2021-10-10 関連crisp_bio記事へのリンクを追加:2021-10-10 トランスポゾンに関連するTnpBは,プログラム可能なRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼである.https://crisp-bio.blog.jp/archives/27622353.html
2021-10-02 記事タイトルを「トランスポゾンにコードされたRNA誘導性ヌクレアーゼは,一連のCRISPR-Casの祖先であり,新たなゲノム編集ツールのソースでもある」から「トランスポゾンにコードされているIscBタンパク質は,RNAにガイドされてヒトゲノムを切断し,藻類にも存在する」へと改訂
2021-09-11 初稿
[出典]
論文:"The widespread IS200/605 transposon family encodes diverse programmable RNA-guided endonucleases" Altae-Tran H, Kannan S [..] Koonin EV, Zhang F. Science 2021-09-09. https://doi.org/10.1126/science.abj6856
NEWS:"Trove of CRISPR-like gene-cutting enzymes found in microbes" Ledford H. Nature 2021-09-10. https://doi.org/10.1038/d41586-021-02461-2
[要旨]
CRISPR-Casシステムの構成と機能の解明、さらに応用も急速に広がり、また、NCBIのEugene V. KooninらがCRISPR-Casシステムの分類体系を整備しその進化[*記事文末参照] についても論じられてきた。
Feng Zhangらは今回、Kooninチームと共に、3種類のトランスポゾンにコードされたタンパク質 (IscB、IsrB、およびTnpB)が、天然に存在し、再プログラム可能なRNAガイドDNAヌクレアーゼであることを示した。
その上で、トランスポゾンにコードされているRNA誘導型のヌクレアーゼ群をOMEGA (Obligate Mobile Element Guided Activity)と命名し、ガイドRNAの機能を帯びていることが示唆されるncRNAをωRNAと命名した。
本論文は、CRISPR-Cas様システムが真核生物である藻類にも存在することを初めて明らかにしたことでも画期的である。
[詳細]
2021-10-02 記事タイトルを「トランスポゾンにコードされたRNA誘導性ヌクレアーゼは,一連のCRISPR-Casの祖先であり,新たなゲノム編集ツールのソースでもある」から「トランスポゾンにコードされているIscBタンパク質は,RNAにガイドされてヒトゲノムを切断し,藻類にも存在する」へと改訂
2021-09-11 初稿
[出典]
論文:"The widespread IS200/605 transposon family encodes diverse programmable RNA-guided endonucleases" Altae-Tran H, Kannan S [..] Koonin EV, Zhang F. Science 2021-09-09. https://doi.org/10.1126/science.abj6856
NEWS:"Trove of CRISPR-like gene-cutting enzymes found in microbes" Ledford H. Nature 2021-09-10. https://doi.org/10.1038/d41586-021-02461-2
[要旨]
CRISPR-Casシステムの構成と機能の解明、さらに応用も急速に広がり、また、NCBIのEugene V. KooninらがCRISPR-Casシステムの分類体系を整備しその進化[*記事文末参照] についても論じられてきた。
Feng Zhangらは今回、Kooninチームと共に、3種類のトランスポゾンにコードされたタンパク質 (IscB、IsrB、およびTnpB)が、天然に存在し、再プログラム可能なRNAガイドDNAヌクレアーゼであることを示した。
その上で、トランスポゾンにコードされているRNA誘導型のヌクレアーゼ群をOMEGA (Obligate Mobile Element Guided Activity)と命名し、ガイドRNAの機能を帯びていることが示唆されるncRNAをωRNAと命名した。
本論文は、CRISPR-Cas様システムが真核生物である藻類にも存在することを初めて明らかにしたことでも画期的である。
[詳細]
- 2015年にNCBIのEugene V. Kooninのチームが,トランスポゾンのIS200/IS605ファミリーにおいて独自のグループを形成しているIscBタンパク質をヌクレアーゼと推定し,さらに,RNA誘導性エンドヌクレアーゼCas9の祖先と推定していた.
