44.08京都の新型コロナウイルス感染症重症者患者受入医療機関13病院の院長と京都府医師会会長が連名で発表した項目からなる「災害レベルに達した新型コロナ第7波について ―重症患者受け入れ医療機関からのお願い [右図に引用した京都大学病院ホームページ参照]の「新型コロナウイルスは単なる風邪ではありません」の項目の中で「また感染時の症状は軽症でも、その後様々な後遺症で苦しんでおられる方もおられ、それが若い方に多いことが報告 されています。」と記さている。
2022-08-18 記事タイトルを「Long-COVID (ロングCOVID; COVID-19後遺症)」から「新型コロナウイルスの後遺症 (ロングCOVID; long COVID; post COVID syndrome)」へ改訂
 
2022-08-11 Long-COVIDの療法を世界は待ち続けている
[出典] NEWS FEATURE "Long-COVID treatments: why the world is still waiting - After a slow start, researchers are beginning to test ways to combat the lasting symptoms of the disease-" Ledford H (Senior Reporter).  Nature 2022-08-9 (online). https://doi.org/10.1038/d41586-022-02140-wNature Vol 608: 11 August 2022でのタイトルは"The long-COVID wait for a long-covid therapy"
 記事は,2年間にわたり呼吸器,血液,泌尿器,皮膚などの専門医に通い続けいているlong-COVID患者Bhasha Mewarのエピソードを引用しながら,SARS-CoV-2感染の急性期が過ぎてから数ヶ月または数年続くlong-COVIDの多様な症状に対するモグラ叩き対症療法が数百万人に対して続いている,と始められている.
 現在少なくとも26件のランダム化臨床試験 [*]が進められている.そのほとんどが,明確な結論を出すには小規模すぎるか,対照群を欠いているが,研究者はlong-COVIDの根底を成す病態を絞り込みつつありり,来年には,免疫系,血栓,コロナウイルス自体の断片をターゲットにした薬剤の主要な臨床試験が行われるかもしれない. [*] 記事では,進行中の臨床試験の概要をまとめた図が引用されている
 
Long-COVIDの複雑な症状

 Long-COVIDをもたらす機構について多くの仮説が提唱され,その中のいくつかは有力視されているが,確定に至っておらず,ひいては,治療法も確定されていない:
  • SARS-CoV-2やその断片が長期にわたり免疫系を刺激して,問題を起こし続ける.
  • SARS-CoV-2感染によって,患者自身のタンパク質を誤って攻撃する抗体が生成され,初感染から長い年月が経過した後にもヒト組織が損傷される.
  • SARS-CoV-2感染によって,ヒト組織への酸素の流れを阻害する微小な血栓がlong-COVIDを引き起こす.
  • SARS-CoV-2感染によって健康な腸内マイクロバイオームが長期にわたって破壊されることがlong-COVIDをもたらす.
 こうした仮説に基づいて,抗ウイルス剤,免疫抑制剤,抗凝固剤などによるlong-COVIDの療法と,仮説が相互に排他的ではないことからその併用療法が考えられるが,その有効性は実証されていない.

 Long-COVIDに多重な原因があり複雑な症状がもたらさることは,臨床試験自体を難しくする.あるグループには有望な治療法が,適合しないグループに投与された臨床試験では無効と判定される可能性がある.一方で,臨床試験の参加者の層別化の目安となる標準的な症状リストが整ってない.また,long-COVIDの症状として200種類以上挙げられてきたが,重い倦怠感やブレインフォグ (脳の霧)のように客観的な判定が難しく,また,症状の程度の変動が激しい.こうしたlong-COVIDの複雑さゆえに,急性期のCOVID19に対しては臨床試験からデキサメタゾンが死亡率を3分の1にまで抑制できるといった明確な結論を導き出すことができたが,long-COVIDの場合はそうした明快に結論を得ることが困難である.

