[出典] PERSPECTIVE "Identifying cancer drivers" Cheng R, Jackson PK. Science. 2021-10-01.  https://doi.org/10.1126/science.abl9080

 包括的なタンパク質間相互作用 (protein-protein interaction, PPI)ネットワークを把握することで,「パスウエイが正常細胞でどのように組織され,癌細胞においてどのように変化するか」の理解を決定的に深めることができる.一方で,多くの癌において,遺伝子変異の膨大なカタログが整備されてきたが,それぞれの変異を,腫瘍の成長を促すパスウエイに割り付けたマップは未だ存在していない. 
 このPERSPECTIVE記事が掲載されている号には,PPIネットワークをベースとする癌研究論文が3報掲載されている.
 Swaneyら [*1]とKimら [*2]はそれぞれ,アフィニティ精製-質量分析法 (AP-MS)を利用して,頭頸部扁平上皮癌 (head and neck squamous cell carcinoma, HNSCC)と乳癌 (BC)のPPIネットワークを同定し,癌細胞においてこれまで知られていなかったPPIを多数発見した.Zhengら [*3]は,新規なPPIデータと公開されているデータと統合し,PPIsを検証を支援するタンパク質パスウエイの構造化マップを作成した.この成果は,発癌性形質転換の理解と治療標的の同定に有用な解析の枠組みを示唆している.

[*] 紹介論文リスト
  1. Swaney DL et al. "A protein network map of head and neck cancer reveals PIK3CA mutant drug sensitivity" Science 2021-10-01. https://doi.org/10.1126/science.abf2911: 頭頸部がんに焦点を当て、がんに特有の相互作用を明らかにし、ヒトのがんで頻繁に変異するキナーゼであるPIK3CAのポイント変異に依存した相互作用が、薬剤の効果を予測することを示している。
  2. Kim M et al. "A protein interaction landscape of breast cancer" Science 2021-10-01. https://doi.org/10.1126/science.abf3066: 乳がんに焦点を当て、がん抑制遺伝子BRCA1と機能的に結びついている2つのタンパク質と、PIK3CAを制御する2つのタンパク質を同定しました。
  3. Zheng F et al. "Interpretation of cancer mutations using a multiscale map of protein systems" Science 2021-10-01. https://doi.org/10.1126/science.abf3067: 複数の癌で突然変異の圧力を受けているタンパク質ネットワークを特定する統計モデルを開発し,PIK3CAとアクトミオシンタンパク質を結びつける複合体などを明らかにした.
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