[出典] "High-efficiency delivery of CRISPR-Cas9 by engineered probiotics enables precise microbiome editing" Neil K [..] Rodrigue S. Mol Sys Biol. 2021-10-19. https://doi.org/10.15252/msb.202110335 ; Graphical abstract https://www.embopress.org/cms/asset/4c5aad3a-0e3f-48e7-8e3c-f9c078e26617/msb202110335-abs-0001-m.jpg
[背景]
  • 抗生物質耐性菌による感染症が世界的に急増しており,2050年までに死亡原因の第2位になると言われている (WHO , 2014).
  • RNAにガイドされるCRISPR-Cas9システムは,抗生物質耐性菌のゲノムDNAを特異的に切断し破壊する新たな抗菌剤として期待できる.
  • そのための課題が,CRISPR-Cas9システムを標的とする集団のほぼすべてのバクテリアに送達することである.
  • これまでに,CRISPR-Casシステムをバクテリオファージ (以下,ファージ)で送達することで,細胞株およびマウス腸内での腸マイクロバイオームの編集が報告されている.ファージにはしかし,宿主域が限られておりしたがって標的可能バクテリアが限られていることや,バクテリア表面のファージ受容体が変異してしまうという課題が残っている.生体内のファージの安定性については,カプセル化による解決策が提案されている  [*]
  • [* ] "In situ reprogramming of gut bacteria by oral delivery" Hsu BB, Plant IN, Lyon L. et al. Nat Commun. 2020-10-06. https://doi.org/10.1038/s41467-020-18614-2; 2021-10-24 ファージを介したCRISPR-Cas9システムの経口投与法を開発し,腸マイクロバイオームの編集を実現. https://crisp-bio.blog.jp/archives/27742449.html
[成果]
  • Université de Sherbrooke (カナダ)の研究グループは今回,ファージに変えて,接合伝達性のプラスミドをドナー株を介して送達することで,腸マイクロバイオームの編集を実現した.
  • 腸内細菌科 (Enterobacteriaceae )で見られる殆どの接合伝達性プラスミドのスクリーニングで同定していた (Neil et al, 2020)
  • 高伝達性のプラスミドTP114を採用し,指向性進化法を介して,転送効率がさらに向上したプラスミドeB-TP114を得た.
  • プラスミドTP114をCRISPR-Cas9システムのキャリアとするシステム (conjugative probiotic, COP)により,マウスの腸マイクロバイオームに存在する99.9%以上の抗生物質耐性大腸菌を,1回の投与で除去することに成功した.
  • さらに,Citrobacter rodentium の感染モデルマウスで実証実験を行った.COPを利用した場合はC. rodentium の低減効果が徐々に失われていったが,eB-TP114をベースにしたeb-COPを連続4日間投与することでC. rodentium の完全除去が実現した.