 記事はこの後,”A trickle of trials”と題するセクションと最終セクションである”Patchwork treatment”の一部で,様々なクリニックで試みられている療法を紹介しているが,そうした治療法を受けても重症化した例や,侵襲的で副作用のリスクを伴う可能性を指摘し,long-COVIDの治療法評価を目的とする無作為化比較試験の必要性を示唆している.

 なお,最終セクション前の”Future hopes”と題するセクションでは,米国NIHが,11.5億ドルの予算規模でlong-COVIDの治療法または予防法の臨床試験の募集を始めたこと,英国がSTIMULATE-ICP (Symptoms, Trajectory, Inequalities and Management: Understanding Long-COVID to Address and Transform Existing Integrated Care Pathways)に着手したこと,を紹介している.

2022-08-06 8月3日の投稿で後遺症の観点から「心臓肥大や肺における血栓のリスク」を論じたNature 誌掲載記事を紹介したが,千葉大学/千葉大学病院を主とする研究グループが,COVID-19患者に見られる血栓に含まれるタンパク質Myl9 (ミルナイン)が,COVID-19の重症化の指標として有用なことを7月に学術誌に発表していた.
[出典] “Elevated Myl9 reflects the Myl9-containing microthrombi in SARS-CoV-2- induced lung exudative vasculitis and predicts COVID-19 severity” 岩村千秋, 平原 潔 [..] 中山俊憲. Proc Natl Acad Sci U.S.A 2022-07-22. https://doi.org/10.1073/pnas.2203437119 ;千葉大学ニュースリリース「新型コロナウイルス感染症の重症化メカニズムを解明 - 新たな重症化予測マーカーの同定 -」2022-08-01 https://www.ho.chiba-u.ac.jp/hosp/item/newsrelease_20220802.pdf
 著者らは,COVID-19患者の致命的症状の肺において,SARS-CoV-2が肺の血管に集積し,血小板を活性化する因子 (トロンボスポンジン-1)を特異的に産生する非正規な単球が出現し,ミオシン軽鎖9 (Myl9/ミルナイン) [*]を含む微小血栓を伴う滲出性血管炎が発症していることを見出した.
 さらに,SARS-CoV-2による血小板の活性化が血中のMyl9レベルの上昇を引き起こし,それが臨床的重症度と密接に相関していることを突き止めた.
 血中Myl9を他のマーカーと共にを測定することで,COVID-19の重症化をより正確に診断することが可能になり,また,血中Myl9をlong-COVIDの診断に応用することも可能と考えられる.
[*] "ミオシン軽鎖9/12" 木村元子, 中山俊憲.アレルギー 2018:67(6); 785-786. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/67/6/67_785/_pdf

2022-08-03 新型コロナウイルスには,若かろうと年老いていようと,無症状であろうとなかろうと,とにかく感染しないことが一番
[出典] NEWS FEATURE "Heart disease after COVID: what the data say" Saima May Sidik (科学ジャーナリスト). Nature 2022-08-02. https://doi.org/10.1038/d41586-022-02074-3
 複数の研究が,新型コロナウイルス感染が治まってから何ヶ月経っても,心臓発作や脳卒中などの循環器系疾患のリスクは高いままであることが示唆してきたが,その発生頻度や発症機構が突き止め始められている.

 記事の導入部は,心臓専門医のStuart Katzの新型コロナウイルスへの感染から後遺症が治るまでの数ヶ月のエピソードに続き,Katz自身の"これで後遺症から完全に解放されたのだろうか?"という言葉で締めくくられ,その後,いくつかの報告を引用しながら,話が進められている.
 新型コロナウイルス感染から少なくとも30日間生き延びた米国退役軍人150,000人と,コントロール・グループ (非感染者のグループおよびCOVID-19パンデミック以前のグループ)とを比較した結果「65歳未満でリスク因子 (基礎疾患や喫煙の習慣など)の有る無しに関わらず,また,軽症 (mild case)から完治したと見られていても,一年後の循環器系疾患のリスクが目に見えて高まる」ることが報告されている [Nature NEWS 2022-02-10 https://doi.org/10.1038/d41586-022-00403-0].新型コロナウイルス感染でICUでの治療を必要としたグループについては,心臓肥大や肺における血栓のリスクが,非感染者グループの20倍に達した.また,新型コロナウイルスで入院に至らなかった軽症のグループでも,心不全のリスクが8%,肺の炎症のリスクが247%上昇していた.
