[出典] "Ultrapotent antibodies against diverse and highly transmissible SARS-CoV-2 variants" Wang L, Zhou T [..] Sullivan NJ, Misasi J. Science 2021-07-01. https://doi.org/10.1126/science.abh1766
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National Institute of Allergy and Infectious Diseases/NIHに,University of North Carolina School of Medicine, Frederick National Laboratory for Cancer ResearchおよびNational Institute for Communicable Diseases (南ア)が加わった研究グループからの論文 [注] この研究成果は,2021年3月1日に"Antibodies with potent and broad neutralizing activity against antigenically diverse and highly transmissible SARS-CoV-2 variants"というタイトルでプレプリントサーバbioRxivから公開されていた.
- SARS-CoV-2には,治療用抗体に耐性があり感染力の強い変異株 (Variants of Concern, VOC) [*1]が出現し,広域な反応性を持つ抗体を継続的に発見する必要性が高まっている.
- 新型コロナウイルスの祖先株とされているWuhan Hu-1 (以下,Hu-1) 株のスパイクタンパク質の配列に基づいて設計されたワクチンは,SARS-CoV-2に対する抗体反応を誘導するが,Hu-1株から変異した株に対する中和活性が,in vitro で低下することが報告されている.
- Hu-1と同じ配列を帯びたWashington-1 (WA-1)に感染した3人の早期回復者から,スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン (RBD)に対して高親和性を示す4種類の抗体を発見した [Fig. 1引用右図参照].
- 4抗体のうちRBDsのアップ状態に結合する抗体とダウン状態に結合する抗体がそれぞれ2種類であった.また,4抗体のうち3抗体はRBDとACE2の相互作用を直接ブロックし,残る抗体は立体障害を介して間接的に阻害した.
- 中でもアップ状態のRBDsに結合する2つの抗体は超高活性であり,中和抗体価はナノモル以下であった (IC50 0.3~11.1 ng/mL; IC80 1.5~34.5 ng/mL).
- また,WHOが定義する"懸念される変異株" [variants of concern (VOC):アルファ (B.1.1.7), ベータ (B.1.351), ガンマ (P.1)およびデルタ (B.1.617.2) ][*1]を含む23種類の変異株に対して強力な中和活性を示した.[Supplementary Figure S3引用下図参照]
- さらに,2種類の抗体を組み合わせること,リネジェロン社の抗体カクテル療法 [*2]が示したように,in vitro での抗体逃避変異の発生が抑制された.
[*] 引用crisp_bio記事
- [20210629更新] 新型コロナウイルス:変異株ギリシャ語アルファベット表記の一覧. https://crisp-bio.blog.jp/archives/26551487.html
- [20210720更新] トランプ大統領に処方されたリジェネロン社の抗体カクテル療法 - 日本でも特例承認.https://crisp-bio.blog.jp/archives/24386275.html
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