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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Optimization of lipid nanoparticles for the delivery of nebulized therapeutic mRNA to the lungs" Lokugamage MP, Vanover D, Beyersdorf J, Hatit MZC [..] Santangelo PJ, Dahlman JE. Nat Biomed Eng. 2021-10-06. https://doi.org/10.1038/s41551-021-00786-x; NEWS & VIEWS "Lipid nanoparticles for the inhalation of mRNA" Chang RYK, Chan HK
 薬剤を標的の細胞や組織へデリバリーするキャリアとして脂質ナノ粒子 (LNP)の利用が広がっているが,LNPは薬剤や投与経路ごとに設計する必要がある.Georgia Institute of TechnologyとEmory University School of Medicineの研究グループは今回,治療用mRNAをエアロゾルとして噴霧・吸入することで,肺に効率的にデリバリー可能とするLNPを設計した.
  • 脂質,中性またはカチオン性のヘルパー脂質とポリエチレングリコール (PEG)で構成されるLNPの組成,モル比,構造を最適化するために,化学空間で互いに独立な6つのクラスターに分類されるLNPsの性能を評価した後,高評価であったクラスターをプールした上でその多様性を拡大した.
  • その結果,PEGのモル比が低い(高い)ほど,中性(カチオン性)のヘルパー脂質を持つLNPの性能が向上することを発見し,低用量のメッセンジャーRNAのデリバリーに最適なLNPを同定した.
  • ヘマグルチニンを標的とする広域中和抗体をコードするmRNAを,最適化LNPを噴霧により送り込むことで,マウスをA型インフルエンザウイルスの致死的チャレンジから保護することを実証した.
  • この噴霧方式による肺への治療用mRNAデリバリーは,これまでの全身デリバリーに最適化されていたLNPよりも効率的であった.
 今回採用したLNP設計におけるクラスター・アプローチは,他の治療法や投与経路に対するLNPの最適化にも有用である.
  • SARS-CoV-2のスパイクタンパク質をコードするmRNAをLNPでデリバリーするmRNAワクチンが安全かつ有効であることが臨床実験に加えて実社会でも実証されている.
  • 一般に,mRNA医薬は,嚢胞性線維症,肺癌,喘息などの肺疾患の治療や予防にも使用される.
  • mRNAをカプセル化したLNPは,リボヌクレアーゼによる分解から核酸を保護し,細胞への取り込みを容易にし,ほとんど免疫原性がなく,加えて,カプセル化された治療薬の放出を制御することが可能である.
  • LNPでカプセル化したmRNA医薬を肺に投与する場合,最も直接的な方法 (そしておそらく最も安全で効率的な方法)は,肺での治療薬の濃度を最大限に高め,全身への曝露を抑えることができる吸入法である.
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