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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

2021-12-22 フグに続くのは温和なマサバか
[出典] 国内のゲノム編集研究開発事例を紹介します!九州大学農学研究院附属アクアバイオリソース創出センター唐津サテライト編.農林水産技術会議.2020-12-22. https://www.affrc.maff.go.jp/docs/anzenka/genom_syuzai2020/page1.html
 九州大学では2012年にマサバの完全養殖技術を確立し,2014年に市販を開始し,年間を通して油がのった刺身になる「唐津Qサバ」として地域のブランドになっている.それでは,なぜゲノム編集に取り組んだのか.
  • マサバは稚魚期に共食いすることで知られており,養殖する水槽の中で,孵化してから体長10cmほどに育つまでに1割しか残らないことから,生き残る確率を上げることを目的とした.
  • 2015年から攻撃行動を抑制することを目的とするゲノム編集マサバの研究を開始した.当時,メダカで遺伝子「AVTR-V1a2」を変異させることで,攻撃行動が抑制されることが知られていた.
  • ゲノム編集の技術として,TALENとCRISPR/Cas9を試行した結果,ほぼ100%の変異導入率を達成できたTALENを選択し,飼育条件,受精卵にTALENをマイクロインジェクションするニードルや温度の最適化を経て,ゲノム編集 から3世代目で,AVTR-V1a2の両アレルノックアウトを介して攻撃行動を示さない温和なマサバが得られた.
  • これまでの育種であれば,温和なマサバを発見し,交配と選抜を延々と繰り返しながら,温和なマサバの確立に挑戦していくことになることから,今回,育種におけるゲノム編集の威力が示された.
  • 今後,養殖水槽の中で実際に共食いが減るか,ゲノム編集マサバの成長,食品としての品質と安全性に問題は無いか,自然環境を損なわない養殖管理などの課題を一つ一つ確認・解決していくことになる.
2021-10-29 22世紀鯛」に「22世紀フグ」続く
[出典] “ゲノム編集によって生まれた地球にやさしい「22世紀ふぐ」を多くの人に届けたい!” リージョナルフィッシュ株式会社.クラウドファンディングCAMPFIRE.https://camp-fire.jp/projects/view/512578; バイオステーション.2021-10-20. https://bio-sta.jp/news/administration/2750/
 食欲を抑えるホルモンであるレプチンをゲノム編集技術で不活性化することで,一般的な品種の1.9倍の早さで成長し,ひいては,飼育期間が大幅に短縮され,また,飼料利用効率 (体重増加÷摂取した飼料量)が42%改善し,より少ない飼料で生育可能になったことから環境負荷の軽減も実現した.
 「高成長トラフグ」という名称で,厚生労働省と農林水産省にそれぞれゲノム編集食品および飼料として,届け出て受理された.
 29日21:15の時点で,クラウドファンディングの支援者数38人,支援総額 605,000円に達している.
2021-09-18 初稿
[出典] 京大・近畿大・リージョナルフィッシュ株式会社プレスリリース "ゲノム編集技術を利用して開発した「可食部増量マダイ」、厚生労働省及び農林水産省への届出完了" PRTIMES (プレスリリース・ニュースリリース配信サービス) 2021-09-18 15:00. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000060432.html

 可食部増量マダイとは,CRISPR/Cas9ゲノム編集技術によって受精卵にてミオスタチン*の遺伝子を欠失させることで,可食部を約1.2倍 (最大で1.6倍)にした養殖マダイである [* ミオスタチは筋肉の増殖を抑制する因子].リージョナルフィッシュ社はこのマダイを「22世紀鯛」と命名し,22世紀鯛育種の手法を「ナノジーン育種」と命名した. 

 今回の遺伝子欠失が,人工的なゲノム編集を介さずに自然界でも起こりうる変異であること,ミオスタチン遺伝子欠失以外のゲノム改変や有害物質の産生が認めらないこと,陸上の水槽で養殖し海に流出しない措置がとられていることなどから,厚生労働省と農林水産省への届け出 [注]が完了した.
[注] 厚生労働省の「ゲノム編集技術応用食品及び添加物の食品衛生上の取扱要領」に基づき,遺伝子組換えに該当しないこと、また食品としての安全性について問題がないことを確認;農林水産省にて,生物多様性影響などの観点から問題がないことを確認.

 京大と近畿大が共同で設立したリージョナルフィッシュ社は, 9月17日からクラウドファンディング「CAMPFIRE」のプロジェクト,"世界初!ゲノム編集技術を利用して開発された「22世紀鯛」を多くの人に届けたい!(https://camp-fire.jp/projects/view/400934)" にて,ゲノム編集技術や生産方法などに関して詳細な情報を提供し,190食分の予約受付けを開始し,10月より順次発送を予定している. 該当ページでは,2021年9月18日14:50の時点で,「目標金額100万円; 106人から1,394,000円」と表示されていた.

 [ゲノム編集マダイ参考資料]
  • "Production of a breed of red sea bream Pagrus major with an increase of skeletal muscle mass and reduced body length by genome editing with CRISPR/Cas9" Kishimoto K [..] Kinoshita M. Aquaculture. 2018-10-01. https://doi.org/10.1016/j.aquaculture.2018.05.055
  • リージョナルフィッシュ社Webサイト: 欠失型ゲノム編集https://regional.fish/genome/
  • 京大発,「肉厚マダイ」参上 - 食に革命を起こすゲノム編集と安全.(開発者の木下政人京大農学研究科准教授と同学科修士課程修了の料理人高橋拓児氏との対談) 京都大学広報誌. 2018-06-26. https://www.kyoto-u.ac.jp/kurenai/201809/taidan/
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