[注] ISG (interferon-stimulated gene/インターフェロン誘導遺伝子)
2022-04-24
 PLoS Pathogen 誌査読付き論文の書誌情報を追記
2021-09-29 bioRxiv 投稿に準拠した初稿
[出典] "Inducible CRISPR activation screen for interferon-stimulated genes identifies OAS1 as a SARS-CoV-2 restriction factor" Danziger O, Patel RS, DeGrace EJ, Rosen MR, Rosenberg BR. (bioRxiv. 2021-09-23). PLoS Pathos 2022-04-14. https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1010464
  Icahn School of Medicine at Mount Sinaiの研究グループからの投稿.
 [背景]
  • ロバストなIFN反応が,感染による免疫記憶が確立されていないウイルスに対する宿主防御に不可欠である.しかし,SARS-CoV-2の感染に対するIFNの抑制機構は十分に解明されておらず,これまでのところ,数百種類のISGsのうち,SARS-CoV-2の感染を抑制することが同定されたISGsは,LY6E, MHC-IIインバリアント鎖CD74, TetherinをコードするBST2の過剰発現, TRIM25などごくわずかである.
  • ISGの抗ウイルス性を評価する研究の多くは,ISG cDNAライブラリーを異所性発現させた上でウイルスに暴露することで,抵抗性を付与したISGを同定してきた.しかし,この手法は,技術的また経費の点で課題があり,cDNAの異所性過剰発現の副作用や,アイソフォームに特異的な抗ウイルス活性を見落とすリスクを伴っている.
  • 研究グループは今回,cDNA異所性過剰発現に替えて採用したCRISPRaは,標的ISGsに対応する過剰な発現が不要なこと,ISGsを標的とするgRNAsのライブラリーは作成が用意であり,また,内在性のプロモーターから遺伝子転写が始まることから,複数の遺伝子アイソフォームを発現させることができる.
 [成果]
  • 肺上皮細胞においてSARS-CoV-2感染を調節するISGsを同定するために,ISGsに焦点を絞ったCRISPRaスクリーンを行った.
  • ISGsの中には,抗増殖作用やアポトーシス促進作用を持つものがあり,ライブラリーの表現に影響を与える可能性があることから,ドキシサイクリン誘導型CRISPRaシステムを構築し,ISGsの誘導の時間的制御を実現した.
  • その結果,野生型細胞とIFNに感受性を持たないようにした同種の細胞の両方について,400種類以上のISGsがSARS-CoV-2感染に対する影響を測定することが可能になった.
  • 上位にヒットした抗ウイルスISGsには、最近のスクリーニングで同定されたSARS-CoV-2制限因子(LY6E, CD74, TRIM25, およびERLIN129)があった.さらに,CTSS (Cathepsin S)のようなISGを同定し,抗ウイルスの役割を検証した.また、OAS1 (2′-5′-oligoadenylate synthetase 1)が,SARS-CoV-2の制限因子として,ウイルスの感染と子孫ウイルスの生成を抑制することを同定した.
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