2021-09-28 ”ウイルス残存説”の項で言及されているエボラ出血熱の再流行に関するNature NEWS & VIEWSを本記事の文末に引用
2021-09-27 初稿
[注] SARS-CoV-2陽性になった時点から4週間をacute COVID-19 (急性感染症),5週間から後をpost-acute COVID-19とする.COVID-19の症状が持続すること,そしてまたは,発症から4週間を超えた遅発性または長期にわたる合併症をロングCOVIDとする (Nalbandianら, Nat Med. 2021)
2021-09-27 初稿
[注] SARS-CoV-2陽性になった時点から4週間をacute COVID-19 (急性感染症),5週間から後をpost-acute COVID-19とする.COVID-19の症状が持続すること,そしてまたは,発症から4週間を超えた遅発性または長期にわたる合併症をロングCOVIDとする (Nalbandianら, Nat Med. 2021)
[出典] "What Causes Long COVID Is A Mystery. Here's How Scientists Are Trying To Crack It" Stone W (NPR記者). NPR News. Updated September 20, 2021 · 11:44 PM ET. https://www.npr.org/sections/health-shots/2021/08/24/1030723370/scientists-are-working-to-make-sense-of-long-covid-and-its-203-possible-symptoms
[参考 crisp_bio記事] long-COVID (ロングCOVID または COVID-19後遺症).https://crisp-bio.blog.jp/archives/26969338.html
1. ウイスル残存説
ウイルスの中には,抗ウイルス療法に対してヒト体内に"リザーバ (reservoir)"を構築・維持することで,ヒト免疫システムの攻撃を免れる例が知られている.例えば、エボラ出血熱ウイルスは,最初の感染からかなり時間が経過した後も組織や体液の中にその痕跡を発見され,エボラ出血熱の生存者の中には慢性的な症状に悩まされ,また,あたかもまだ感染しているかのように免疫応答が変化しているように見える例が知られている.最近の研究では,西アフリカで発生したエボラ出血熱は,何年も前に感染してウイルスを保有していた人に由来するとさえ言われている.
このウイルス残存説は,COVIDワクチンを接種した後に体調が良くなる例の説明にもなる.ワクチンを接種することで,残存するウイルスに対する免疫反応が高まることが考えられ,イェール大学医学部のチームは現在、この可能性について研究している.
2. 止まらない免疫システム
COVID患者の中には,ME/CFSとも呼ばれる慢性疲労症候群の人々によく似ている例がある.ME/CFSの発症機序も完全には解明されていないが,ME/CFSの引き金となるウイルスは最も炎症を起こしやすい特性を備えている.SARS-CoV-2も激しい炎症ひいては強い免疫応答を誘導し,COVID-19から回復した後も,その免疫応答が継続することが考えられる.
3. ヒト自身を攻撃する自己免疫応答
COVID-19の長期患者には,SARS-CoV-2がヒト体内の組織や臓器を攻撃する自己免疫応答を引き起こす可能性がある.これまでに,SARS-CoV-2の感染によって多くの自己免疫疾患で見られるような自己抗体が生成されることが報告され,自己抗体の標的は,免疫システムそのものの他に,脳や中枢神経系,血管や血小板など,体の他の多くの部分にも向けられていた.また,COVID-19患者の中には,こうした自己抗体が何ヶ月 (many months)も残っている例があった.
4. 潜在していた他のウイルスの参戦
健康な状態では不活性な状態に抑制されていたSARS-CoV-2の他のウイルスが,SARS-CoV-2ウイルスとの中で疲弊した免疫システムに乗じて再活性化し,新たに組織,中枢神経系,さらには脳にまで感染し,ひいては,長期にわたるCOVID-19患者で見られる慢性的な症状の原因となっている可能性がある.
実際,最近の研究で,長期COVID患者では,伝染性単核球症の原因となるエプスタインバーウイルスの再活性化が起こりやすいことが判明しており,COVID-19がそのウイルスの再活性化を引き起こしたことが示唆されている.
[補足] ”ウイルス残存説”の項で言及されているエボラ出血熱の再流行に関するNature NEWS & VIEWS
NEWS & VIEWS "Ebola virus can lie low and reactivate after years in human survivors" Garry RF. Nature 2021-09-15. https://doi.org/10.1038/d41586-021-02378-w
実際,最近の研究で,長期COVID患者では,伝染性単核球症の原因となるエプスタインバーウイルスの再活性化が起こりやすいことが判明しており,COVID-19がそのウイルスの再活性化を引き起こしたことが示唆されている.
[補足] ”ウイルス残存説”の項で言及されているエボラ出血熱の再流行に関するNature NEWS & VIEWS
NEWS & VIEWS "Ebola virus can lie low and reactivate after years in human survivors" Garry RF. Nature 2021-09-15. https://doi.org/10.1038/d41586-021-02378-w
2021年2月,ギニアで新たなエボラウイルス病の流行が発生した.同国では,2013年から2016年にかけて西アフリカで発生した流行が終わった後,エボラウイルス感染は発生していなかった.
エボラウイルスのゲノムは,複製や宿主から宿主への伝播に伴って,比較的規則的な頻度で変異を蓄積し,これをウイルスの歴史を追跡する分子時計として利用できる。
- Keitaら (Nature 2021)は,2021年に西アフリカのギニアで発生したエボラウイルスのゲノムを分析し,2013年から16年にかけて西アフリカで発生した際に得られたウイルスサンプルのゲノムと比較し,両者が同じ系統群を形成することを発見し,動物からの新たな流出の結果ではないと結論した.
- また,両者の間で蓄積された変異の数が,5年間ウイルスが複製を続けて宿主間で感染していった場合に予想されるよりも,はるかに少ないことから,2021年の流行が,前回の流行で感染を免れた個体の潜伏感染が再活性化したことを示唆するとした.
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