2023-04-07 Genome Biology 誌刊行論文の書誌情報を追記し、テキストを一部改訂。 
2021-09-12
bioRxiv 投稿に準拠した初稿。
[出典] "CRISPR screens identify gene targets and drug repositioning opportunities at breast cancer risk loci" Tuano NK [..] Chenevix-Trench G, Rosenbluh J. (bioRxiv. 2021-09-07Genome Biol 2023-03-29. https://doi.org/10.1186/s13059-023-02898-w 
 Monash UniversityとQIMR Berghofer Medical Research Instituteを主とする研究グループの投稿.
 ゲノムワイド関連解析 (GWAS)によって,乳癌 (breast cancer, BC)のリスクに関連する遺伝子座が200以上同定されている.病因候補の変異体 (candidate causal variants, CCVs)の大部分はノンコーディング領域に位置し,遺伝子発現の制御を介して発癌リスクを調整していると考えられる.
  • 研究グループは先行研究で,BCリスク遺伝子座におけるリスク候補遺伝子を予測するためのスコアリングシステムINQUISIT  [Integrated expression quantitative trait and in silico prediction of GWAS targets) ; Michailidou K et al, 2017https://doi.org/10.1038/nature24284]を開発していた.
  • 今回は,プール型CRISPRiとCRISPRaを利用して,遺伝子の抑制と活性化が、細胞株in vitroでの2次元/3次元増殖,免疫不全マウスin vivoでの腫瘍形成,およびDNA損傷応答に及ぼす作用を測定し、INQUISIT予測遺伝子を評価した.
  • 60件のCRISPRスクリーニングから増殖を亢進またはDNA損傷応答の改変を介して癌の成長を促す20種類の遺伝子を高信頼度で特定した。
  • HiCHIP [Mumbach MR et al, 2016 https://doi.org/10.1038/nmeth.3999]CRISPRqtl [*]を用いて,BCリスク変異体が遺伝子のサブセットを直接制御することを検証した.
  • さらに,Drug Repurposing Hub (https://clue.io/repurposing)を利用して,これらの標的に再利用可能な薬剤を同定した.
 [*] CRISPRqtl
  • CRISPRメモ_2019/01/05 https://crisp-bio.blog.jp/archives/14783929.html [第1項] プール型CRISPRiとRNA-seqによるエンハンサー・遺伝子ペアのハイスループット・スクリーニング - 遺伝子の発現量を量的形質と見なして遺伝子発現に影響を与える遺伝子座を絞り込んでいくeQTL (expression quantitative trait locus)の手法に着想を得て,細胞集団を対象としたCRISPRiとscRNA-seqに基づく "crisprQTL"を開発