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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

2022-09-11 Nature Methods誌に掲載されたハイライト記事の書誌情報を追記
[出典] RESEARCH HIGHLIGHT "Tracking the order of transcriptional events in living cells" Tang L. Nat Methods 2022-09-06. https://doi.org/10.1038/s41592-022-01610-3

2022-08-01
Nature 誌論文の書誌情報を追記
"Recording gene expression order in DNA by CRISPR addition of retron barcordes" Bhattarai-Kline S [..] Shipman SL. Nature 2022-07-27. https://doi.org/10.1038/s41586-022-04994-6 [著者所属機関] Gladstone Institute of Data Science and Biotechnology, Duke U Medical Center, Harvard Medical School (George Churchを含む), U Washington, Seattle.
2021-08-17 bioRxiv 投稿準拠初稿
"Reconstructing transcriptional histories by CRISPR acquisition of retron-based genetic barcodes" Bhattarai-Kline S [..] Shipman SL. bioRxiv. 2021-08-11 [プレプリント] 
 
 [背景]
  • DNAを記憶媒体として,テキスト,画像,音声の保存に加えて,細胞内での転写や環境刺激などの生物学的シグナルの記録に利用可能なことが示されてきた.特に,細胞内の生物学的プロセスを長期的に記録する記憶媒体として注目されている.
  • バクテリアのCRISPRシステムは,そのインテグラーゼ (Cas1とCas2)を介して,外来DNA由来のユニークなスペーサ配列をCRISPRアレイに順次記録していく (CRISPRアレイの一方向性).
  • レトロンは,バクテリアのファージ感染防御システムとして機能していることが近年明らかにされてきた.典型的なレトロンは,以下の発現を制御する1つのオペロンで構成されている: (1)高度に構造化された小型のノンコーディングRNA (レトロンncRNA),(2)レトロン逆転写酵素 (レトロンRT),(3)1つまたは複数のエフェクタータンパク質.レトロンはこれまでに,いくつかの宿主系におけるゲノム編集とアナログな分子レコーダーに利用されてきた [1-4]。我々は、レトロンとCRISPR-Casインテグラーゼの機能を組み合わせることで、転写イベントの一時的な記録を行うシステムを構築した。
 [成果]
  • retron-based genetic barcodes大腸菌のレトロンをベースとして,人工的なRNAバーコードをDNA (RT-DNA)に逆転写し,CRISPRインテグラーゼを介してゲノム (CRISPRアレイ)に組み込み,シーケンシング解析した  [Figure 1 a/b引用右図参照].
  • この手法では,CRISPRインテグラーゼがバーコードを一方向に記録させることで,事前に学習させた分類法や事後的な推論法に頼ることなく,単純で論理的なルールに基づいて物理的な記録から転写イベントのタイミングを再構築することができる。
  • この手法により,大腸菌BL21-AI細胞において,時間的に秩序だった転写イベントを記録可能なことを実証し,Retro -Cascorderとして発表した.
 [参考資料]
  1. "Retroelement-Based Genome Editing and Evolution" Simon J, Morrow BR, Ellington AD. ACS Synth Biol. 2018-11-16. https://doi.org/10.1021/acssynbio.8b00273
  2. "High-throughput functional variant screens via in vivo production of single-stranded DNA": crisp_bio 2021-03-31 レトロンをベースとするリコンビアニングを介したプール型変異機能ゲノミクス. https://crisp-bio.blog.jp/archives/25983806.html
  3. "Functional Genetic Variants Revealed by Massively Parallel Precise Genome Editing": CRISPRメモ_2018/09/24 [第1項] CRISPEY:超並列精密ゲノム編集による機能ゲノミクス https://crisp-bio.blog.jp/archives/12408819.html - E. coli Ec86レトロンのバクテリアレトロン配列を100-ntの長さの相同組換えドナーと相同アームの配列に置換し、3'末端にsgRNAを結合することで、核内で相同組換え用ドナーとなるssDNAsを大量に生成するCRIPEYを実現した.
  4. "Genomically encoded analog memory with precise in vivo DNA writing in living cell populations": crisp_bio 2018-02-22 CRISPRによる細胞事象記録システム https://crisp-bio.blog.jp/archives/7431834.html:mSCRIBE、TRACEそしてCAMERA - 逆転写酵素を利用してRNAとssDNAのハイブリッド分子を生成するように設計したレトロンを介して細胞内でssDNAを生成し、リコンビナーゼを介して、ゲノム上の特定の遺伝子座に組込み、シグナルを記録する手法SCRIBE (Synthetic Cellular Recorders Integrating Biological Events)
  5. Shipmanグループからのレトロン関連投稿: "Improved architectures for flexible DNA production using retrons across kingdoms of life" 改良型レトロンからの転写を介してドナーDNAを潤沢に供給することでHDRの効率を向上. https://crisp-bio.blog.jp/archives/25977458.html 
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