2022-08-10 BravoらのNature 論文のハイライト記事の書誌情報を以下に追記
Research Highlight "Structural insights into Cas9 mismatch: promising for development of high-fidelity Cas9 variants" Tang H, Wang D, She Y. Sig Transduct Target Ther 2022-08-04. https://doi.org/10.1038/s41392-022-01139-z [著者所属] Fudan U (Shanghai).
[出典] ”An assessment of genome-editing efficiency of a newly developed Cas9 in C. elegans " Ferdousy S, Chen B. MicroPubl Biol. 2022-07-17. https://doi.org/10.17912/micropub.biology.000601 [著者所属] Southern Illinois U Carbondale, BCSIR Laboratories Chattogram (Bangladesh)
Research Highlight "Structural insights into Cas9 mismatch: promising for development of high-fidelity Cas9 variants" Tang H, Wang D, She Y. Sig Transduct Target Ther 2022-08-04. https://doi.org/10.1038/s41392-022-01139-z [著者所属] Fudan U (Shanghai).
ターゲット編集の抑制とオンターゲット編集の活性維持/向上のトレードオフに留意する必要がある.BravoらがNature 誌に発表した論文を「Cas9とガイドRNAを介して認識する標的DNAとの塩基対ミスマッチを認識する機構を,速度論的解析とクライオ電顕法による構造解析により解明し,高忠実度の次世代Cas9変異体開発への展望を提供した」としてハイライトしたが,その中でBravoらの研究のCas9構造解析の意義を以下のように紹介している:
これまでの研究で,Cas9単量体 (PDB ID: 4CMP),Cas9-sgRNA二元複合体 (PDB ID: 4ZT0),Cas9-sgRNA-DNA三元複合体 (PDB ID: 4OO8, 4UN3, 5F9R, 5Y36, 6O0Y)など多くのCRISPR-Cas9の構造形式が決定されている.これらの構造上情報の中で,三元複合体のみがCas9のオフターゲット効果を探索するのに適していると考えられる.
しかし,これらの三元複合体を形成していたDNA基質は,ミスマッチのないオンターゲットのDNA二本鎖のみであった.また、6O0Y4以外の構造では,触媒中心のAsp10とHis840をAlaに変異させており,その原子モデルは実際の触媒活性コンフォメーションとは異なっている.このため,これらの構造を用いて,活性状態におけるCas9のオフターゲット効果の機構を明確に解明することは困難である [Fig. 1引用右図参照].
しかし,これらの三元複合体を形成していたDNA基質は,ミスマッチのないオンターゲットのDNA二本鎖のみであった.また、6O0Y4以外の構造では,触媒中心のAsp10とHis840をAlaに変異させており,その原子モデルは実際の触媒活性コンフォメーションとは異なっている.このため,これらの構造を用いて,活性状態におけるCas9のオフターゲット効果の機構を明確に解明することは困難である [Fig. 1引用右図参照]. Bravoらが今回明らかにした異なるミスマッチ状態のCas9-sgRNA-DNA三元複合体の構造は,これまでのCas9構造の弱点を補い,Cas9のオフターゲット機構の理解・解明に重要な意味を持つ.しかし,現時点では.Bravoらが提示したモデルが,ゲノム全域にわたるオフターゲット部位のより複雑なコンテクストに適切であるかどうかは不明である.
2022-07-30 高精度なSuperFi-Cas9の生体内DNA切断活性は,野生型Cas9よりもかなり低い[出典] ”An assessment of genome-editing efficiency of a newly developed Cas9 in C. elegans " Ferdousy S, Chen B. MicroPubl Biol. 2022-07-17. https://doi.org/10.17912/micropub.biology.000601 [著者所属] Southern Illinois U Carbondale, BCSIR Laboratories Chattogram (Bangladesh)
最近発表されたin vitro アッセイで,オンターゲットのDNA切断活性を維持しつつ,オフターゲット編集を劇的に低減したSuperFi-Cas9によるC. elegans における変異誘発効率を評価した.
SuperFi-Cas9によるC. elegans生体内での変異誘発効率は,NHEJを介した場合でも,HDRを介した場合でも,野生型Cas9よりもかなり低率であった.
本研究はまた,C. elegans が新規CRISPR-Casシステムの生体内活性評価に適していることを示した.
2022-04-24 中国科学院生物物理研究所の研究チームがCRISPR Journal 誌に発表したハイライト記事の書誌情報とリンクを加え [*],本ブログ記事におけるNature 論文紹介の後半部分を大幅に改訂し,また,タイトルも「ミスマッチが存在する場合のCas9活性化の仕組み」から「SpCas9のミスマッチ領域での活性に寄与する7残基の変異を介して,高活性・高精度なCas9変異体候補に到る」へと改訂した.本研究はまた,C. elegans が新規CRISPR-Casシステムの生体内活性評価に適していることを示した.
[*] "First Cut "SuperFi-Cas9: High Fidelity Meets High Activity" Sun W, Wang Y. CRISPR J. 2022-04-19. https://doi.org/10.1089/crispr.2022.29146.ywa
2022-03-11 Nature 誌論文の書誌情報と構造情報を加えた.