 また,新型コロナウイルスが,糖尿病,回復不能な肺の損傷,あるいは脳の損傷を伴うという報告に触れ,これらの後遺症とともに循環器疾患は,長期間に渡り,生活の質 (quality of life)を損なうとし,また,対症療法はあるが完治には至らない,とした.
 ただし,米国退役軍人のデータは母集団の背景に偏りや,感染グループとコントロール・グループの間の背景の差異に問題が残っており,多様な背景の集団を対象とする研究が必要とする指摘もあるが,米国退役軍人のデータに基づく報告と同様な報告が他にもある.
 英国の国民保健サービス (NHS)病院らの47,780人のデータに基づく報告では「COVID-19で入院したグループの入院から8ヶ月以内に循環器障害を発症するリスク [BMJ 2021-03-31 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8010267/]は,非感染者の3倍」とされ,米国における2万人規模のデータに基づく報告では「感染後4ヶ月以内にうっ血性心不全を発症するリスクは,非感染者の2.5倍」[BMJ 2021-05-19 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8132065/]とされている.
 また,論文未発表ではあるが,米国においてCOVID-19によって上乗せされた脳卒中/心不全が2020年は12,000/44,000人であったところ,2021年には18,000/66,000人へと上昇したという試算が紹介されている.なお,COVID-19パンデミックに伴う循環器障害の増加には,SARS -CoV-2感染からの間接的影響 (医療を受ける機会減少,孤立化に伴うストレスや非活動的な日常など)もある.
 一方で,現時点では小規模であるが,COVID-19入院者と,入院していたが非感染者との間で,循環器障害のリスクに差はないという報告 [Heart 2021-10-06 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8503921/]も紹介されている.
 このようにまだ不確定なところがあるが,American College of Cardiologyが招聘した専門家パネルは,「老齢または免疫不全といったリスク因子を帯びているCOVID-19回復者については,循環器の検査が必要」とした.
 循環器障害を含む多様なlong-COVID (COVID-19後遺症)について,米国では,米国全土の200機関が参加して,これから4年間にわたり,60,000人を追跡するRECOVER (Researching COVID to Enhance Recovery) プロジェクトが始まっている.同様に,英国ではPHOSP-COVID (Post-hospitalization COVID-19) プロジェクトが始まっており,「COVID-19入院経験者の中で,1年後の時点で完全に回復したと感じているのは4分の1にとどまる」という報告 を出している [Lancet  Respir Med 2022-04-23 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9034855/]
 新型コロナウイルスはなぜ,呼吸器系だけでなく心臓にも影響するのか?心臓の細胞にもSARS-CoV-2の受容体ACE2が発現しているからである.ACE2を介したウイルスの侵入によって損傷された細胞を修復する過程で血栓が生じるが,500,000人の感染者のデータに基づいて「感染から2週間以内に血栓が形成されるリスクが非感染者の1.67倍になる」とする報告が出ている [eClinialMedicine (2021-07-31) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8324974/].また,イエール大学の岩崎教授らは,入院患者からCOVID-19初期 (acute phase)に,ウイルスではなく血管などのヒト組織を標的とする大量の抗体を発見している [Nature 2021-05-19 https://doi.org/10.1038/s41586-021-03631-y].こうした,感染初期の問題が,循環器障害を含むCOVD-19後遺症に関与すると考えられる.
 ワクチン接種,再感染,およびオミクロン亜系統が,循環器に及ぼす影響については,「ワクチン接種によってCOVID-19後遺症のリスクが低減されるリスクをゼロにするには至らない」という報告 [Nat Med 2022-05-25 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9307472/]が出てはいるが,データ蓄積を含めて,これからの研究課題である.
