[出典] "DNA interference states of the hypercompact CRISPR–CasΦ effector" Pausch P, Soczek KM [..] Doudna JA. Nat Struct Mol Biol. 2021-08-11. https://doi.org/10.1038/s41594-021-00632-3
 Doudnaグループは今回,先行研究でメタゲノムデータから発見し [*1]そのゲノム編集活性を報告[*2]していた CasΦ (Cas12j) の標的DNAへの結合前と結合後の構造を,クライオ電顕単粒子再構成法によって再構成した [参照: Fig. 1 DNA認識前のcrRNA結合CasΦの構成と構造].
  • CasΦはcrRNAとでコンパクト (~100 - kDa)なことが知られているが,今回,エフェクタータンパク質とcrRNAが絡み合った構造がクライオ電顕法によって再構成され,dsDNAの巻き戻しと切断の機序が見えてきた.
  • 標的DNA結合前 (EMD- 23678)と結合後の2種類 (EMD 23600EMD- 23601)の構造から,CasΦが標的DNAを認識してヌクレアーゼを活性化する際の構造変化を,明らかにした.
  • また,CasΦと大型なV型CRISPR-Casエフェクターとが構造上も機構上も極めて類似していることも明らかになった.
  • こうして明らかになったCasΦ標的DNAの認識と切断の構造基盤を手がかりに,野生型CasΦよりもDNA切断の速度が向上した変異型CasΦの作出に成功した.野生型と変異型の構造比較から,野生型CasΦは,RecIドメインのヘリックスα7がPAM近位の標的鎖へのアクセスを阻害することで,DNA切断の忠実度を向上させたことが明らかになった [Fig. 5 参照].
  • すなわち,Casタンパク質がDNA切断の急速な速度を犠牲にして、DNA干渉の忠実度を高めていることが示唆された.
 [構造情報]
  • 2021-08-13 15.45.53EMD- 23678  / PDB 7M5O  : Cryo-EM structure of CasΦi-2 (Cas12j) bound to crRNA (解像度 3.54 Å)
  • EMD 23600 / PDB 7LYS  : Cryo-EM structure of CasΦ-2 (Cas12j) bound to crRNA and DNA (解像度 2.9 Å) [右図参照]
  • EMD- 23601 / PDB 7LYT : Cryo-EM structure of CasΦ-2 (Cas12j) bound to crRNA and Phosphorothioate-DNA (解像度 2.9 Å)
 [* CasΦ-2とCasΦ3に関するcrisp_bio記事]
  1. CRISPRメモ_2019/03/13  [第1項] メタゲノムデータから再構築した> 200 kbpのファージゲノムに、多様なCRISPR-Casシステムが存在.https://crisp-bio.blog.jp/archives/16236107.html
  2. crisp_bio 2020-07-17 巨大なファージが最小のDNAエディターを提供する. https://crisp-bio.blog.jp/archives/23626388.html
  3. [20210723更新] ファージ由来のCRISPR-CasΦ3が標的DNAを巻き戻し切断する構造基盤.https://crisp-bio.blog.jp/archives/26812110.html