CAST (CRISPR-associated transposase/CRISPR関連トランスポザーゼ); multicopy chromosomal integration using CRISPR-associated transposases (MUCICAT)
[CASTシステム関連crisp_bio記事]
[出典] "Orthogonal CRISPR-associated transposases for parallel and multiplexed chromosomal integration" Yang S [..] Yang S, Zhang Y [..] Yang S. Nucleic Acids Res. 2021-09-03. https://doi.org/10.1093/nar/gkab752
Key Laboratory of Synthetic Biology (上海)を主とする研究グループからの論文.
[背景]
これまでのゲノム編集法では,少なくとも大腸菌では,4つ以上の標的部位を効率良く編集することが不可能であり,特に遺伝子の組み込みは困難であったが,近年,CASTによって,相同組み換え修復過程とは独立に,バクテリアの染色体上の標的部位へのDNA導入が可能なことが示された.また,Vibrio cholerae Tn6677由来のCAST (以下,VchCAST)をベースとした多重化 (MUCICAT)も実証された [*1].
VchCASTがScytonema hofmannii PCC 7110由来のV- K型CAST (以下,ShoCAST) [*2]と異なるトランスポゾン末端を認識するという意味で直交するという報告があるが,V-K型CASTは,タンパク質TnsAが不活性なためにドナープラスミドを共沈させる傾向があり,ひいては,複数の標的に対する導入効率が低い.Aeromonas salmonicida S44由来のI-F3型CAST(AsaCAST)は,大腸菌にてRNA誘導のDNAトランスポジション活性を示すが,組み込み効率がVchCASTよりもはるかに低い.そこで,VchCASTに組み合わせることで高効率なMUCICATを実現する高活性なCASTの同定を試みた.
[成果]
研究グループは7種類のCASTの挿入効率をqPCRでベンチマークした: ShoCAST, AvCAST, PmcCAST, AsaCAST, ShCAST, VchCAST, およびPrtCAST [Figure S8引用右図参照]
Pseudoalteromonas translucida KMM520由来のPtrCASTの特徴を調べたところ,PAMを必要とせず,より大きなカーゴの挿入効率や多重転位を実現することができ,4塩基のシード配列から外れたミスマッチにも耐えられることを同定した.さらに重要なことに,PtrCASTはVch-CASTと直交して作動した.
この2つのCASTは,同一の大腸菌細胞内で,5遺伝子座と2遺伝子座を標的とするそれぞれのcrRNAsとともに,それぞれのmini-Tn基質上で排他的に活性化した.
[CASTシステム関連crisp_bio記事]
- [20201124更新] INTEGRATE: Tn様トランスポゾンをベースとして、バクテリアゲノム編集の効率化と多重化を実現.https://crisp-bio.blog.jp/archives/23669855.html
- 2020-11-19 CRISPRシステムとトランスポザーゼの融合により、微生物ゲノムへの遺伝子マルチコピー導入を実現.https://crisp-bio.blog.jp/archives/24801585.html
- 2021-09-06 Cas12kでトランスポゾンをガイドするCASTシステムによる微生物ゲノム工学.https://crisp-bio.blog.jp/archives/27319623.html
- 2020-12-08 Tn7-CRISPR-Casトランスポゾンの転移は全てCRISPRアレイに由来するgRNAにガイドされる. https://crisp-bio.blog.jp/archives/24971143.html
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