 
2022-04-30/2022-09-05 厚労省は,4月28日2022年6月17日に新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 別冊 罹患後症状のマネジメント 第1版新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 別冊 罹患後症状のマネジメント 第1.1版を公開した.第1版の冒頭には,「罹患後症状についてはいまだ明らかになっていないことも多い.そのため,心不全や脳炎などの他の疾患による症状を見逃さないように,罹患後症状は除外診断であることに留意することが重要である」「少なくとも2ヶ月以上持続し,また,他の疾患による症状として説明がつかないもの」などと,記されていた.
[第1版の構成]
 1 罹患後症状(代表的な罹患後症状や罹患後症状の頻度・持続期間が分析されている)
 2 罹患後症状を訴える患者へのアプローチ
 3 呼吸器症状へのアプローチ
 4 循環器症状へのアプローチ
 5 臭覚・味覚症状へのアプローチ
 6 神経症状へのアプローチ
 7 精神症状へのアプローチ
 8 "痛み"へのアプローチ
 9 皮膚症状へのアプローチ
 10 小児へのアプローチ
 11 罹患後症状に対するリハビリテーション
 12 罹患後症状と産業医学的アプローチ
[第1.1版 改訂のポイント]
 <第1章> 日本等における12ヶ月目の症状の頻度に関する調査結果を追加
 <第3章> 日本における12ヶ月目の呼吸器系の所見に関する研究結果を追加
 <第4章> 日本における3ヶ月後の心臓MRI検査に関する研究結果を追記
[crisp_bio 注] 第1版のPDFはリンク切れになっており、また、厚労省のWebサイトには更新をメールで通知する機能が準備されていないので、今後の更新を確認するために、厚労省のWebサイトを随時チェックする必要がありそうだ。 

2022-03-09 COVID-19感染の急性期から回復した153,760人に見られた後遺症 - 心血管系疾患
[出典] "Long-term cardiovascular outcomes of COVID-19" Xie Y, Xu E, Bowe B, Al-Aly Z. Nat Med 2022-02-07. https://doi.org/10.1038/s41591-022-01689-3; "For some patients, cardiovascular problems persist long after COVID" Stone W. NPR 2022-03-05 06:00 https://www.npr.org/sections/health-shots/2022/03/05/1084413347/for-some-patients-cardiovascular-problems-persist-long-after-covid
 VA St. Louis Health Care System所属の研究チームが,米国退役軍人省の全国医療データベースに基づく解析の結果,COVID-19患者は対照群に比べて,心臓発作を起こす可能性が約63%高く,脳卒中を起こす可能性が52%高いとした.
  • COVID-19感染米国退役軍人153,760人のコホート(ケース・コホート)と,退役軍人保健局 (US Veterans Health Administration, VHA) 利用者の中でSARS-CoV-2感染の記録がない米国退役軍人5,637,647人からなるコホート (コンテンポラリー・コホート)および2017年の間にVHAを利用した米国退役軍人 (SARS-CoV-2非感染者) 5,859,411人 (ヒストリー・コホート)を,縦断的に追跡し,心血管疾患のリスクと12ヶ月間の負荷を,感染者の重症度 (非入院,入院,ICUでの治療)に応じて,推定した.
  • COVID-19と診断された後の12カ月間で,深刻な心血管系疾患の発生率が,感染していない人と比べて4%高いことが明らかになった.4%という数字自体は小さいと見えるが,世界中のSARS-CoV-2感染者総数は2022年3月8日時点で4.48億近い (日本〜542万人)ことから,心血管系疾患の後遺症の問題は,パンデミックが終息した後も残る課題である.
  • 2022-03-09 8.35.44COVID-19感染者は,感染後30日以降,脳血管障害,不整脈,虚血性および非虚血性心疾患,心膜炎,心筋炎,心不全,血栓塞栓症など,いくつかのカテゴリーにわたる心血管疾患の発症リスクが増加していた [Fig. 3引用挿入図参照].