[構造情報: Fig.1引用右図参照; リスト中のMMは3塩基ミスマッチの意]
2021-09-21 bioRxiv 投稿に準拠した初稿
[出典] "Structural basis for mismatch surveillance by CRISPR/Cas9" Bravo JP, Liu M-S [..] Taylor DW. (bioRxiv. 2021-09-14) Nature 2022-03-10.
2022-03-11 Nature 誌論文の書誌情報と構造情報を加えた.
[構造情報: Fig.1引用右図参照; リスト中のMMは3塩基ミスマッチの意]
EMD-24833 / 7S4U Cryo-EM structure of Cas9 in complex with 12-14MM DNA substrate, 5 minute time-point (3.56 Å)

EMD-24838 / 7S4X Cas9:gRNA in complex with 18-20MM DNA, 1 minute time-point, kinked active conformation( 2.76 Å)
EMD-23834 Cas9 in complex with 12-14MM DNA at 60 minute time-point, linear conformation
EMD-24836 Cas9 in complex with 15-17MM DNA at 60 min time-point, linear conformation
EMD-24837 Cas9 in complex with 18-20MM DNA at 1 min time-point, linear conformation
2021-09-21 bioRxiv 投稿に準拠した初稿
Jennifer A. Doudna研究室にて"Structure and Function of CRISPR RNA-guided surveillance complexes in bacteria"をテーマとしてポストドクを過ごしたUniversity of Texas at AustinのDavid W Taylorが率いるチームの投稿.
Cas9がミスマッチを拒絶または受容する基礎的な分子メカニズムは未だよくわかっていない.Cas9のオフターゲット認識の基礎となる分子メカニズムを理解するために,速度論的分析を用いて,クライオ電顕法のサンプルを調製し,さまざまなDNA:RNAミスマッチの存在下でのCas9の切断前の活性化中間体の構造スナップショットを獲得し,その構造情報を活かして,新たな高精度版Cas9, "SupeFi-Cas9" を作出した.
速度論的解析
- ガイドRNA (gRNA)とdsDNAの中の標的鎖 (TS)とのヘテロ二重鎖の異なる位置に連続した3つのヌクレオチドミスマッチが存在する場合のCas9によるTS切断速度を測定した.
- 急速なオンターゲット切断と比較すると,PAMから18-20bp離れた位置にある3つのミスマッチ (MisMatches) (PAM-distal 18-20 MM)では,速度が約40分の1に.その他のミスマッチ (6-8 MM, 9-11 MM, 15-17 MM)では開裂速度が大幅に低下した.ところが予期せぬことに,12-14MMでもCas9の活性化が可能であったが,その速度は18-20MMの10分の1であった.
- 12-14MMおよび18-20MMを含むDNAのCas9切断は,いずれもオンターゲットに比べて著しく遅いが,いずれもCas9とのインキュベーション後1時間以内に80%以上が切断された.これは短時間のように見えるが,一般的に数日から数週間の時間スケールで進行するゲノム編集アプリケーションにおいて,このミスマッチ領域での遅い切断も,重大な意味を帯びることになる.
構造情報に基づくアミノ酸置換
ミスマッチ切断の異なる段階におけるCas9の構造をクライオ電顕法で再構成し ["構造情報"の項を参照],ミスマッチの存在下で形成されるgRNA-DNA二重鎖が線形構造を形成し,これによって,Cas9の活性化が阻害されることを同定した.
その一方で,PAMの遠位に位置するミスマッチを含むDNA二重鎖は,RuvCドメイン内の柔軟なループの再編成によって,gRNAと歪んでいるが安定したヘテロ二重鎖構造をとり,その速度は遅いが,Cas9にオフターゲット切断活性をもたらすことが明らかになった.
この知見に基づいて,PAM遠位のミスマッチ領域において特異的にヘテロ二重鎖構造の安定化に寄与する7種類のアミノ酸残基 (Y1010、Y1013、Y1016、V1018、R1019、Q1027、およびK1031)をアスパラギン酸に置換した変異体7-Dを作出し,7-Dが野生型SpCas9と同等のオンターゲット切断速度を維持しつつ,18-22の切断速度を500分の1にまで低下させることを見出し,この変異体を,SuperFi-Cas9と称した [Fig. 4引用右図参照].SuperFi-Cas9は新たな高忠実度版Cas9として期待でき,in vivoでの検証が待たれる.[関連crisp_bio記事] Cas9の結合,PAMのチェックに続く標的DNAのチェックの初期段階の動態
- 2021-09-11 CRISPR-Cas9はDNAを曲げ捻ることでその配列を読み取る.https://crisp-bio.blog.jp/archives/27375609.html; "CRISPR-Cas9 bends and twists DNA to read its sequence" Cofsky JC, Soczek KM, Knott GJ, Nogales E, Doudna JA. (bioRxiv. 2021-09-07) Nat Struct Mol Biol 2022-04-14. https://doi.org/10.1038/s41594-022-00756-0
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