- Feng Zhang率いる研究グループにNCBIのKooninチームも加わり,進化系統解析,RNA-seq,および生化学実験に基づいて,IS200/IS605トランスポゾンからCRISPR-Cas9システムへと進化する過程を再構築し,IscBの機能や機序を明らかにした.
- IscB (~ 400 aa)の構造はCas9に類似し,RuvCエンドヌクレアーゼ・ドメインがブリッジ・ヘリックス(BH)の挿入によって分割され,さらにHNHエンドヌクレアーゼ・ドメインを帯びている.
- RuvCとRuvCの両ドメインを含むタンパク質は,既知タンパク質を検索した限りでは,Cas9とIscBだけであり,RuvC, BH, およびHNHのドメインを組み合わせたクラスタリングと系統解析から,IscBが既知のCas9オーソログ・ホモログの共通祖先である可能性が高い.
- IscBはノンコーディングRNAをベースとして,DNA二重鎖を切断する再プログラム可能なRNA誘導型ヌクレアーゼであり,ヒトゲノム編集に利用可能である.
- IscBのホモログを真核生物のゲノムで検索したところ,緑藻類Ignatius tetrasporus の葉緑体に複数のiscB 遺伝子座を発見した.そのうち1つの遺伝子座は停止コドンが混在しておらず完全なIscBと転写活性のあるωRNA (著者らが今回命名)がコードされており,最小のNNG TAM (target-adjacent motif)でDNAを切断した.このようなゲノム編集システムが真核生物で発見されたのは初めてであり、従来考えられていたよりも広く普及していることを示唆する驚くべき結果となった.Nature NewsにてFeng Zhangは,「講演をするたびに、『真核細胞でCRISPRの活性を見たことがあるか』と聞かれます」「今回、ようやく "はい "と答えることができました」と述べた.
- IS200/605トランスポゾンにコードされたもう一つのタンパク質であり,Cas12エンドヌクレアーゼの祖先と考えられるTnpBのRNA誘導型のヌクレアーゼ活性も明らかにした.TnpBは,多様な真核生物のトランスポゾンにコードされているFanzorsの祖先と想定され (Bao & Jurka, Mobile DNA 2013) ,IscBファミリーより桁違いに多様であり,原核生物ゲノムのHMMER検索で100万個以上のtnpB 遺伝子座が同定された.
- この他にも,長さが~350 aaの短いIscBの相同タンパク質"IsrB (Insertion sequence RuvC-like OrfB)"や,PLMPドメインとHNHドメインを持っているがRuvCドメインを持たな長さ~180 aaのタンパク質"IshB (Insertion sequence HNH-like OrfB)",また,TnpAが例外的に大きな (~1,770 aa) Cas9に関連づけられることなどを発見した.
- 研究グループは,トランスポゾンにコードされているRNA誘導型のヌクレアーゼ群を,OMEGA (Obligate Mobile Element Guided Activity)と命名した.
OMEGAシステムは多くの生物に見出され,RNA誘導エフェクターが,CRISPR-Casシステムが発見された当時に想定されていたよりも広く微生物界に存在し,さらに,真核生物にも広がっている可能性がある.
[*] 2015年 Koonin論文
- "ISC, a Novel Group of Bacterial and Archaeal DNA Transposons That Encode Cas9 Homologs" Kapitonov VV, Makarova KS, Koonin EV. J Bacteriol. 2015-12-28. https://doi.org/10.1128/JB.00783-15 - NCBIのEugene V. Kooninらは,Cas9ホモログが,非自律的なトランスポゾン群にコードされているとし,これをISC (insertion sequences Cas9-like)と命名した.また,その構造と標的部位の特異性からISCエレメントは,Y1チロシン・トランスポザーゼで移動されるバクテリアとアーケアのトランスポゾンのIS200/IS605スーパーファミリーの中で,独自のグループを形成しているとした.その上で,ISCトランスポゾンにコードされた2つのヌクレアーゼドメインを帯びたタンパク質 (IscB)が,CRISPR-Cas9の祖先と想定した.
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