  • これらのリスクは,非入院 (COVID-19の急性期に入院しなかった人)にも有り,急性期の重症度に応じて段階的に増加した.COVID-19からの回復者は軽症か重症かを問わずに,心血管疾患のリスクに留意していく必要がある.
2022-01-25 COVID-19の神経系への影響.
2021-10-22 crisp_bioの過去記事へのリンクを再度追加: 2021-06-14 COVID-19後遺症 ( 'long COVID')に課題あり - 日本の備えは? https://crisp-bio.blog.jp/archives/26633542.html
2021-10-21 
報道によると [*] 厚労省がコロナ後遺症”診療の手引きを作成し,今月中にもホームページで公表する予定とのことである.これによって,COVID-19後遺症の診断ができる医師がようやく全国で増えていく事だろう[* テレ朝news 2021-10-21 11:56].厚労省がこれまで随時更新してきた「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」の第5.3版 (2021年8月30日発行)では,第2章の「臨床像」の1節を「症状の遷延(いわゆる後遺症)   」に割いていたが,後遺症の症状や期間について半ページほどの記述であった. 
2021-10-10 国立国際医療研究センター (National Center for Global Health and Medicine Hospital),日本人の新型コロナ後遺症に関する調査結果を発表medRxiv に投稿し [1], 忽那賢志医師 (現, 阪大)が、Yahoo!ニュースにて解説 [2]:
  1. "Risk factors associated with development and persistence of long COVID" Miyazato Y, Tsuzuki S, Morioka S et al. medRxiv. 2021-09-23 [プレプリント]. 
  2. "新型コロナ後遺症 4人に1人が半年後も何らかの症状、女性、重症が後遺症リスク 日本人457人の調査" 忽那賢志(感染症専門医). Yahoo!ニュース. 2021-10-10 11:28: 急性期の症状は半年後までにはほとんどの人で消失する; 記憶力低下・集中力低下は長期間持続しやすい; 半年後も4人に1人が何らかの症状が続いている; 女性, 重症者は後遺症がみられやすい; (ワクチン接種は後遺症のリスクも低減する)
2021-09-27 18:22 crisp_bio記事"新型コロナウイルス感染症の後遺症 (ロングCOVID)の謎 - 研究者が考えている4つの仮説"へのリンクを追加: https://crisp-bio.blog.jp/archives/27523380.html
2021-09-27 18:06 米国NIH,ロングCOVID研究を開始 
[出典] "Study of up to 40,000 people will probe mysteries of Long Covid" Kaiser J. S (Science 誌記者). Science. 2021-09-15. 18:45/ Updated 2021-09-23 15:15. https://doi.org/10.1126/science.acx9130 
 Researching COVID to Enhance Recovery (RECOVER) イニシアティブの一環が,ニューヨーク大学 (NYU)のLangone Health (LH)にて始まる.
 NYU LHは,最大4万人のボランティアを募集し,35の機関から100人以上の研究者を集め,共通のプロトコルを用いて研究を進める.ボランティアには,ロングCOVID患者も含まれるが,約60%を急性感染症と想定し,COVID-19の重症者と軽症者,およびCOVID-19発症前にワクチン接種していた人も含まれる.また,ボランティアの約半数が新生児を含む小児であることを期待している.
 こうして,短期間で回復する人と長期間症状が続く人を比較することで,リスク因子や,短期と長期を分ける可能性のある分子過程を探索し,然るべき分子標的をブロックする薬剤を発見または開発する.
 NIHは、1年半以内に分子標的を特定し,2020年12月に議会が承認した4年間で11.5億ドルのロングCOVID研究費の残りで,治験を開始したいと考えている.
