[出典] "ZMYND8-regulated IRF8 transcription axis is an acute myeloid leukemia dependency" Cao Z [..] Shi H. Mol Cell. 2021-08-05. https://doi.org/10.1016/j.molcel.2021.07.018
 Perelman School of Medicine (U Pennsylvania) を主とする米国の研究グループは,先行研究で,33種類の癌細胞株 (白血病, 肉腫, 肺癌, または膵臓癌)において,転写因子のDNA結合ドメイン1,427種類を対象としたCRISPR-Cas9ドロップアウト・スクリーニングを介して,ZFP64が,MLL 遺伝子再構成を伴う急性混合型白血病に特有な必須転写因子であることを明らかにしていた ["A Transcription Factor Addiction in Leukemia Imposed by the MLL Promoter Sequence" Lu B [..] Shi J, Vakoc CR.  Cancer Cell 2018-11-29. https://doi.org/10.1016/j.ccell.2018.10.015]
 研究グループは今回,先行研究のスクリーニングで得たデータをベースとして,タンパク質ドメインの癌細胞の増殖への必須度 (a protein domain essential score, ES)を,各タンパク質ドメインを標的とする全てのsgRNAの平均log2 fold change (以下, log2FC)として定量化し,AML細胞株と非AML細胞株との間の差分に応じてランキングすることで,AML細胞株における必須度が他の細胞株よりも有意に高い転写因子を同定した.
  • その結果,既報告のMYB, CEBPA, CBFB, PU.1, ZFP64, およびFLI1 に加えて,IRF8 およびMEF2D を発見し,この結果を,AchillesプロジェクトのDEPMAPのゲノムワイドCRISPRスクリーニング結果から裏付けることができた [論文のFigure 1参照 https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S1097276521005876-gr1_lrg.jpg].
  • 転写因子を標的とすることは簡単では無いことから,IRF8 MEF2D 転写制御回路に作用するドラッガブルなクロマチン制御因子 (chromatin regulators, CRs)を,19種類のヒト癌細胞株における197種類のCR関連ドメインを対象とするCRISPR/Cas9スクリーニングにより探索した.その結果,ZMYND8の必須度がAMLで有意に高いことを特定した.
  • CRISPRスクリーニングに,トランスクリプトーム・プロファイリングとクロマチン結合解析を組み合わせることで,IRF8 MEF2D 転写制御回路をAML特有の脆弱性として確定した.
  • ZMYND8は,AMLに特有なエンハンサーを介して,IRF8 と共に癌遺伝子MYC を活性化する.また,ZMYND8がIRF8とMYCのエンハンサーに局在するには,AMLの増殖にも必要な転写コアクチベーターであるBRD4が必須である [論文Graphical abstract https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S1097276521005876-fx1_lrg.jpg 参照 ].
  • こうして,ZMYND8がクロマチンリーダーカセットを介してBRD4のETドメインに結合し,これが適切なクロマチン占有とin vivoでの白血病の成長維持に必要であり,ZMYND8が,AMLの重要な転写プログラムを調節するための潜在的な治療ターゲットであることが示唆された.
  • 事実,マウスでの実験で,CRISPR/Cas9によってZMYND8のエピジェネティックリーダー機能を阻害すると,マウスの腫瘍が縮小し,生存率が向上した.