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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] "Small molecule inhibition of ATM kinase increases CRISPR-Cas9 1-bp insertion frequency"  Bermudez-Cabrera HC [..] Sherwood RI. Nat Commun. 2021-08-25. https://doi.org/10.1038/s41467-021-25415-8
 Brigham and Women’s Hospital and Harvard Medical Schoolの遺伝学にMITの計算科学が加わった研究グループからの論文.
  • 哺乳類細胞におけるCRISPR-Cas9によるDNA二重鎖切断 (DSB)にともなう変異の予測が可能になり,場合によっては,単一の遺伝型に落ち着く.しかし,設計通りの切断結果を実現する技術は限られており,特に,治療上有用な修復である1-bp挿入の実現は困難である.
  • 数千のCas9 DSBにおける修復結果を解析した先行研究において,変異の大部分が,マイクロホモロジーに依存する欠失 (以下,MH欠失),MHに依存しない欠失,および1-bpの挿入に分類可能なことが示された [参考: crisp_bio 2018-11-08 機械学習モデルにより一塩基編集技術を磨く (2件):NHEJ/MMEJの道とHDRの道それぞれに.https://crisp-bio.blog.jp/archives/13403136.html]
  • 研究グループは今回,487種類の低分子を対象として,MH欠失の発生頻度と,1-bp挿入の発生頻度を高める低分子をスクリーニングし,1-bp発生頻度を高める低分子を同定した.
  • 中でもATMキナーゼ阻害剤のKU-60019が,3種類のヒト細胞株とマウス細胞株,2種類のCas9ヌクレアーゼ (SpCas9-NGとKKH-SaCas9),および数十の内因性および外因性標的について,KU-60019を加えることで,変異を安定して1-bp挿入への偏らせることを発見した.一方で,ATM阻害がDSB修復を抑制するというこれまでの報告と整合して,ATM阻害によって編集が進行したアレルの割合が低下した.
  • このATMキナーゼ阻害剤効果は,Atm をノックアウトした細胞や3種類の異なるATM低分子阻害剤でも再現された.
  • 注目すべきは,KU-60019が,いくつかのヒト遺伝子座のアレルの80%で1-bp挿入の相対的発生頻度を高め,病原性の1-bp欠失変異の修復効率を向上させたことである.

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