2021-08-11 Houston Methodist Research Institute/Weill Cornell Medical CollegeのSonia Villapolを責任著者とする米国,メキシコおよびスエーデンの研究グループのScience Reports 誌掲載論文の書誌情報とアブストラクト訳および図を以下に追記した:
[出典] "More than 50 long-term effects of COVID-19: a systematic review and meta-analysis" Lopez-Leon S [..] Villapol S. Sci Rep. 2021-08-09. https://doi.org/10.1038/s41598-021-95565-8
 Houston Methodist Research Institute/Weill Cornell Medical CollegeのSonia Villapolを責任著者とする米国,メキシコおよびスエーデンの研究グループの報告
  • COVID-19は,回復と判断されたのちにも数週間から数か月継続する持続性の症状,後遺症,その他合併症を伴うことがある [いわゆるlong COVID].研究グループは今回,PRISMAガイドライン [*1]に則って,long COVIDを対象とする文献情報に基づいたシステマティックレビュー [*2]とメタ分析 [*3]を試みた.スクリーンショット 2021-08-11 17.41.23
  • はじめに,LitCOVID [*4]とEmbase [*5]を検索し,2021年1月1日以前に発表されたオリジナルデータを持つ、患者数100人以上の論文を特定した [Figure 1  引用右図参照]。
  • 2つ以上の研究で報告されたデータについては,MetaXLソフトウェア[*6]を用いてランダム効果モデルによるメタ分析を行った.なお,ここでは,long-COVIDを新型コロナウイルス感染後14日から110日と定義した.
  • long COVID論文18,251 件の中で基準を満たした15論文由来データともとに, 47,910人の患者 (17~87歳)を対象とする21件のメタ分析を行い,55件のlong COVIDの症状 (effects)を推定した [Table 2 参照].
  • 感染患者の80%が,1種類以上の長期にわたる症状を発症したと推定した.スクリーンショット 2021-08-11 17.41.37
  • 最も多かった5種類の症状は,疲労 (58%),頭痛 (44%),注意力障害 (27%),脱毛 (25%),呼吸困難(24%)であった [Figure 2 引用右図参照]。
  • long COVIDに対処するために設計した患者全体を視野に入れた予防策,リハビリテーション技術,および,臨床管理戦略を開発するためには,複数分野の協働が必要である.
 [* 参考資料]
  1. PRISMA (Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses)とは:英文Webサイト http://www.prisma-statement.org; 関連用語和文解説サイト http://jspt.japanpt.or.jp/ebpt_glossary/prisma.html; システマティックレビューおよびメタ分析の質向上のために定められた27項目のチェックリストおよび4段階のフローチャートが設定されている.
  2. システマティックレビュー:ランダム化比較試験(RCT)などの質の高い複数の臨床研究を,複数の専門家や研究者が作成者となって,一定の基準と一定の方法に基づいてとりまとめた総説.http://jspt.japanpt.or.jp/ebpt_glossary/systematic-review.html
  3. メタ分析:統計的手法を用いてランダム化比較試験(RCT)など複数の原著論文のデータを定量的に結合させる総説論文.http://jspt.japanpt.or.jp/ebpt_glossary/meta-analysis.html
  4.  LitCOVID: 米国NCBI/NIHが品質管理している新型コロナウイルスに関する最新学出文献を集約したデータベース (Webサイト https://www.ncbi.nlm.nih.gov/research/coronavirus/; 文献 "LitCovid: an open database of COVID-19 literature" Chen Q, Allot A, Lu Z. Nucleic Acids Res. 2021-01-08. https://doi.org/10.1093/nar/gkaa952)
  5. Embase: 生物医学,薬学分野の文献データベース https://www.elsevier.com/ja-jp/solutions/embase-biomedical-research; 化学情報協会 STN 医学・薬学情報検索. https://www.jaici.or.jp/stn/pdf/text_iyaku.pdf(MEDLINEとEMBASEの概要と利用法を解説)
  6. MetaXL: 自然言語処理の世界で開発されたメタ分析用 https://ai-scholar.tech/articles/natural-language-processing/MetaXL
2021-07-30 University of Southampton公衆衛生分野の准教授Dr Nisreen A Alwan博士によるCOVIDー19後遺症の展望記事へのリンクを追加: "The road to addressing Long Covid" Science. 2021-07-30. https://doi.org/10.1126/science.abg7113
 著者は,COVID-19のリスクが,主に死亡者数と病院の収容人数でのみ伝えられており,回復と生存が混同されていると切り出し,症状のあるCOVID-19患者の約3人に1人は,発症から12週間経っても症状が残り,long Covidは,急性の重症患者だけでなく軽症患者にも発生し,また,すべての年齢層が経験する可能性があること,症状は広範囲で多系統にわたっており,時期によって変動しまた再発すること,そして,long Covidについては、まだ多くのことが不明である,とした.
