[注] Gはgene (遺伝子),Eはenvironment (環境・培養条件)を意味し,x は,それらの組み合わせを意味する.
[出典] "Combinatorial G x G x E CRISPR screening and functional analysis highlights SLC25A39 in mitochondrial GSH transport" Shi X, Reinstadler B [..] Shen H. bioRxiv 2021-09-22 [プレプリント]. https://doi.org/10.1101/2021.09.22.461361
 Yale School of Medicine, Massachusetts General Hospital, Harvard Medical SchoolおよびBroad Instituteの研究グループの投稿.
  • SLC25キャリア・ファミリーは,ミトコンドリア内膜を介して栄養素や補酵素を輸送する53種類のトランスポーターで構成され,冗長性が高く,その輸送活性は代謝状態と共役している.
  • 研究グループは遺伝子間の相互依存性を明らかにすることを目的として,K562細胞を対象として.4種類の培地条件で,2種類のトランスポーターを2種類のCRISPR-Cas9ヌクレアーゼ (SpCas9とSaCas9)を併用して同時にノックアウト (KO)する実験を行った.標的は,53種類のSLC25キャリアに,MitoCarta 2.0 に収録されている7種類のSLCタンパク質を加えた.
  • 高グルコース培地,ガラクトース培地,アンチマイシン添加による酸化的リン酸化阻害条件,および,ピルビン酸欠失グルコース培地の4種類の培養条件において,2016種類の単一およびペアの遺伝的摂動に対応する63種類のSLC25遺伝子をスクリーンし,19種類のG x E 相互作用と,9種類のG x G 相互作用を発見した.
  • G x E 相互作用の一つは,ミトコンドリア葉酸キャリア (SLC25A32) KO細胞のフィットネス障害が,de novo プリン生合成の基質不足のため,ガラクトースで遺伝的に緩衝されることを示した.
  • また,もう一つのG x E 相互作用からは,パラログの関係にあるATP/ADPトランスロケーターが非等価であり,酸化的リン酸化阻害時にはANT2が特に必要なことを明らかにした.
  • G x G 相互作用からは,鉄輸送体SLC25A37と機能未知であったSLC25A39との間に緩衝作用があることが明らかになった.
  • さらに,ミトコンドリアの代謝物プロファイリング,オルガネラ輸送アッセイ,および変異誘導実験などから、SLC25A39がミトコンドリアのグルタチオン輸送に重要であることが示唆された。