出典] "Improving the efficiency of CRISPR-Cas12a-based genome editing with site-specific covalent Cas12a-crRNA conjugates" Ling X, Chang L [..] Tao L. Mol Cell. 2021-10-13. https://doi.org/10.1016/j.molcel.2021.09.021
 北京大学を主とする研究グループは,「Cas12aの編集効率がCas9よりも低いのは,ガイドRNAとの結合親和性が低いことに由来する」という仮説のもとに,実験を進めた.
 [背景]
  • Cas12aは,SpCas9のPAMと異なる配列 TTTN を認識し,SpCas9よりもオフターゲット活性が低いという特長を備えているが,ヒトゲノム編集の効率が比較的低いことが課題であり,これまでに.タンパク質工学やRNA工学による編集効率向上の試みがなされてきた.
  • Cas9は,crRNAとtracrRNAまたは約100-ntの長さのsgRNAと結合するのに対して,Cas12aは遥かに短い (約42nt)単一のcrRNAに結合する.このCas12aとcrRNAの間の結合親和性は,数ナノモルから数十ナノモルと様々であるが,この範囲は,Cas9とsgRNAで報告されている親和性 (Kd = 10 pM)よりも3-4桁低い.著者らは,哺乳類細胞におけるCas12aの編集効率の低いのは,少なくとも部分的には,Casタンパク質とcrRNAの間の比較的弱い相互作用に起因するのではないかと推測した.
 [成果]
  • 拡張遺伝暗号を介した非天然アミノ酸変異誘発により,アジド基で部位特異的に修飾したAsCas12aと,ジベンゾシクロオクチン (DBCO)で5′末端を修飾したcrRNAとをクリック反応 (アルキン-アジド環化付加反応)を介して共有結合させることで,安定で活性なRNPを生成した.
  • このCas12a変異体を,著者らは,conjugateの"c"をとって"cCas12a"と称した.
  • cCas12aからなるRNPが標的遺伝子座に到達するまで,Cas12aとcrRNAの解離が防止された [図1 https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S1097276521007735-gr1_lrg.jpg 参照]
  • cCas12aシステムは,哺乳類細胞において、野生型 (WT)システムよりも大幅に高いゲノム編集効率を示した.
  • この戦略の有用性を示すために,cCas12aプラットフォームを利用してキメラ抗原受容体T細胞 (CAR-T)作製のための精密なゲノムノックインおよび多重遺伝子編集を試み,WTシステムよりも高い効率でCAR-T細胞を樹立可能なことを実証した.
  • また,cCas12aの手法が,AsCas12a以外のLbCas12a,AsCas12aの機能強化変異体であるenAsCas12a,およびCas12aをベースとするBE (Cas12a-BE)の機能向上にも有効であることも確認した.