 さらに,long Covidが,医療関係者ではなく,TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを利用して患者が定義した歴史上初めての病気であると続け,long covidについてこれまでに得られた知見を紹介した上で,COVID-19のパンデミックに対する公衆衛生上の対応の一つとして,SARS-CoV-2感染がもたらす長期的影響に適切に対処する必要があり,それには4つのRが必要とした: 報告 (Reporting); 認識 (Recognition)とリハビリテーション(Rehabilitation); 研究 (Research) [挿入図"Meeting the need of Long Covid" https://science.sciencemag.org/content/sci/373/6554/491/F1.large.jpg 参照 ]
[crisp_bio注] 2021年2月には米国NIHが,long-COVIDの原因特定と予防・治療法の発見に11億5,000万ドルを投じると発表していたが,英国政府も7月18日に,4,500人を超えるlong-COVID患者をベースとして,治療法の開発を目的とする研究を2,000万ポンド近い予算を投じて研究を進めると発表した [https://www.gov.uk/government/news/new-research-into-treatment-and-diagnosis-of-long-covid]
2021-07-23 初稿
[出典] "COVID-19 long haulers" Schmidt C. Nat Biotechnol. 2021-07-13. https://doi.org/10.1038/s41587-021-00984-7
[注] A. NalbandianらはSARS-CoV-2陽性になった時点から4週間をacute COVID-19,5週間から後をpost-acute COVID-19とし,COVID-19の症状が持続すること,そしてまたは,発症から4週間を超えた遅発性または長期にわたる合併症をlong-COVIDと定義した ["Post-acute COVID-19 syndrome" Nalbandian A et al. Nat Med, 2021 https://doi.org/10.1038/s41591-021-01283-z; Fig. 1参照 https://www.nature.com/articles/s41591-021-01283-z/figures/1].
 このところ,SARS-CoV-2陽性になってから4週間を経過した後に見られるCOVID-19後遺症が注目を集めている.2021年2月には米国NIHが,long-COVIDの原因特定と予防・治療法の発見に11億5,000万ドルを投じると発表した.有望な治療法が無く,新たな市場があることから,既存薬のリパーパシングやリポジショニングの試験が徐々に始められている.しかし,long-COVIDは未だ謎に満ちており,統一された診断基準や症状の分類などが存在せず,long-COVIDのための医薬品開発は,通常よりもさらに暗中模索の状態である.
 記事はlong-COVIDが確かに存在することを示す互いに独立な複数の事例をとりあげたのち,症状として,体位性頻脈症候群(Postural orthostatic tachycardia syndrome, POTS),脳の霧 (Brain fog)の異常,炎症の持続,および,自己抗体の生成について比較的詳しく紹介し,続いて,マウントサイナイ,ジョンズホプキンス,NIH国立神経疾患・脳卒中研究所 (NINDS)で進行中のそれぞれ800人,25,000人,および50人のCOCID-19患者の追跡調査を紹介した.
 long-COVIDの治療法開発に対する投資は.需要があることが明確であるが,long-COVIDの発症機序ひいては明確な標的が不明なため未だ低調である.臨床現場では対症療法が行われるにとどまっている.
  記事は,臨床試験が進められている承認薬と開発中の実験薬7例を表1[https://www.nature.com/articles/s41587-021-00984-7/tables/1]にまとめそれぞれについて概要を紹介した.
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