[出典] "Analysis of conventional and alternative CRISPR/Cas9 genome editing to enhance a single-base pair knock-in mutation" Edmondson C, Zhou Q, Liu X. BMC Biotechnol. 2021-07-27. https://doi.org/10.1186/s12896-021-00707-5
背景
  • UC Riversideの研究チームは,先行研究で,転写因子TFIIDの最大のサブユニットであるTAF1キナーゼによるp53の制御の新しいメカニズムを発見していた.TAF1キナーゼによるp53のThr55でのリン酸化が,p21プロモーターからのp53とTAF1の解離をもたらし,転写の不活性化とそれに続くp53タンパク質の分解につながる.
  • このThr55のリン酸化の作用を明らかにするために,この残基をスレオニン (T: ACT)からアラニン(A:GCT)に変異させたT55A細胞株を作成し解析することを目指し,CRISPR/Cas9システムをベースとするいくつかのゲノム編集法を試行し,RNPをベースとする手法が最も効率的な手法であることを同定した.
成果
  • CRISPR/Cas9システムをプラスミドで送達することによるHDR (相同組換え修復過程)を介した手法は,編集率効率は高いが"mixed pool"と呼ばれる挿入・欠失変異の発生率が高いことから,癌抑制因子p53に1塩基対変換を誘導するには適していなかった.
  • Cas9とsgRNAのRNP複合体,切断部と編集部の距離を短くしたgRNA,およびサイレント変異も利用したHDRを介して,特異的な1塩基対変換効率を向上させることに成功した.
  • 塩基エディターのABEは,その最適条件を今回の標的が満たすことが困難であったため,目的とする一塩基変換を実現できなかった.
  • HDRにネオマイシンカセットによる選択を組み合わせると,mixed pool"の問題を回避し,標的部位への特異性を最も高くすることが可能であったが,ヘテロ接合性の変異しか得られなかった.